プレミアリーグにいよいよVAR導入!監督、選手、評論家は賛否両論!?

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プレミアリーグにいよいよVAR導入!監督、選手、評論家は賛否両論!?

スポーティ

プレミアリーグ2019-20シーズンの幕開けは、8月9日のフライデーナイトにアンフィールドで開催されたリヴァプールVSノリッジでしたが、新しいシステムが効力を発揮した最初の試合は、よく土曜日のランチタイムキックオフとなったウェストハムVSマンチェスター・シティでした。

昨シーズンの王者が0-2でリードしていた55分、ダヴィド・シルヴァのスルーパスでラインの裏に抜けたスターリングが中央にグラウンダーを通し、ガブリエウ・ジェズスが押し込んだシーン。

今季から導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が、わずかにラインから出ていたスターリングの腕をオフサイドと指摘し、ロンドンスタジアムのヴィジョンに「DECISION NO GOAL」と表示されました。

さらに85分にもVARが作動。アグエロのPKをストップしたファビアンスキの動き出しが早いとされ、2度めのキックをマン・シティのエースが冷静に決めています。

プレミアリーグに導入されたテクノロジーは、数ミリのギャップやコンマ数秒のフライングを見逃さないことを印象づけた一戦でした。

メイン写真 photo by Кирилл Венедиктов

マン・シティは開幕から2試合連続ゴール取り消し!


ガブリエウ・ジェズスはプレミアリーグ史上初の「開幕から2戦連続ゴール取り消し」(PHOTO by ФК ШАХТЕР)

ワールドカップや他国リーグでは既に導入されていたVARですが、プレミアリーグにおいては、「試合のペースを妨げない」「最終判断はあくまでもレフェリー」「干渉は最小限」といったコンセプトで運用されています。

対象となるのは、「ゴール」「PK」「一発レッドカード」「選手の誤認」のみ。VARがレフェリーに伝えるのは、「明確な過ち」と「重大な未確認事項」に限られます。

レフェリーは、VARの映像に極力頼らずジャッジすることを求められ、やむをえずモニターをチェックする場合も3回以内のリプレイで判断することを基本としています。

マン・シティが0-5で大勝した80分後には、レスターとアウェイで戦っていたウルヴスが、デンドンケルのフィニッシュの直前にボリの手に当たっていたとされ、ゴール取り消しによってスコアレスドローに終わっています。開幕節の10試合で、VARが作動したのは65回。

2節では、130のシーンについてVARの運用が適切だったかが検証されています。初戦でゴール取り消しとPKの蹴り直しを体験したマン・シティは、トッテナムとのホームゲームで終了直前のガブリエウ・ジェズスの決勝ゴールをラポルテのハンドとされ、無念のドロー決着。

「VARを支持する」としていたペップ・グアルディオラが、試合後会見でシーズンが始まってからのVARに関する微妙なジャッジを列挙するという一幕がありました。

クロップは歓迎、ポチェッティーノは反対!

選手や監督は、VARについてどう捉えているのでしょうか。ペップと同様に歓迎の意を評しているのは、リヴァプールのユルゲン・クロップ。「オフサイドについて抱えてきた多くの問題が解消される。とても明快になる。その他の多くは解釈に委ねられるけど、それはこれまでどおりだからね」と、改善点を的確に指摘しています。

監督における反対派の急先鋒は、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノで、「欧州の試合を見ていると、誰もハッピーになっていない」と語り、ジャッジを待たされるサポーターの苛立ちを懸念していました。

皮肉なことに、トッテナムは、昨季のCLと今季のプレミアリーグのマン・シティ戦で、試合終了直前のVAR判定によって救われています。「今日はわれわれに恩恵をもたらしてくれたが、どこかで悪影響を及ぼす日が来るのは明白だ。しかし、これはルールであり、受け入れなくてはならない」とコメントした指揮官は、未だ新しいシステムの導入に納得していないようです。


「将来われわれを助けてくれると信じているけど、未だ多くの問題があり、それらをどう解決するのかわからない」と語るイルカイ・ギュンドアン(PHOTO by Michael Kranewitter)

情熱とスピード優先か、誤審撲滅か?


「ミスがあるからこそ、フットボールは刺激的になる」。反対派最右翼のモハメド・サラー(PHOTO by Kevin Walsh)

VARに反対している選手は、待ち時間とデジタルなジャッジが試合のスピードやテンションを奪うと主張しています。「VARは好きじゃない。今までのフットボールを愛している。選手やレフェリーのミスを受け入れているからね(モハメド・サラー)」「全く支持しない。感情という最も大切なものが除外されている。VARがあっても、試合後の議論は減っていない」(イルカイ・ギュンドアン)」。

導入を受け入れていても、レフェリーがVARをチェックするかどうかを決めるという運用について異議を唱える選手もいます。

3節のニューカッスル戦で、ラッセルズと絡んで転倒したシーンをスルーされたハリー・ケインは、「あれがPKにならなかったのは理解できない。VARはレフェリーをサポートするためにあるのだから、彼がその場面を見ていなかったのなら介入すべきだ」とコメント。人間の主観が入るシーンについては、これまでと変わらず激しい議論が展開されることになりそうです。

サポーターのテンションやゲームのスピード感を重視するのか、毎年繰り返されるミスジャッジ撲滅を優先するのか。賛否両論あれど、オフサイドやレッドカード疑惑で強みを発揮するVARをひとたび導入すれば、後戻りはできないでしょう。

最終ラインの裏に、ぎりぎりのタイミングで飛び出すアタックを得意とするマン・シティが、最多ゴール取り消しチームとなりそうですが、果たしてどうなることやら。VARの運用が改善されようとも、「ファールかダイブか?」「ハンドか不可抗力か?」といった議論は相変わらず続くのではないでしょうか。

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