今年も世界中からやってくる野球少年達の夏の祭典。リトルリーグ世界大会。

今年も世界中からやってくる野球少年達の夏の祭典。リトルリーグ世界大会。 WATCH

今年も世界中からやってくる野球少年達の夏の祭典。リトルリーグ世界大会。

スポーティ

毎年8月にアメリカ・ペンシルバニア州で行われるリトルリーグの世界大会が、今年も8月16日から26日までの10日間に渡って行われます。大会はアメリカ一を決めるトーナメントと、アメリカ以外の世界一を決めるトーナメントに分かれ、それぞれの優勝チームが決勝戦を行います。日本代表チームはこの10年間で優勝5回、準優勝1回と毎年のように好成績を残しています。

大会期間中は、殆どの試合をスポーツ専門ケーブルテレビ局「ESPN」が生中継し、決勝戦は3大テレビネットワークのひとつABCが生中継するなど、米国内での人気は非常に高い大会です。日本における夏の甲子園大会のように、と言えば大げさかもしれませんが、リトルリーグ世界大会はアメリカにおける夏の風物詩の一つと呼べるでしょう。

元祖「日本のベーブルース」は大谷翔平にあらず

故障者リスト(DL)入りで少しトーンが落ちてしまいましたが、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の人気は、現在でも凄まじいものがあります。本格的な投打二刀流選手はベーブルース以来約100年振りということで、アメリカのメディアが大谷選手を称する際に、「日本のベーブルース」という表現がよく使われます。

ところが、大谷選手の出現より6年前にこの称号を得た日本人がいます。2012年のリトルリーグ世界大会において、投打両面の大活躍で東京北砂リーグの優勝に貢献した清宮幸太郎選手(現日本ハム)こそ、その人です。清宮選手のこの大会での成績は、投手としては2勝0敗6.2イニングで15奪三振、打者としては12打数8安打3本塁打、という圧倒的なものでした。13歳だった当時から身長183センチ体重93キロの堂々たる体格だった清宮選手をアメリカの各メディアは「日本のベーブルース」と報道したものです。

大人顔負けの体格の選手もいれば、まだ子供のような体格の選手も

リトルリーグの年齢規定は何度か変更されていますが、基本的には12歳以下の小学生が対象です。現在のルールでは8月31日が基準日になっています。清宮選手は、当時の年齢上限ぎりぎりの出場だったわけですが、それでもその体格は並外れていました。 

リトルリーグの球場サイズは大人の約3/4になっていて、投手から本塁までは約14メートル(大人は18メートル)です。清宮選手は当時から時速80マイル(約128キロ)を超える速球を投げ、それを大人サイズの距離に変換したバッターの体感速度は160キロ以上あったと言われています。

外野フェンスまでの距離も両翼70メートル以下なのですが、清宮選手が決勝戦で放ったホームランの飛距離は約94メートルでした。まさに規格外とも呼べる存在でした。

清宮選手は特別だとしても、この年齢は成長度の個人差が大きく、大人顔負けの体格の選手もいれば、まだ子供のような体格(実際に子供なのですが)の選手も入り混じっています。そのように体格の異なる選手達が硬球ボールと金属バットを使って狭い球場内でプレイするわけですので、安全面での問題はよく話題になります。

清宮選手には気の毒なのですが、この大会において清宮選手が身長145センチ体重32キロのバッターの頭部に当ててしまった死球も、よくそうした議論の引き合いに出されます。

リトルリーグの聖地は人口約3万人

リトルリーグ世界大会は、1947年からずっと毎年8月にペンシルベニア州ウィリアムズポートで開催されています。ウィリアムズポートの人口は約3万人。その小さな町に大小2つのスタジアムと博物館などからなるリトルリーグ・スタジアム・コンプレックスと呼ばれる広大な施設があり、大会期間中は普段の人口の10倍以上、30万~40万人もの人で賑わいます。

2つあるスタジアムのうち、メイン球場はラマデ・スタジアムで最大収容人員4万人。もう一つはボランティア・スタジアムで最大収容人員5千人です。入場はどちらも無料です。座席があるのは内野席だけで、外野は芝生の斜面になっています。段ボール紙のソリで子供達が斜面を滑るシーンはよくテレビに映る名物です。

世界一への道程

アメリカの部は8つの地域代表、アメリカ以外の部はカナダ、メキシコ、カリブ海、ラテンアメリカ、日本、アジア太平洋・中東、ヨーロッパ・アフリカ、オーストラリアの代表8チームによって争われます。

1次ラウンドはアメリカ国内の部、アメリカ以外の国際部、それぞれが「ダブル・エリミネーション」と呼ばれる、2敗した時点で敗退となる形式のトーナメントを戦います。そして、双方の優勝チーム同士が決勝戦、準優勝チーム同士が3位決定戦を行います。

