世界ランキングの付け方から分かる錦織圭の凄さ

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世界ランキングの付け方から分かる錦織圭の凄さ

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現在数多くのCMに出演し、その活躍が連日ニュースで報じられるなど、絶大な知名度を誇るプロテニスプレイヤー錦織圭選手。2014年の全米オープン、錦織選手が決勝に進出したというニュースは、テニスに興味がない人でも一度は目にしたのではないでしょうか。

そんな錦織選手は現在も活躍を続けていて、最新の世界ランキング(5月9日付)では、ATPランキングで6位、ATP Race To Londonでは4位につけています。

これを聞いて、普段テニスに興味がない方の中には、テニスのランキングって2つあるの?と思った方がいるかも知れません。また、普段テニスに興味があってもどのように世界ランキングが付けられているのか詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、テニスの世界ランキングの付け方について解説します。ランキングの付け方を知ることで現在世界6位の錦織圭選手の凄さが改めて見えてきます。

2種類あるテニスのランキング


男子プロテニスツアーを運営しているのは、男子プロテニス協会、通称ATPです。このATPが男子テニスにおける世界ランキングなどを管理しています。テニスのランキングで分りにくいところは、ランキングに2種類あること、大会によって与えられるポイントが変わることでしょう。

テニスのランキングにはATPランキングとATP Race To Londonの2つがあります。

一般的に言われる世界ランキングはATPランキングのことを指します。ATPランキングは、過去52週(約1年間)に出場し、成績の良かった上位18大会のポイントの合計で決定されます。

ATP Race To Londonは、ツアー最終戦上位8人のみが参加できるATPワールドツアーファイナルズ専用のランキングで、そのシーズンのみのポイントによって順位が決まります。

上位のプロテニス選手はATPワールドツアーファイナルズを目標にしているので、ATP Race To Londonの順位が重要になります。しかし、ATPランキングの順位によって大会でのシード権が決まるので、上位を目指すには毎年安定した成績を残す必要があります。


テニスの各大会にはグレードがあります。グランドスラム、ATPワールドツアーマスターズ1000、ATPワールドツアー500、ATPワールドツアー250の4つに分けられ、これらの大会がツアー公式戦と呼ばれています。参加する大会のグレードによって獲得できるポイントが変わり、優勝するとグランドスラムから順に、2000、1000、500、250のポイントがランキングに加算されます。

グランドスラム優勝で獲得できる2000ポイントはテニスのランキングにおいて、とても大きなポイントになります。例えば、世界ランキングで1500位の選手がグランドスラムで優勝した場合、一気に10位前後までランキングを上げることが出来るのです。獲得できるポイントからも、グランドスラムがテニス選手にとっていかに大きな大会であるかが分かると思います。

また、この他にも国別対抗戦(デビスカップ)での戦績もランキングに反映されます。これまではオリンピックの戦績もランキングに反映されていましたが、2016年のリオオリンピックではポイントが加算されないことが発表されています。

プロのテニス選手は、”成績の良かった18大会がポイントに加算されること”と”大会にはグレードがあること”を考慮して、出場する大会を決め、ツアーを回ることになります。

錦織選手のような上位選手にかかる過酷なルール


テニスの世界ランキングには、トップ30位以内の選手に対する追加のルールがあります。まずグランドスラムは全豪、全仏、全英、全米の全ての大会への出場義務が発生します。

ATPワールドツアーマスターズ1000では、モンテカルロ大会を除く8試合への出場が、ATPワールドツアー500では4大会に出場が義務付けられています。さらに、ATPワールドツアー500のうち1試合は全米後の大会に出場しなければならない、と細かく決められています。

ATPワールドツアー500に関しては、オリンピック、デビスカップのワールドグループ、ATPワールドツアー1000のモンテカルロ大会への出場はATPワールドツアー500にカウントされます。

出場義務のある試合に出場しなかった場合、獲得ポイントは0となるだけでなく、ランキングに関係する上位18試合にも加算されます。例えば、もしも全豪に参加しなかった場合、上位18試合のうち1試合が0ポイントになり、実質17大会の成績でランキングを争うことになります。

