若きバスケットマン・安藤誓哉 日本人初カナダプロリーグへの挑戦

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若きバスケットマン・安藤誓哉 日本人初カナダプロリーグへの挑戦

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2014年11月、カナダプロバスケットボールリーグ『NBL CANADA』に初の日本人選手が誕生します。

名前は安藤誓哉(あんどう・せいや)。宮城・明成高校時代に全国制覇、明治大学でも全国準優勝の主力として活躍し、U-18/U-24での日本代表経験も持っている選手です。

正確なアウトサイドシュート、力強いゴール下への突破とディフェンス、そして勝利への大きな意志を持った彼は大学4年生となった今年6月、大学のバスケ部を退部。「海外挑戦」という道を選び、ファンを騒然とさせました。

なぜこのタイミングだったのか。そしてそもそもなぜ海外を志したのか。所属チーム「Halifax Rainmen(ハリファックス・レインメン)」のキャンプインを間近に控えたタイミングで、安藤選手の胸の内をうかがうことができました。

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世界はもっと広くていろんな選手がいる

安藤選手がバスケットボールを始めたのは小学1年生。父親が元プレーヤーで、気付けば自宅のテレビでNBAが放映されているという環境のもと、海外へのあこがれは小さなころから自然と根付いていました。その思いは高校3年生の冬、U-18男子日本代表としてアジア選手権を戦ったことでいっそう現実味を帯びてきたと、安藤選手は振り返ります。

「海外でプレーしてみたいという気持ちは小さいころからあったけど、当時バスケットで海外に出るという選択肢はほとんどありませんでした。やっぱりどこかで無理だと思っちゃう人がほとんどだと思うし、自分もそうだったんです。その中でU-18日本代表に選ばれて初めて海外チームと対戦したら、攻めるときの風景と威圧感が全然違って、『うわあ』って思ったんです。そのとき、海外で戦いたいっていう思いが一気に出てきました」

この大会で、日本代表は8位と振るわない結果に終わりました。しかし安藤選手はその結果に落ち込むどころか、逆に世界へのあこがれを募らせます。アジア選手権の上位チームが出場した世界選手権の模様は、FIBA(国際バスケットボール連盟)が運営する有料動画配信サービスで視聴。自分たちがアジアで戦った強豪たちがどこまで世界と戦えるのかを確かめました。

「僕らが勝てなかった中国や韓国が、リトアニアやアメリカとかに手も足も出ないのを見て、世界はもっと広くていろんな選手がいるんだなと思ったし、『世界』への気持ちはさらに強まりました」

安定したバスケット生活と長年の夢

世界のバスケットを体感したことにより海外挑戦へのあこがれは最高潮に達したものの、安藤選手にはそれを実現する方法が分かりませんでした。さらに、大学で着実に実力と実績を積み重ねたことで、卒業後の獲得を希望する国内チームも出てきました。

国内リーグでプレーするか、それとも不安定ながらも長年の夢を追うか――。大学4年の春、刻一刻と迫る決断の時を前に、安藤選手は野澤亮介さんという男性に出会います。

野澤さんはアメリカNo.1セミプロリーグ・Drew League(ドリュー・リーグ)のチームでヘッドコーチを務める傍ら(Drew Leagueの詳細と野澤さんの紹介記事はコチラ)、日本人では7人しかいないFIBA公認エージェントであり、海外リーグやヘッドコーチに幅広いコネクションを持っている人物です。安藤選手は共通の知人を介して野澤さんとコンタクトを取り、話をする中で自らの進路を自らの進路を決断しました。

5月の公式戦が終わるとチームを退部し、アメリカに渡った安藤選手。アメリカ人の猛者がひしめくDrew Leagueで、安藤選手に与えられたプレータイムは長くはありませんでしたが、「やるしかない」と腹をくくった最終戦で出場3分、7得点の大活躍。このプレーがハリファックス・レインメンのオーナーの目に留まり、チームのミニキャンプへの招待につながり、さらにキャンプで結果を残したことによって、安藤選手はチームとの契約を勝ち取りました。

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大学バスケをやめて海外に行く意味

安藤選手の決断は、周囲の大きな驚きを呼びました。

大学側からすれば、頼れる大黒柱が急にいなくなってしまうのです。「引退まであと数か月なんだから、それまで待てばいいじゃないか」という声や、否定的な意見も少なからずありました。しかし安藤選手のバスケットに懸ける譲れない、切なる思いは止められませんでした。

「国内リーグから海外リーグに移籍する最短ルートは、国際試合で相当目立った活躍をして、海外チームの目に留まること。ただ、代表活動は年に1度きり。一度うまくいかなかったら、次の代表活動まで確実に国内に残留しなければいけない。どんどん海外に出るタイミングが遅れていくんです。そして、その間に選手生命に関わるケガをしたらおしまいじゃないですか。もしかしたら、その日が明日かもしれない。何があるか分からない、だから『今しかない』と思ったんです。もっと日本や海外で稼げる選手になるには、早く海外に行くしかないと思ったんです」

安藤選手が口早に、ほとばしるように語った言葉には、少し前まで大学生プレーヤーだったとは思えない「プロフェッショナル」としての覚悟が感じられました。

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“カナダで戦う日本人”としてのプライド

安藤選手が所属するハリファックス・レインメンは、昨シーズンは8位と不振に終わりましたが、今シーズンはかつてチームを初優勝に導いたペップ氏を再度ヘッドコーチに迎え勝負をかけます。

ファーストシーズンの目標を「まずは試合に出ること」と位置付けた安藤選手。安藤選手と同じポジション(ポイントガード)の2選手との競争に勝ちぬき、スターティングメンバーの座を勝ち取りたいと語ります。

「スターティングメンバーになってチームで信頼される存在を目指すとともに、『カナダで戦う日本人』というプライドを持たないといけません。初めてカナダでプレーする僕がひどいプレーを見せたら、今後、カナダの人は日本人を見てくれなくなる。そうならないように、結果を出したいです」

そう力強く宣言した安藤選手の初戦は、現地時間11月7日に行われます。安藤選手の今後を応援するクラウドファンディング(企業ではなく個人ひとりひとりのスポンサーをインターネット上で集めるサービス)も実施中。支援金はカナダへの渡航費、滞在費、活動費にあてられます。あなたも若きパイオニアを支援しませんか?

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