日本は以前はアジア地域の部に入っていましたが、2007年からは日本だけの代表として独立しています。

意外に少ない日本国内のリトルリーグ

2018年の日本代表決定トーナメントは7月20~22日の3日間、長野県の上田市県営上田野球場等で行われます。全国12地域16チームの勝ち抜きトーナメントで、優勝チームが世界大会への出場権を与えられます。

日本リトルリーグ野球協会ホームページによれば、日本国内のリーグ数は231、チーム数は862とあります。アメリカ国内のどの町にも必ずリトルリーグのチームがあり、リトルリーガー人口は200万人以上だと言われていることを考えると、日本のリトルリーグの規模は随分小さいようです。

それにも関わらず、日本代表チームが毎年のようにアメリカ優勝チームを破っているのは、日本の野球少年達のレベルの高さを物語っていると言えます。ですが、近年は東京北砂リーグという同一チームが何回も連続して日本代表になっているのは、やはり日本国内の競技人口が少ないせいでしょうか。

今年の四国予選を勝ち抜き、日本代表決定トーナメントに駒を進めた新居浜リーグの近藤敬コーチに話を聞きました。

ーー年間を通して、どれくらいの頻度で練習しているのでしょうか?

年間通して終日練習は、毎週、土曜、日曜、祝日で8時集合18時半くらいに解散。冬の解散は少し早いです。4月頃から夏まで学校から帰宅後5時〜7時頃まで、平日練習があり、火曜日、木曜日、バッティング練習のみでジャージとかTシャツでもOKです。12月から2月までは冬季トレーニング期間として、野球以外のトレーニングをしています。

ーー試合はどれくらいありますか?

公式戦は3月から11月です。試合の勝ち進み具合にもよりますが、今年出場した大会は5つでした。全日予選、全日本戦、春季大会、秋季大会、新人戦、中四国大会です。公式戦の試合数は9月から今現在までおおよそ11試合くらいです。その他に練習試合も公式戦と同じくらいか少し多いぐらいあります。

ーーメンバーは皆地元の子なのですか? 越境をしてくる子はいますか?

メンバー全員が新居浜在住です。住民票提出を義務つけて、かなり厳しく管理されています。

ーー保護者の方はどれくらいチームに関わってくるのでしょうか?

保護者の方には練習場まで子供の送迎をお願いしています。近所でも子供だけで通ってくるのは不可にしています。
順番にお茶当番があり、半日ほど子ども達を見守る係があります。メンバー数にもよるが、だいたい月に一度の頻度でまわってきますね。
試合や練習試合の時も保護者の車出しや本部のお手伝いをお願いすることがあります。
あと、練習試合のときは、父兄の方に塁審などをしていただきます。

ーー野球がこれだけ盛んな日本で、日本国内のリトルリーグは意外に数が少ないという印象なのですが、なぜなのでしょうか?

四国連盟所属の新居浜リトルリーグなんですが、チーム数も少なくて8チーム前後だと思います。年によって人数の関係でチーム数は増減します。
しかも、四国連盟と言いながらも愛媛県以外の香川、徳島、高知にはリトルリーグはありません。その分、軟式野球の学童だったり、ソフトボールはたくさんあります。
軟式ボールやソフトボールはどこででもできますが、硬式ボールはそうもいかないので、グランドの確保が大変なんだそうです。
幸いなことに、新居浜市は河川敷グランドがあって、シニアリーグ、リトルリーグA級、リトルリーグマイナー用にと3面あります。

ーーなるほど。アメリカだったら、どんなに小さな町でもフェンスで囲まれたリトルリーグ専用の球場がありますからね。リトルリーグを卒業した子達は野球を続けるのでしょうか?

リトルリーグ後は、ほとんど全員がシニアに上がり野球を続けていますね。何人かは、中学の部活動で軟式野球をしたりしますが。
シニアを卒業してからも、高校で野球を続けている子が多いです。優秀な子は、私立の強豪校へ進みます。
市外へ進学する子は、強豪校でも中心選手となり、活躍しているケースが多いです。


リトルリーグ世界大会では各国のチームカラーがお国柄を表すようで、メディアの話題に多く取り上げられます。日本チームの規律と技術の高さは毎回話題になります。わざわざ試合前の日本チームのシートノックを見に来るファンさえいます。日本の子供達の確実な守備と送球、掛け声、ノッカーの正確さ、どれをとっても他の国のチームでは見られないものです。

朝8時から夜18時半までの練習している、と言う近藤コーチの話を聞くと、それもそのはずと納得します。今年の世界大会出場権を勝ち取るのが日本のどのチームになるにせよ、アメリカ中が注目する舞台で、思い切り練習の成果を披露してほしいものです。

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