カリフォルニア・ウィンターリーグに挑戦する選手達

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カリフォルニア・ウィンターリーグに挑戦する選手達

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全米屈指のスカウトリーグとして知られるカリフォルニア・ウィンターリーグ(以下CWL)が、カリフォルニア州パーム・スプリングスで2月6日から約1か月間に渡って開催中です。メジャーリーグ傘下組織や独立リーグを目指す200人以上のプロ野球志望選手達が集まり、10チームに分かれて毎日リーグ戦を行っています。

前回の記事で紹介した安田裕希氏が監督として指揮を執るワシントン・ブルーソックスは1人を除いて全員が日本人。それぞれ異なった背景を持ち、様々な理由でアメリカでの野球に挑戦する選手達を追ってみました。

リーグ中盤を迎えた選手達

筆者が3度目にパーム・スプリングスを訪れたのは、大会が開幕してからちょうど2週間後の2月19日でした。雨で中止になった1試合と、週1回の練習日を除いて、連日の試合が続き、この日が既に11戦目でした。それまでのブルーソックスの戦績は、2勝5敗3引き分け。CWLは選手の発掘が目的のリーグですので、試合の勝敗はさほど問題にはなりません。

試合は全てデーゲーム。カリフォルニアの太陽の下で行われます。冬の日本からやって来た選手達の顔は、開幕前と比べると別人のように日焼けをしていました。

20代前半が中心の若い選手達ですが、さすがに疲労の色が多少あるように見えました。日本で野球をやっていると、毎日練習することはあっても、これだけ試合が続くことは滅多にない。試合と練習では疲れ方が違うのだと安田監督が教えてくれました。

さらに、4人1部屋で暮らすホテル生活も団体生活に慣れない選手にとっては、疲れが取れない原因の一つになるかもしれません。

個人に任されたウォーミングアップ

この日の試合開始時刻は、午前10時。筆者が8時半頃に球場に着くと、既に何人かの選手が外野で思い思いにウォーミングアップを行っていました。その中には安田監督の姿もありました。どの選手よりも安田監督が、一番速く頻繁にダッシュを行っているようにも見えました。CWLでは監督を務めていますが、まだ28歳の現役選手なのです。

ウォーミングアップの内容については、特に指示はなく、選手自身の判断に任されているようでした。ランニングやストレッチを行う選手、バッティング・ケージでティーやトス打撃を行う選手、キャッチボールを多なう選手など、皆それぞれのペースで試合前の準備を行っていました。

個性が光る選手達

カイル・ストール選手は、チーム唯一のアメリカ人選手です。日本から来た選手の中にキャッチャーがいないという理由でチームに呼ばれたストール選手は、実は大谷翔平のような万能選手でもあります。

大学野球で3割以上の打率を残した優秀な打者であるうえに、本職のポジションはと聞くと、第1にユーティリティー・プレイヤー、第2にピッチャー、第3にキャッチャーという答えが返ってきました。

実際にキャッチャー以外にも内野手としてのプレイも見たいとスカウトからの要望を受けて、他チームでの試合にセカンドで出場したり、ピッチャーとして登板までしています。


ワシントン州立大学出身のストール選手は昨シーズンはドイツの野球リーグでプレイした経験を持つ。

3番ライトで1回表の打席に立った池上勝之選手は39歳。CWLでは飛びぬけて年長の選手です。かって「欽ちゃん」ことタレント・萩本欽一が創設した茨城ゴールデンゴールズに所属していた池上選手は、ケガが原因で5年のブランクを作ってしまいました。

このリーグをきっかけに野球への復帰を目指します。残念なことにCWL開始早々、走塁時に足離れに見舞われ、この日は1打席だけの登場でした。


池上選手は勤務先の有給休暇を利用してCWLに参加している。

すぐに池上選手と交代して3番に入ったのは、慶応高校の根岸辰昇外野手。昨夏甲子園大会に5番打者として出場した根岸選手は、この春からアメリカの大学野球に挑戦します。

元AAAプレイヤーで斬新なバッティング理論で知られる根鈴雄次氏から学んだ独特の力強いスイングが魅力です。ここまでの打率はチームトップの4割を超え、CWLでも存分にその実力を披露しています。

この日の根岸選手は、ライトの守備でも魅せました。最終回裏の同点でランナーを2塁に置き、ライト前に転がった打球を本塁までストライク返球。危機一髪の捕殺でチームをサヨナラ負けから救いました。オンライン実況のアナウンサーが「レーザービーム!」と絶叫した見事な強肩でした。


根岸選手のアッパースイングは最新のフライボール理論に基づく。

根岸選手の後ろで4番打者を任されたのが若干17歳の山田大晴内野手。この春に高校を卒業する山田選手もやはりアメリカの大学野球に進みます。身長約180センチ、体重95キロの山田選手は素晴らしいパワーの持ち主。ここまでは打率2割とやや苦しんでいますが、特大のホームランを放つなど、その潜在能力には目を瞠るものがあります。小さくまとまらないでほしいと安田監督も活躍に期待をかけます。


スケールの大きさを感じさせる山田選手のバッティング。この直後に特大のホームランを放った。

神奈川大4年の遠山真也投手は184センチの恵まれた体格から投げ下ろす速球が魅力の本格派です。この日は2イニングの登板でした。自分でも課題だと言う制球難に苦しむ場面はありましたが、球威では打者を完全に圧倒していました。ここまで12イニングを投げて奪三振は17個を数えています。


力投する遠山投手。野茂英雄を彷彿させる力強いストレートとフォークが武器。

アメリカでは珍しい下手投げの岩谷慶一郎投手も注目の存在です。短いイニングながらも毎日のように登板し、ここまで防御率2.73と好成績を残しています。下手投げを始めたのは高校時代からとのこと。対戦チームには下手投げの投手を初めて見る選手も多く、前述のストール捕手も実は下手投げのボールを受けたことが一度もないのだと開幕前に筆者に打ち明けてくれました。


岩谷投手の華麗なピッチングフォーム。パワー溢れる相手打者を翻弄する。

いよいよリーグ後半戦に突入。そして選手達の行方は。

さてこの日の試合終了後に嬉しいニュースが入ってきました。前述の遠山投手が米国独立リーグの1つであるフロンティア・リーグのシャンバーグ・ブーマーズ(イリノイ州)と正式に入団契約を結んだことが発表されたのです。

フロンティア・リーグは、米国中西部と東海岸で展開するリーグで、シーズンは5月から始まります。これがスタートラインだと語ってくれた遠山選手の活躍が楽しみです。

3月3日の最終日に向けて、CWLは後半戦に入りました。ブルーソックスに予定されているのは、リーグ戦残り7試合とプレーオフ数試合のみです。遠山選手に続いて契約を勝ち取る選手が現れるかもしれません。

ここで紹介した選手たち以外にも、夢を実現する選手、今回は叶わななかった選手、それぞれに様々な運命が待ち受けています。悔いのない後半戦をと祈るばかりです。