二人のホットラインは最強の武器 自分のために、仲間のために戦い抜く

二人のホットラインは最強の武器 自分のために、仲間のために戦い抜く SUPPORT

二人のホットラインは最強の武器 自分のために、仲間のために戦い抜く

スポーティ

チームの司令塔・ポイントガードとして、周辺視野の広さ、優れた状況予測能力を高く評価される吉田亜沙美選手。身長193cm・地面から腕を上げた指先までの高さが250cm、そして優れた跳躍力とスピードを持ち、日本の女子バスケットボール選手としてただ一人、両手でダンクシュートを決めることができる渡嘉敷来夢選手。二人は日本代表として2016年オリンピック リオ大会で20年ぶりのベスト8へ進出し、JX-ENEOSサンフラワーズでバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)を戦い、2016-17シーズンでは史上初の全勝優勝を成し遂げています。東京2020オリンピック競技大会に向けて、吉田選手、渡嘉敷選手の二人の想いを聞きました。

JX-ENEOS 吉田亜沙美選手・渡嘉敷来夢選手

オリンピックで20年ぶりのベスト8進出

2016年8月。バスケットボール女子日本代表「アカツキファイブ」は、オリンピック リオ大会で世界の強豪を相手に堂々とした戦いを披露した。ベラルーシ、ブラジル、フランスと、いずれも世界ランク上位の相手から勝利を挙げ、1996年アトランタ大会以来20年ぶり(5大会ぶり)となるベスト8進出を果たした。

準々決勝では世界ランク1位のアメリカに敗れ(アメリカはオリンピック6連覇を達成)、アカツキファイブのメダルへの夢は潰えたものの、渡嘉敷来夢は東京2020大会に向けて手応えを感じていた。

「吉田亜沙美さんとのホットラインは世界に通用する。この武器を磨いていくことで、東京大会ではメダルを狙える」

高身長かつ走れて跳べるパワーフォワード(PF)の渡嘉敷と、技術・視野・頭脳に秀でるポイントガード(PG)として攻撃を組み立てる吉田は、ともにJX-ENEOSサンフラワーズに所属。チームメイトとして8年間、互いに「生かし、生かされる」関係を日々、高め合っている。そのサンフラワーズは、2016-17シーズンの女子日本リーグ(Wリーグ)で9連覇を達成。レギュラーシーズンとプレーオフを合わせ34勝0敗の成績を収め、リーグ史上初の全勝優勝を成し遂げた。

充実したシーズンを、2人は次のように振り返る。

吉田 全勝できたことは素直に嬉しいです。でもこのシーズンは、対戦相手と戦っているというよりも自分たちとの戦いでした。「ヘッドコーチ(トム・ホーバス氏=2017年4月からは女子代表ヘッドコーチに専任)の求めるバスケットを超えたい」という目標を掲げて始まったシーズンだったので、すごく苦しい期間もありました。

渡嘉敷 本当に1試合1試合、自分たちのバスケットをしっかりとやるだけという感じだったので、「全勝」とか「記録」とかを意識することはなかったですね。それにもちろん、目の前の相手に負けたくないという気持ちを常に持ち続けていました。

吉田 ヘッドコーチは細かいところをしっかりやろうというスタンスなので、40分間自分たちのバスケットをするということがすべての試合の目標でした。戦い方のベースにあるのは、隙のないディフェンスから、素早くブレイクして攻めるスタイル。それを40分間貫く。39分でもダメ。最初から最後まで、徹底してやることが求められました。しかし個人個人、コンディションの良い時もあれば悪い時もあったので、それを毎試合実行することは大変でした。私は、そのような波をどう減らしていくかをしっかり考えながらプレーしていました。

渡嘉敷 特に吉田さんはポイントガードという、攻撃を組み立てる役割を持った選手なので、コートにいる一人ひとりの状態を見極めながらプレーしていたと思います。

吉田 みんなのよさを引き出すことも私の役割。調子の良い選手、よくない選手は試合中にわかります。そして、乗っていないと感じた選手の流れを変えてあげることも、私の役割だと思います。

渡嘉敷 実は私、シーズンの最後に迎えたトヨタ自動車(アンテロープス)とのプレーオフ・ファイナル(3戦先取制)で、3試合ともなかなか波に乗れなくて……。

吉田 そういう時、渡嘉敷選手にはなるべくインサイドで点を取らせてあげようと思いながらパスを配っています。やっぱり彼女の高さ、強さが生きるゴール下で点が取れれば気持ちにも余裕が出てくるし、余裕が生まれればアウトサイドもうまくいくと思うんです。

