筋肉の記憶マッスルメモリーとは?これを体現した選手がすごい!

筋肉の記憶マッスルメモリーとは?これを体現した選手がすごい! DO

筋肉の記憶マッスルメモリーとは?これを体現した選手がすごい!

スポーティ

昔はスポーツをしていて、今は仕事などが忙しく競技から離れてしまい、体が衰えてしまった、昔は筋トレをしていたが、最近はあまりトレーニングをしていないという方は多いのではないでしょうか。

昔は筋肉質な体型でも、競技から離れると筋肉が落ちて太ってしまったり、逆に痩せてしまったりすると思います。昔の体型に戻りたい、でも今からトレーニングをしても無理だろう、そう思っていないでしょうか。

それは間違いで、年を取ってからでもトレーニングをすることで、昔の体型を比較的すぐに取り戻すことができます。

それは、脳と同じように筋肉にも記憶があるから。筋肉にはセーブポイントが用意されていて、昔のデータが保存されているのです。このことをマッスルメモリーと呼んでいます。

今回は、マッスルメモリーとは一体何か、どのような原理なのかを紹介し、マッスルメモリーを体現したボディービル選手を紹介します。

筋細胞の核がメモリーの役割を果たす

Embed from Getty Images

筋トレをすると筋肉がつき、体が大きくなります。さて、それでは筋トレをした後、私たちの体の中では一体何が起こっているのでしょうか。

筋トレを行った後には、筋肉の合成が行われますが、それには筋線維の核とリボソームという2つの器官が関わってきます。筋線維の中には、その細胞の情報を保存している「核」と呼ばれる器官がいくつか存在しています。核にはDNAが含まれていて、ここに様々な情報が含まれているのです。

トレーニングの刺激を受けた筋線維は、筋肉を増やすために、核に保存されているDNAから筋肉の情報をmRNAという形で写し取り、これを筋肉の合成に用います。

筋肉の情報を持ったmRNAは、核からタンパク質合成の場であるリボソームという器官へ移動します。リボソームではmRNAに含まれている情報を元にして筋肉を合成します。

トレーニングを行うことで筋線維内のmTORというタンパク質が活性化され、これによりリボソームで筋肉の合成が活性化され、筋肉が作られます。

トレーニングによる筋肉の合成は、工場での製品の製造と似ています。工場では本社からの発注を受けてどれだけ製品を作るかを決定しています。これと同じで、リボソームという筋肉の工場では、筋肉内で本社のような役割を果たしている核が、トレーニング刺激に応じた筋肉の発注書(mRNA)をリボソームに送り、mTORという工場のスイッチをONにして筋肉という製品を作っているのです。

少し長くなりましたが、トレーニングを行った後の私たちの体の中では、このようなことが起こり、筋肉が大きくなっていくのです。

筋トレを行うことは、ここまで説明してきたように、タンパク質の合成を高め筋肉を増やすことに繋がりますが、実は細線維の情報を保存している核を増やすことにも繋がるのです。

筋繊維の周りには筋サテライト細胞と呼ばれる細胞が存在しています。筋繊維がトレーニングの刺激を受けると、筋サテライト細胞もその刺激を受け、筋繊維と融合します。

筋サテライト細胞にも核が存在しているため、筋トレを行うことにより筋繊維の核を増やすことができます。

さて、トレーニングを休止すると筋肉が落ちてしまう、というのはよく知っていると思います。しかし、トレーニングを休止しても筋トレにより増えた核は減らないのです。

核は工場への発注書を作る本社のような役割を果たしています。その核が多ければ多いほど多くの筋肉を作り出せるということは想像できると思います。

つまり一度筋トレにより核を増やしておくと、トレーニング休止後にトレーニングを再開しても、比較的早く元のレベルまで筋肉を戻すことができるのです。

トレーニングを休止しても核は減らない。これがマッスルメモリーの原理なのです。

マッスルメモリーを体現したケビンレブローニ選手

Embed from Getty Images

実際にマッスルメモリーが存在する、ということを自らの体で証明した選手がいます。それがアメリカのケビンレブローニ選手です。

彼は1964年生まれのボディビルダーで、ボディビルの有名な国際大会であるミスターオリンピアを始め、様々な大会に出場し輝かしい成績を収めています。

彼は1991年から国際大会に出場し、2003年までボディビルダーとして活躍し、引退を迎えました。

かつては一つ一つの筋肉が分かるほど筋肉が浮き出て美しい体だったケビンレブローニ選手ですが、引退後は一般人のような体型に戻ってしまいました。

しかし驚くことに、2016年にオリンピアに復帰するというアナウンスがありました。オリンピアまでに残された時間は約半年。13年ぶりの復帰で半年のトレーニング期間しかなく、しかもこの時年齢は52歳。こんな過酷な条件でオリンピアに復帰しようというのですから常人では考えられません。

気になる成績は17位入賞と好成績。半年のトレーニング期間しかなく、しかも年齢が52歳であっても一度トレーニングを積んでいると国際大会で入賞できるほどにまで筋肉を取り戻すことができるのです。

マッスルメモリーのすごさを思い知らされた選手でした。

若い時こそ筋トレをせよ!

Embed from Getty Images

このようにトレーニングを行っていると、マッスルメモリーが働いているので、トレーニングを休止してからも筋肉を取り戻すことができます。

そのため、若い時こそ筋トレをして筋肉の中の核を増やしておくのがよいと言えます。

また競技を行っていて、怪我をしてトレーニングを中止しないといけない、という場合でも、トレーニング休止期間中は筋肉が落ちるものの、マッスルメモリーが働いているので、競技復帰後は比較的早く元のレベルにまで筋肉を戻すことができます。

筋肉をつけることは大きな力を発揮できるだけでなく、肥満の予防や年を取ってから問題となる、サルコペニアという筋力が低下した状態の予防にも繋がります。

毎日は無理でも、休みの日や少し空いた時間などを使って筋トレを行ってみてはいかがでしょうか。

スポーツ栄養学 筋肉 運動生理学