ケトン食でウルトラマラソンのパフォーマンスを高めよう!

ケトン食でウルトラマラソンのパフォーマンスを高めよう! DO

ケトン食でウルトラマラソンのパフォーマンスを高めよう!

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マラソンを走っていると、途中で急激に疲れが生じる局面があります。この疲労はよく「30kmの壁」と呼ばれています。これは、マラソンでの主要なエネルギー源であるグリコーゲンが、枯渇することで生じます。
マラソンを走る人にとって、グリコーゲンを節約しながら走ることは重要な戦略です。
その方法の1つとして、エネルギー源として、脂肪の利用を高めるという方法があります。それが、近年注目されている食事「ケトン食」というものです。この食事は、まさにエネルギー源として、脂肪を使えるようにするための食事です。
ここではケトン食とは一体何か、どのようにして、脂肪の利用を高めるかを紹介していきたいと思います。

低糖質高脂肪食 = 「ケトン食」

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体内のエネルギー源として「ケトン体」という物質があります。脂肪は糖質が無いと完全に利用することができません。そのため体内の糖質がなくなってしまうと脂肪を完全に使うことができなくなってしまいます。そんな状態になった時、脂肪はケトン体という物質に変換されます。この物質は筋肉や脳でエネルギー源として使われます。つまりケトン体は、体内の糖質がなくなった時に脂肪から作られるエネルギー源なのです。

ケトン食は、このケトン体を作り出す食事のことを指します。具体的には、糖質をほとんど含まず、60%以上の脂質を含む食事のことを指します。ケトン食のポイントは、糖質をほとんど含まないという点です。糖質が含まれていると、食事をした際に血糖値が上昇します。すると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンには、脂肪の合成を促進する作用があるので、食事に含まれる脂肪は、脂肪組織に取り込まれていきます。そのためケトン体は作られません。また、体内に糖質があるため脂肪を完全に使い切ることができてしまうので、ケトン体が作られません。

一方、ケトン食では、糖質がほとんど含まれていないため、食事をしても血糖値はほとんど上昇せず、インスリンが分泌されません。そのため、食事の脂質は脂肪組織に取り込まれることはなく、エネルギー源として使われます。また、ケトン食では、糖質がほとんどないため脂肪を完全に使えず、ケトン体に変換され、エネルギー源となります。

このような食事を続けていると、運動中にもケトン体を作れるようになり、糖質を使わなくても脂肪を利用できるようになるのです。

ケトン食で脂肪の利用が高まる

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2016年に、ケトン食で、脂肪の利用が、本当に高まるのかを調べた実験が行われました。ケトン食を9ヶ月以上食べた被験者に、一定強度で、3時間ランニングを行ってもらい、その間の糖質の利用量と脂肪の利用量を調べました。すると、普通の食事をしていた人と比べて、ケトン食を食べた人では、脂肪の利用量が1.5〜2倍に増え、糖質の利用量は、半分〜1/3程度に抑えられました。この結果から、ケトン食で脂肪の利用が高まることが示されました。ただ、この実験では、パフォーマンステストを行っていないので、実際にタイムが縮むかどうかまでは分かりませんでした。しかし、ケトン食でグリコーゲンの利用を抑え、タイムが縮む可能性が考えられます。

ウルトラマラソンでは、途中でエイドという食事を提供してくれる場所があります。選手はそこで、おにぎりなどの軽食を食べることができます。食べ物を食べると、消化するために胃や小腸を動かさなければなりません。しかし運動中は、交感神経が活性化しており、また、血液が筋肉に流れていくのでうまく食べ物が消化できず、腹痛を訴えることがあります。

ケトン食を実践し、脂肪を効率よくケトン体へと変換できるようにしていれば、栄養補給の回数も減り、腹痛を感じずに、走ることができます。また、短い時間かもしれませんが、エイドでの食事の時間を減らすことで、食べる時間やエイドに立ち寄る時間を減らすことで、タイムを縮めることができます。ケトン食はウルトラマラソンでは、脂肪の利用を高めることで、グリコーゲンの利用を節約し、栄養補給の回数を減らすことで、タイムを縮める可能性があります。

ケトン食は、最近研究され始めた食事です。今はケトン体を直接食べて、運動パフォーマンスがどう変化するかといった研究も行われています。今後、さらに研究が進み、ケトン食がスポーツに応用できるようになればと思います。