渡嘉敷 そうですね。自分の得点がなかなか伸びない時も、チームの流れが悪い時も、私がゴール下で点を取ってリズムをつかんでいければ、と思っています。

吉田 やはり彼女のような選手に点を取らせることは、パスの出し手としてはすごく楽しいんです。それに、渡嘉敷選手は日本代表でもスタートを務める選手ですが、そのレベルにあっても自分の限界を超えようとしている。日本(Wリーグ)のシーズンがオフの間、アメリカのリーグ(WNBA)にも挑戦している姿は、本当に素晴らしい。もっとすごい選手になって、私を楽しませてほしいですね。

渡嘉敷 私はそんな吉田さんが心強いです。私を引き出してくれるアイディアをいちばん持っているのが吉田さん。コートにいる時は、吉田さんあっての自分だと思っています。

司令塔の狙いすましたパスが、もがくエースを蘇らせる。エースが自信を回復すれば、チームの歯車が再び小気味よく回り出す。「苦しい時こそ、私を見て」。長年磨き続ける吉田と渡嘉敷のホットラインが、サンフラワーズでも日本代表でも生命線となる。

バスケットに親しんで、Wリーグや日本代表に興味を持ってほしい

信頼しあう2人だが、もちろん相手に頼るばかりではない。それぞれ個人としていかに成長するかを、東京2020大会へのポイントに挙げる。

吉田 リオ大会の最終戦、アメリカの強さに大きな衝撃を受けました。前半はある程度競った展開でしたが、後半一気に離されましたから。このアメリカとの差を詰めていきたい。そのためにはまず、一人ひとりがスキルアップすることはもちろん、体の強さ、当たりの強さを身につけなければならないと思います。私は以前から、下半身の強化をテーマにしたトレーニングを行っています。「ヨーイドン」で競争しても世界では勝てないので、相手の一瞬の隙を見抜いて切り込んでいくスピードで勝負したいです。

渡嘉敷 当たり強さは、私も意識しています。日本では体が大きいぶん、今のままで通用しちゃうところもあるんですが、世界には私より小さくてもパワーのある選手が少なくありません。

独立行政法人日本スポーツ振興センターは、スポーツくじ(toto・BIG)の売上によって得られた収益を元に、アスリート個人の競技力向上のために助成金を交付している。吉田と渡嘉敷は、その「アスリート助成」の平成28年度対象選手だ。

渡嘉敷 個人のレベルアップのためのトレーニングには、スポーツくじのアスリート助成を活用させていただいています。施設を利用したり、トレーナーさんに教えていただいたり、アスリートとしてさらに高いレベルへ行くために必要な部分を支えていただいているので、スポーツくじの助成には本当に感謝しています。

吉田 スポーツくじに支えていただいていることに常に感謝の心を持ち、しっかりとトレーニングを積んで自分を変えていきたいです。今まで以上のパフォーマンスを身につけて、結果を出し、女子バスケットを盛り上げることで、支えてくださっているみなさんに恩返ししたいと思っています。

またスポーツくじ(toto・BIG)の収益は、都道府県や市町村が所有するスポーツ施設に、移動式のバスケットゴールを設置することにも役立てられている。その助成実績は平成28年度(2016年度)までに100件を突破した。

吉田 バスケットゴールを備えた施設が増えることで、バスケットが多くの人にとって身近な存在になってくれると思うと、嬉しいです。バスケットに親しんでいただいて、Wリーグや日本代表チームにも興味を持っていただけたらと思います。

渡嘉敷 私が小さい頃、バスケットがしたくてもコートがない、場所はあってもそこにゴールがないということもあったので、各地の施設にゴールが置かれることはバスケットボールの普及に向かう大きな一歩だと感じます。アメリカで車や自転車を走らせれば、そこかしこにゴールが置いてあり、どんな人でもプレーできる環境が当たり前のようにあります。日本でもゴールがあれば、目にとめる人は多いと思いますし、やっぱりあったら「シュートを入れてみたい」ってみなさん思うのではないでしょうか。そういう「やってみたい」という気持ちがたくさんの人の心に広がっていくのかなと想像すると、スポーツくじの助成を本当にありがたく感じます。