2012年のロンドン五輪では準々決勝で敗退してしまった錦織選手。今年のリオ五輪ではメダル獲得が期待される

錦織選手の今後の試合日程は、上位30選手に出場義務のあるグランドスラム、ATPワールドツアーマスターズ1000、ATPワールドツアー500の大会が数多く組まれています。8月にはオリンピックも開催され、デビスカップのワールドグループの試合も含めるとかなりの過密日程になっています。

現在錦織選手は、ATPワールドツアーマスターズ1000の大会であるBNLイタリア国際に第6シードで出場しています。シード勢が順当に勝ち上がった場合、錦織選手は準々決勝でフェデラーに、準決勝で王者ジョコビッチに、そして決勝ではマレーと対戦するドローとなっています。

そして、この大会の1週間後には全仏オープンが開幕します。勝ち上がれば勝ち上がるほど過密になるスケジュールの中、どの大会に参加するかといった戦術も必要になります。

この後も8月にはオリンピックが開催され、その後も出場義務試合が全米オープンまで隔週で続きます。世界中を転戦するATPツアーは、大会間のわずかな日数で移動も含めて次の大会に備える必要がありますが、今年はオリンピックがあることで、さらに過酷な日程となり成績にも影響があるでしょう。

錦織選手の活躍で注目されることが多くなったテニスですが、こうやって見ていくとプロテニス選手、特に上位の選手がいかに過酷な戦いであるかが見えてきます。そんな中でTop10以内を維持し続けている錦織選手の活躍が、とても凄いことであると分かると思います。様々な制約のあるハードなスケジュールの中で、最高のパフォーマンスを実現する錦織選手の活躍にこれからも期待していきましょう。


以下は現在の上位10選手のランキングとポイント数になります。(括弧内は前週のポイント数)

【ATP ランキング】(2016年5月9日付)

1位 N・ジョコビッチ(セルビア)………16,550ポイント(15,550ポイント)
2位 R・フェデラー(スイス)……………7,525ポイント(7,535ポイント)
3位 A・マレー(イギリス)………………7,525ポイント(7,925ポイント)
4位 S・ワウリンカ(スイス)……………5,675ポイント(6,460ポイント)
5位 R・ナダル(スペイン)………………5,915ポイント(5,915ポイント)
6位 錦織圭(日本)…………………………4,290ポイント(4,290ポイント)
7位 JW・ツォンガ(フランス)…………3,400ポイント(3,400ポイント)
8位 T・ベルディヒ(チェコ)……………2,940ポイント(3,120ポイント)
9位 D・フェレール(スペイン)…………2,920ポイント(3,010ポイント)
10位 M・ラオニチ(カナダ)……………2,740ポイント(2,740ポイント)

11位以下のランキングや、最新のランキングはこちらから

【ATP Race To London】(2016年5月9日付)

1位 N・ジョコビッチ(セルビア)…………5,350ポイント(4,350ポイント)
2位 R・ナダル(スペイン)…………………2,660ポイント(2,300ポイント)
3位 A・マレー(英国)………………………2,525ポイント(1,925ポイント)
4位 錦織圭(日本)……………………………2,140ポイント(1,780ポイント)
5位 M・ラオニチ(カナダ)…………………2,110ポイント(1,930ポイント)
6位 G・モンフィス(フランス)……………1,665ポイント(1,620ポイント)
7位 D・ティエム(オーストリア)…………1,540ポイント(1,530ポイント)
8位 S・ワウリンカ(スイス)………………1,265ポイント(1,255ポイント)
9位 R・バウティスタ=アグ(スペイン)…1,220ポイント(1,130ポイント)
10位 D・ゴファン(ベルギー)……………1,185ポイント(1,175ポイント)

11位以下のランキングや、最新のランキングはこちらから

(Photo By Marianne Bevis and Katherine Lim)

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