アスリートによる社会貢献活動を表彰「HEROs AWARD 2017」
SUPPORTアスリートによる社会貢献活動を表彰「HEROs AWARD 2017」
「HEROs AWARD 2017」が2017年12月11日(月)に東京で開催され、アンバサダーや著名アスリートが集まりました。
「HEROs AWARD 2017」は、日本財団が2017年秋に創設した「HEROs SPORTSMANSHIP for THE FUTURE」による活動の一つで、社会のためにスポーツマンシップを発揮した選手やチームを表彰し、アスリートの社会貢献活動を促進させるアワードです。
6組の受賞者の活動をコメントとともに紹介します!
貧困地域の子供たちに本当に必要なものを届けたい。
1人目の受賞者は「RED BIRD PROJECT」の鳥谷敬選手(阪神タイガース)です。
RED BIRD PROJECTはアジアの恵まれない環境の子供達へ賛同者から寄せられる物資を寄付しています。2015年度は靴の寄付を募り、18,000足以上を寄付しました。鳥谷さんは当初は野球を広めたいという想いで、グラブを持ってフィリピンへ行ったものの、実際に必要とされているのは靴だったと気づいたと言います。今後も現地の子供達のために、物にはこだわらず、本当に必要とされているものを届けたいと話します。
鳥谷選手は次のようにコメントしました。
記念すべき第一回に賞をいただけて非常に光栄に思います。この賞は、靴を送ってくれたり、賛同してくれたみなさんのおかげです。そしてみんなで獲った賞です。これからもこの活動を通じて、子供達の笑顔を見れたらと思います。
審査員の香取慎吾さんからもコメントが寄せられました。
野球を教えに行こうと思ったら「違った」という気づき。人って「これをやりたい」って気持ちはたくさんあると思いますが、変わってもいいと思うんですよ。鳥谷さんのあたたかい心の切り替えが素敵だと思いました。
トロフィーはHEROsアンバサダーを務める、プロボクサーの村田諒太選手から授与されました。左:村田諒太選手/右:鳥谷敬選手
スポーツで民族間の架け橋に
2人目の受賞者は「マリモスト〜小さな橋〜」の宮本恒靖さん(元・サッカー日本代表キャプテン)です。
マリモストプロジェクトでは、ボスニア・ヘルツェゴビナに、7歳から12歳くらいの子供を対象としたスポーツアカデミーを作り、スポーツを通じた民族融和活動を続けています。ボスニア・ヘルツェゴビナでは1990年代に多くの犠牲者を出した民族紛争が勃発。紛争終結後20年以上が経過した現在でも、教育や政治など生活の様々な場面で民族間が分断されています。
そういった環境で、宮本さんはマリモストプロジェクトで、子供の世代は民族関係なくスポーツを通して色んなことを学び、そして大人になった時に今よりも、より良い社会を作っていくリーダーになっていって欲しいと話します。
宮本選手は次のように話しました。
HEROsの理念や考えが、もっともっと広まって、アスリートがフィールド外でも活躍できるような社会ができていけばいいと思います。私自身も、これからもこの活動をしっかりと広めていければと思います。
トロフィーはHEROsアンバサダーを務める、元・バレーボール日本代表の大林素子さんから授与されました。左:大林素子さん/右:宮本恒靖選手
そして、スポーツの力を活かした社会貢献活動のモデルにふさわしい、もっとも優れたアスリートを表彰するHEROs of the yearでもマリモスト〜小さな橋〜宮本恒靖さんが受賞しました。
サーフィンで新たな自分と出会う
3人目の受賞者は、「Ocean’s Love」のアンジェラ・磨紀・バーノンさんです。
Ocean’s Loveでは、障害者を持つ子供達にサーフィンを通して海の素晴らしさ、エネルギーを感じてもらい、その家族にも子供達の無限の可能性を見出してもらいたいという思いで、サーフィンスクールを実施しています。自身の兄が障害者である経験から、障害があっても、すべての人が平等に暮らしやすい世の中を実現すべく、活動を開始したというアンジェラさん。
アンジェラさんは、
と喜びを口にしました。Ocean’s Loveの活動をを始めた時は、こんな賞をいただけるなんて想像もつきませんでした!
