知られざる野球大国・オランダ

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知られざる野球大国・オランダ

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これまで野球といえば、アメリカやドミニカを中心とした北中米、そして日本や韓国のアジアが真っ先に挙げられていた。その二大マーケットに、近年急激な勢いで迫るのがヨーロッパ野球。

今回は2013年第3回WBCベスト4、そして2015年プレミア12第7位のヨーロッパ最強国オランダの魅力に迫る。

250人に1人が、MLB球団と契約をするオランダ

オランダ王国の人口は1,700万人、面積は九州サイズの小国です。その人気ナンバーワンスポーツは、なんといってもサッカー。オランダ野球の競技人口は1.5万人、国民1,100人あたりわずか1人。16人に1人の日本と比べると、そのマイナー度合いがわかります。しかしアメリカ・MLBへの選手供給数は群を抜いていて、メジャーリーガーが8人、マイナーリーガーに至ってはなんと56人。250人に1人の高確率で、MLB球団と契約しています。

そのオランダ野球の選手供給源は主に2つ。ヨーロッパにある本国オランダと、キュラソーやアルーバといったカリブ海に浮かぶアンティル諸国。有名な本国オランダ出身者は、あのデレク・ジーターの後継者、ニューヨーク・ヤンキースのマリエクソン・ディディ・グレゴリウス。また日本のソフトバンク・ホークスで今季大活躍をした、リック・バンデンハーク。一方のアンティル出身者は、強肩堅守のショートストップとして有名なアンドレルトン・シモンズ、そしてヤクルト・スワローズの本塁打記録保持者、ウラディミール・バレンティンなどです。

いずれも、現地にMLBや大学のスカウトが常駐しているため、有望な選手は10代でスカウトをされ、アメリカへと渡ります。

選手の多くがアメリカ野球経験者の国内リーグ

そのアメリカから解雇された選手が数多くプレーするのが本国オランダ。オランダにはホーフトクラッセというセミプロリーグがあります。

ホーフトクラッセには大きく分けて、3種類の選手がプレーしています。
まず、マイナーリーグ帰りの選手。彼らのほとんどはオランダでもプロ契約を結び、月給1,000-3,000ユーロ(約14万円から40万円)でプレーしています。またオリンピックの強化指定選手にも選ばれている事が多く、別途強化費が支給されています。

次に、野球以外の仕事がメイン、その傍らでプレーしている選手。彼らの多くは大卒で、仕事や家庭があります。通常の仕事で生活費を稼ぎ、野球選手としては無給から月数百ユーロ。いわば野球選手が趣味か副業となっている選手です。その中には、幼い頃MLBが関係するアカデミーに通い、プロを目指していた選手も多く、サラリーマン兼業とはいえレベルは高いです。

最後は学生(主に高校生年代)の選手。彼らの多くはMLB主催のアカデミーに在籍をしつつ、クラブチームでプレーしています。彼らの目標は奨学金を得て、北米の大学で野球をすること。高校から即MLBを目指す選手もいますが、現実的な部分で大学進学が1番人気です。

このようにホーフトクラッセは、マイナーリーグ帰りの選手と、アメリカに渡る前の将来有望な選手が中心とっています。結果全体のレベルは、アメリカ・マイナーリーグのルーキーリーグからシングルA程度でと非常に高く、ヨーロッパ随一のリーグとなっています。

元マイナーリーガーが数多く所属するオランダ

元マイナーリーガーが数多く所属するオランダ

拡大傾向にあるヨーロッパ野球

ヨーロッパでは、このオランダとイタリアが野球強豪国とされています。この2国は、国内リーグが財政的にも安定しており、リーグ全体で一定数のプロ選手がいます。

2000年代後半から、ユーロ危機やオリンピックの正式種目からの除外により、ヨーロッパ野球は縮小傾向にありました。それがここ最近、再度盛り上がりを見せ始めています。最新のニュースでは、MLBが5年以内にヨーロッパでの公式戦開催の意向を示し、2016年シーズンには、ヨーロッパ各国のトップクラブだけを集めたリーグ「ユーロリーグベースボール」の開幕が決定しました。

また、ヨーロッパ野球の特徴として、サッカー同様国際移籍も盛んです。マイナー国からスタートして、強豪国に移籍。そして強豪国のトップクラブで活躍し、「ユーロリーグベースボール」や、野球版チャンピオンズリーグの「ヨーロピアンカップ」へとステップアップというキャリアパスも夢ではありません。

ヨーロッパ野球へのトライアウトが日本で開催

そんなヨーロッパ野球で、日本人がプレーするチャンスもあります。
近年、国際大会で好成績を収めている日本野球に対する信頼は厚いものがあり、日本人を獲得したいと考えているチームが数多く存在します。

そのヨーロッパ野球への道を作るために、オランダのスポーツエージェンシー「Footrans(フットランス)」は2016年1月に日本でのトライアウト開催を発表しました。

トライアウト合格者はFootransの現地ネットワークを使い、ヨーロッパ各球団と交渉、移籍へと導きます。
Footransとしては、アメリカに替わる新たなプレーの場としての、ヨーロッパ野球の認知向上。そして最終的には日本人初のヨーロピアンカップ、ユーロリーグベースボール優勝者の誕生を目指しているとのことです。

オランダでの室内トライアウト(2015年春)

オランダでの室内トライアウト(2015年春)

最後に、Footransの担当者が今回のトライアウトへの思いを語ってくれました。

“実力はあるのに、言葉が出来ない、海外生活がイメージ出来ない、何よりヨーロッパ野球への入り方がわからないという選手に対して、野球以外の不安要素を少しでも取り除き、第一歩を踏み出すサポートをしたいと思っています。このトライアウトをきっかけに、ヨーロッパの舞台でプレーをする日本人が増える事を願っています。”

このトライアウトをきっかけに、ヨーロッパでの日本人の活躍が期待されます。拡大を見せるヨーロッパ野球にも今後も注目です。

イタリア王者とオランダ王者の戦いとなった、ヨーロピアンカップ2015決勝

イタリア王者とオランダ王者の戦いとなった、ヨーロピアンカップ2015決勝



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