初の金メダル獲得に期待がかかる“足のボクシング”テコンドー

初の金メダル獲得に期待がかかる“足のボクシング”テコンドー WATCH

初の金メダル獲得に期待がかかる“足のボクシング”テコンドー

スポーティ

世界204カ国で行われているテコンドー

テコンドーは日本では競技人数も少なく知名度の低いスポーツですが、世界を見渡してみると、競技人口は204の国と地域で7000万人とも。この人数は純粋な競技人口だけではなく、ヨガなどのエクササイズを併用した道場の会員数も含まれていますが、多くの人が親しんでいるスポーツと言えます。
プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドに所属しているイブラヒモビッチが黒帯を取得していることでも有名です。

テコンドーという名称は1955年に正式に命名されました。創始者は、当時陸軍少尉だったチェ・ホンヒ。彼が日本に留学中、空手を元にし、創始したスポーツと言われています。そんなテコンドーと空手の大きな違いは、テコンドーが足技を多用することでしょう。このことからテコンドーは、足のボクシングと言われることもあるスポーツです。


テコンドーの練習風景。練習といえど激しいスポーツであることが伝わってきます。

現在、テコンドーにはWTF(世界テコンドー連盟)とITF(国際テコンドー連盟)という2つの世界的な組織があります。オリンピック競技にはWTF(世界テコンドー連盟)の競技が採用されていて、メダリストの多くは韓国から出ています。

金メダルに期待がかかる日本代表濱田真由選手

テコンドーの女子日本代表で注目されているのが濱田真由選手、22歳。彼女は小学校1年生からテコンドーを始め、高校在学中に世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得。翌年には全日本テコンドー選手権大会初出場で初優勝を達成して注目を集めました。

その後、テコンドー日本勢最年少で出場したロンドンオリンピックでは5位入賞。2013年の世界テコンドー選手権で銀メダル、2015年の世界選手権大会では日本人初となる金メダルを獲得するなど着実に力をつけてきました。8月から開催されるリオオリンピックでは、金メダル候補として注目されています。

彼女の特徴は、「カット(韓国語では、ミルギまたはミロチャギ)」と呼ばれる攻撃、“押し蹴り”を駆使すること。常に前足を上げて片足とびの状態で相手を追いかける濱田選手は、「足のボクシング」とも呼ばれるテコンドーでも異色のスタイル。股下83センチもある長い足を持つからこそなせる技です。

カットだけでも充分強い濱田選手ですが、得点の高い後ろ回し蹴りなども効果的に使えることも、世界を相手に戦える強さの秘訣です。

リオ五輪日本代表の濱田真由選手(写真左)。股下83cmもある足の長さが最大の武器。

濱田選手が出場するリオオリンピックのテコンドー競技は、8月17日から20日までの4日間で行われます。種目は、キョルギと呼ばれるスパーリング競技のみ。階級分けは、男子が58キロ級、68キロ級、80キロ級、80キロ超級、女子が49キロ級、57キロ級、67キロ級、67キロ級と、共に4つの階級で争われます。日本人初の金メダルの獲得も期待出来る濱田選手は女子57キロ級に出場します。

テコンドー用語とルール

リオ五輪で行われる種目のキョルギ は、空手とキックボクシングを合わせたような格闘技で、足技を重視します。試合時間は、2分×3ラウンドのインターバル1分。試合時間内に獲得したポイント数によって勝敗が決まります。ポイントは、技の種類や攻撃する部位によって決められていて、基本的に回転系の技や頭部への攻撃が高いポイントを得られます。ポイントによる勝敗の他に、KO勝ちやTKO勝ちなどもあり、これも足のボクシングと呼ばれている所以かもしれません。

アプチャギ、トリョチャギ、ネリョチャギ。これらはすべてテコンドーにおける技名で、韓国語です。日本語にすると、順に前蹴り、回し蹴り、かかと落とし。どれもオーソドックスな技なので、テコンドーを観る前に覚えておくと良いかもしれません。


アプチャギ(前蹴り)


トリョチャギ(回し蹴り)


ネリョチャギ(かかと落とし)

テコンドーの試合で使われる用語は、勝敗の種類は英語で行われますが、審判の合図、技の名前、掛け声などは韓国語になっています。

審判の合図では、試合の開始は「シィジャック」試合の中断は「シガン」警告は「キョンゴ」減点は「カムチョン」止めは「クマン」。

技では、上段が「オルグル」中段が「モントン」下段が「アレ」と呼ばれ、足蹴りが「パルチャギ」突きが「チルギ」打ちが「チギ」手刀「ソンナル」受けは「マッキ」。

勝敗の種類には、DSQ(相手選手失格による勝利)KO(KO勝ち)TKO(セコンドが試合を中止させたとき)WDR(選手の棄権)などがあります。

試合を見る際には、選手の華麗な技だけでなく、技名や審判の発言にも注目してみてはいかがでしょうか。


実践向きではないですが、540度蹴りや720度蹴りも存在します。運が良ければ、オリンピックで観られるかも。

リオデジャネイロオリンピックに出場する日本人選手は、残念ながら濱田選手ただ一人。ですが濱田選手は、直近の世界選手権で優勝しており、本気で金メダルを狙える位置にいます。テコンドーは華麗な技が繰り出される観ていて楽しいスポーツでもあるので、ぜひリオ五輪では濱田選手を応援しながら、テコンドー競技を観戦してみてください。

(Photo by Singapore 2010 Youth Olympic Games and Bridget Coila