トロフィーはHEROs AWARDの審査員を務めた中井美穂さんから授与されました。左:中井美穂さん/右:アンジェラ・磨紀・バーノンさん
中井さんからもお祝いのコメントがありました。
これを機会に、素敵な活動をたくさんの人に知ってもらいたいし、何かやりたいけど、どうやっていいかわからないという人の背中を、この賞が後押しできたらと思います。
ボクシングを通して、児童養護施設の子供達にきっかけを
4人目の受賞者は「こころの青空基金」の坂本博之さん(元・プロボクサー)です。
坂本さん自身が児童養護施設で育った経験から、全国の児童養護施設を訪れて、メッセージを伝え、ボクシングセッションを通して子供達と直接交流をし、こころのケアをしていくプロジェクト「こころの青空基金」を推進しています。坂本さんがボクシングを通して学んできたこと、そして夢を見つけるためにはどうしたらいいか、といった、熱いメッセージは、厳しい状況の中にいる子供達に、将来の道を切り開くきっかけを与えています。
坂本さんはトロフィーを授与されると上に掲げ、活動に懸ける熱い想いを語りました。
すごく光栄です。僕はボクシングをやってきて、どんなに苦しい時も福岡にある自分が出身の児童養護施設の子供達が支えてくれました。現役を引退して何かできることはないかと考えて、この活動を始めました。全国の児童養護施設の子供達に、今を熱く生きることによって、夢っていうのは、近づいていく。近づいていくことで、学んでいくことってのはたくさんあるんだ。君達も今を熱く生きることによって、その先には笑顔しかないけんって伝えてきました。
トロフィーはHEROsアンバサダーを務める上原大祐選手(元・パラアイスホッケー日本代表)から授与されました。左:上原大祐選手/右:坂本博之さん
授賞式当日も、タキシード姿で児童養護施設を訪問したという坂本さん。子供達にも報告したそうです。
「坂もっちゃん、今日はいつもと違うね」って言われて、「どっちがかっこいい?」って聞いたら「どっちもかっこいい!」って言ってくれました。「お前たちがくれた賞なんだよ」って話してきたんです。
福島の街の一員としてサッカークラブができること
5組目の受賞者はふくしマルシェの福島ユナイテッドFCです。式にはGMの竹鼻快さんが出席しました。
福島ユナイテッドFCは、福島県や福島市、アウェイクラブチームの理解と協力も得ながら、試合会場で福島県産の食材を販売・PRを実施するブース「ふくしマルシェ」を設置しました。福島県の物産を紹介するだけでなく、福島県内の農家とも提携を行い、福島県全体で取り組んでいる「風評被害払拭」にも寄与しています。また、クラブで桃とりんごの木を持ち、農家の方に指導してもらいながら、生育から出荷までを選手自ら作業しています。
竹鼻さんは、受賞にあたって、街の一員としてのサッカークラブのあり方を話しました。
自らが活動する地域で何が課題とさているのかを、街の一員として何ができるか考え、活動することが大事だと思います。福島県の街づくりに、サッカークラブとしてどれだけ役に立てるか、みなさんと一緒にさらに頑張っていきたいと思います。
トロフィーはHEROsアンバサダーを務める佐藤琢磨選手(レーシングドライバー)から授与されました。左:佐藤琢磨選手/右:竹鼻快さん
50個を超えるゆるスポーツを開発。スポーツ弱者を世界からなくす
6組目の受賞者はゆるスポーツを広めている世界ゆるスポーツ協会です。代表理事の澤田智洋さんが出席しました。
ゆるスポーツとは、運動神経や性別、年齢、障害の有無も関係なく、だれでも楽しむことのできる新たに開発されたスポーツのこと。世界ゆるスポーツ協会では、社会課題をゆるスポーツを通して解決していく活動を行なっています。活動をはじめて2年半で、ハンドソープボールやこたつホッケーなど、50〜60種目が開発されました。
澤田さん自身、運動が苦手だというコンプレックスを生きてきたと言います。自分でも活躍できるスポーツを作ってしまえばいいという発想が活動のきっかけになったそうです。
澤田さんはHEROs AWARDでゆるスポーツが認められたことに、喜びのコメントを寄せました。
僕は体力がなく、レンタルタキシードのお店から会場まで15分歩いてきただけで息切れしているんですが(笑)、そんな私がスポーツの賞を受賞するなんて信じられません。この活動が認められたということは非常に大きいことだと思っています。世界ゆるスポーツ協会は、どちらかというとスポーツが苦手な人を中心に、運動が好きな人も楽しめるスポーツを開発しています。超高齢社会になっていく日本では、おそらく、競技性を追求したスポーツだけでなく、私のように体力がない人でも楽しめるスポーツも産業的には盛り上げていかざるを得ないのではないかと思います。
トロフィーはHEROs AWARD審査員の香取慎吾さんから授与されました。左:香取慎吾さん/右:澤田智洋さん
また、スポーツの良さ、ゆるスポーツ協会の今後についても話しました。
私はスポーツの良さは青臭さだと思っています。普段はビジネスマンをしているのですが、なかなか夢を語ることは許されません。大きなことを言うと何を夢見がちなことを言っているんだと言われます。でも、スポーツは違います。スポーツにおいて夢を語ると、みんなが応援してくれます。世界ゆるスポーツ協会は、本気で世界平和を目指しています。スポーツはみんなで一つのチームになれる、笑顔でまとまっていきます。ゆるスポーツ協会は青臭く、スポーツ通じた世界平和を追及していきたいです。
HEROsは社会貢献活動のキッカケの場に
HEROsアンバサダーの元サッカー日本代表の中田英寿さんは、HEROs AWARDを終えて、感想を話しました。
これだけのアスリートが一堂に会すのはなかなかないことですし、それだけで僕自身も来てよかったなと思います。社会貢献活動というのはなかなか情報を仕入れにくく、それぞれの活動を映像で観ることもないんです。ただ、観てみるとすごく面白くて、自分も「こういうことはできるかな」と考えるきっかけになりました。
また、アスリートに社会貢献活動をどのように取り組んで欲しいかという質問に対しては、次のように話しました。
僕は運よく、現役時代から機会があって、チャリティマッチなどに呼んでいただいて、自分がやっていることを違う形で見せるだけで社会貢献になるんだなというのを知ることが出来ました。そのために、HEROsの活動を通して、色々な人に情報とやり方を伝えたり、この活動が広まっていけば、引退した選手と現役の選手の交流の場も増えていきます。今後が楽しみだなと思います。
ひとりひとりでは、認知を広げることが難しい社会貢献活動も、スポーツ界の“ヒーロー”が集まることで大きく社会へ広めることができます。今後、どのようにHEROsが活動を広げていくのか、楽しみにせずにはいられません。
HEROs設立会見のレポートは以下の記事で紹介しています。
アスリートによる社会貢献活動を。「HEROs」発表会に中田英寿ら登場
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■HEROs SPORTSMANSHIP for THE FUTURE
サイト:https://sportsmanship-heros.jp/