プレミアリーグ2016-17・冬の補強通信簿
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PHOTO by Ben Sutherland
トップクラブは売却中心、下位は積極補強
1月31日は、欧州サッカーの冬の移籍市場締め切り日。イングランドでは「デッドラインデー」と呼ばれており、「BBC」や「スカイスポーツ」のサイトが「Deadline Day Live」という特設ページを設置。各クラブの交渉の進捗について、1日じゅう最新ニュースを配信するほど、サッカーファンの関心を集めるイベントとなっています。さて、2016-17シーズンは、どんな動きがあったのでしょうか。満足いく補強ができたクラブ、大事な選手が出ていってしまったクラブ、「冬は動かない」と静観したクラブについてレポートさせていただきます。
この冬の特徴は、「上位は静か、降格危機のクラブが活発」「中国スーパーリーグの爆買い炸裂」「実力者が下位クラブに移籍」といったところでしょうか。アーセナルはノーザン・プレミアリーグ(7部リーグ!)のヘドネスフォードからSBコーエン・ブラモールを獲得したのが唯一の話題。トッテナム、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティは揃ってノーサンキュー。上位クラブは補強よりも、前半戦で出番がなかった余剰戦力の整理に走りました。
マンチェスター・ユナイテッドは、デパイをオリンピック・リヨン、シュナイデルランをエヴァートンに放出。リヴァプールは伸び悩んでいたイロリをレディングに売り、マルコヴィッチはハル・シティ、クロップ監督から構想外とされていたフランス代表CBサコをクリスタル・パレスにレンタルしました。トッテナムがスウォンジーに売ったトム・キャロルは、移籍後初試合となるリヴァプール戦で勝ち点3獲得に貢献し、古巣を喜ばせています。マンチェスター・シティも若手選手を売っており、噂になっていたサウサンプトンのファン・ダイク獲得には動きませんでした。
オランダで得点王だったデパイは、プレミアリーグ1年半でわずか2ゴール(PHOTO by Kathi Rudminat)
「爆買い中国」にやられたチェルシー!
首位を走るチェルシーもまた、新しい選手を獲得せず、中心選手を放出せざるをえなくなったクラブです。オスカルに5200万ポンド(約75億円)という高額オファーを出したのは、中国スーパーリーグの上海上港。コンテ監督は、ミケルも天津泰達に持っていかれたうえに、エースのジエゴ・コスタにまで中国行きの噂が流れ、「ミケルで終わりにしてほしい」とコメント。高いサラリーに惹かれて選手が流出してしまう状況への危機感を表明しました。デッドラインデーには、ワトフォードのナイジェリア代表FWオディオン・イガロも2000万ポンド(約28億6000万円)で長春亜泰に移籍。欧州No.1の資金力を誇るプレミアリーグも、国家を挙げてサッカーを盛り上げようとする中国には叶わなくなっています。
「家族の事情」でフランスに帰ったディミトリ・パイェ。ウェストハムにとっては大きな痛手(PHOTO by joshjdss)
激しく動いたのは残留争いのクラブたち
おとなしかったトップクラブに対して、中堅・下位は激しく動くクラブが続出しました。最も多くの選手を獲得したのはハル・シティ、話題を集めたのはウェストハムです。インテルで主将まで務めたCBラノッキアが、最下位のハル・シティに移籍すると誰が予想できたでしょうか。エヴァートンのニアッセ、リヴァプールのマルコヴィッチ、ポルトのエヴァンドロなど、総勢8名を獲ったハル・シティは、今季7ゴールを挙げていた司令塔のスノドグラスと中盤を仕切っていたリヴァモアを失っており、プラスマイナスは微妙です。
そのスノドグラスを引き入れたウェストハムは、ディミトリ・パイェの移籍騒動で1月の主役となりました。マルセイユに帰りたいと主張し、練習をボイコットしたパイェについて、クラブは当初「絶対に売らない。最低でも1億ポンド」と突っぱねていましたが、最終的には2500万ポンド(約35億8000万円)で商談成立。代役に選ばれたスノドグラスは、1年半の在籍でリーグ戦48試合11ゴール18アシストという出色の数字を残したパイェの穴を埋めなければなりません。ハマーズは、サウサンプトンからポルトガル代表のベテランCBジョゼ・フォンテも獲得しており、エースを抜かれながらも弱点補強には成功しています。
2年前までインテルで中心選手だったラノッキアが、ハル・シティとは… PHOTO by
Clément Bucco-Lechat
ガッビアディーニ、ニアンなど注目選手が続々登場!
中堅以下のクラブでは、ラノッキアやフォンテのほかにも注目の選手が続々と移籍しています。2014-15シーズンに14ゴールを決めたものの、その後不振に陥っていたWBAのサイド・ベラヒーノはストークで心機一転。ボージャン・クルキッチをマインツにレンタルしたストークは、新しいストライカーでTOP10フィニッシュをめざします。フォンテを売却したサウサンプトンは、ナポリのFWマノーロ・ガッビアディーニを1450万ポンド(約20億4000万円)で獲得しました。レスターがカンテの後釜に指名したのは、ベルギーのヘンクで活躍していたエンディディ。スウォンジーのジョルダン・アイェウは、昨季降格してしまったアストン・ヴィラで孤軍奮闘していた即戦力です。
さて、冬の補強に通信簿をつけるとしたら、満点に近いのはどのクラブでしょうか。ひとつは、サンダーランドのファン・アーンホルト、リヴァプールのママドゥ・サコ、レスターのシュルップと後ろの選手に特化した補強ができたクリスタル・パレス。さらにもうひとつ選ぶなら、ACミランから大器と呼び声が高かったニアンを獲ったうえで、クレヴァリーとサラテまで押さえたワトフォードです。悪童ジョーイ・バートンを復帰させ、クラブレコードとなる1500万ポンド(約21億円)でノリッジのロビー・ブレイディを引き入れたバーンリーも、後半戦の要注意クラブとなりそうです。プレミアリーグを盛り上げてくれそうな冬の新戦力にも注目しながら、熱戦を楽しんでいただければと思います。