自分のために、そして仲間のために

2017年、女子日本代表「アカツキファイブ」は7月にインドで開催される「2017 FIBA ASIA女子カップ」に出場する。この大会は「2018 FIBA女子ワールドカップ」(スペイン開催・16チーム参加)に向けたアジア地区予選の場でもある。アカツキファイブは、2015年のアジア選手権に続くアジアのタイトルと、3大会連続となるワールドカップ(前回までの大会名は世界選手権)の出場権獲得を目標に挑む。

渡嘉敷 アジアカップにはオーストラリアとニュージーランドの2か国が新たに加わります。オーストラリアは世界ランク2位という強豪ですので、そういうレベルの国とアジアで戦えることは楽しみです。受け身にならずどんどん挑戦して、優勝を勝ち取りたいと思っています。

吉田 アジアカップは優勝を狙います。そしてワールドカップへの切符(4位以内)を必ず取ることを目標に掲げたいと思います。日本が世界で戦うカギは、しっかり組織で守って、そこから走ること。リオ大会に出場した12チーム中、日本は平均身長が一番低くて唯一の170cm台でした。特に守備の時には、ポジション争いで後手を踏むと身長差が露呈するので、ボールを持たせる前にいかに相手を封じるかが鍵になりますね。

渡嘉敷 そうですね。守備は一人ひとりのフットワークと、味方同士カバーし合うことが大事。日本代表はそれがよくできていたなって思います。攻撃では、日本の走るバスケットに、リオ大会でも相手がついてこられなかったと感じました。さらに追求していきたいです。

チームワークに関していえば、新ヘッドコーチのホーバス氏が「日本人ほど献身的にバスケットをする集団を見たことがありません」とコメントしている。吉田、渡嘉敷の2人にとって「自分のために、そして仲間のために」という思いは、どのように芽生え、育てられてきたのだろうか。


吉田 バスケットに関わったことで自然に芽生えたんだと思います。小学生の頃から楽しくバスケットをしてきましたけれど、「みんながいるからバスケットができる」という感覚は、ごく自然に育っていったと思います。

渡嘉敷 私がバスケットをやり始めたのは中学から。団体スポーツをやるのもその時が初めてでした。始めたばかりの頃は、組織プレーとか献身性とかあまり意識することはなかったですけれど、レベルの高いチームに行けば行くほど、チームワークを意識するようになりました。

リオでつかみとれなかったメダルを、東京で。

仲間を大切にして、粘り強さときめの細かいプレーで世界に挑むアカツキファイブ。その主軸となる2人が、東京2020大会に向けての意気込みを、改めて述べた。

渡嘉敷 リオでつかみ取れなかったメダルを目標にしたいです。

吉田 私も同じです。リオで忘れ物をしたので、取り返したいです。

渡嘉敷 また、2020年に向かうこれからの3年間は、選手がどれだけ頑張っているかを伝えることも大事になってくると思います。選手の競技力の向上と同じように、情報発信力も、今から必要になると思います。

吉田 そうですね。日本人は真面目ですけれど、アメリカ出身のトム(・ホーバスヘッドコーチ)は私たちに「バスケットを楽しんでほしい」とよく言うんです。ですから「バスケットってこんなに楽しいんだよ」と多くの人に感じてもらうことも、私たち選手の務めなのかなと思います。チームとして点を取る、チームとして守る。私は、そこがバスケットの醍醐味だと感じています。バスケットというのは、チームワークが見えやすいスポーツ。ある選手が点を取った時、そのために他の選手がどんな働きをしたのか、というところが、初めて見た人にもわかりやすいスポーツだと思います。

渡嘉敷 私自身プレーヤーとして、バスケットの面白さは、相手との駆け引きにあると思います。知恵比べや心理の読み合いには完成形がないだけに、いつも楽しみです。また、初めてバスケットを見てみたいと思っている方には、ぶつかり合いや空中戦などの迫力を楽しんでもらえたらと思います。


吉田 東京2020大会を盛り上げるために、たくさんの人にバスケットを好きになってもらえたらと思います。みなさんと試合会場でお会いできることを楽しみにしています。

(2017年3月、千葉県柏市にて)


growing バスケットボール 吉田亜沙美 渡嘉敷来夢