日本最古のサッカーチーム、東京蹴球団。 第1回天皇杯覇者は来年で創立100年!

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日本最古のサッカーチーム、東京蹴球団。 第1回天皇杯覇者は来年で創立100年!

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1993年にJリーグが開始されたのち、日本におけるサッカーの人気は確固たるものとなりました。2016年現在、Jリーグの正会員クラブは53。J1に18チーム、J2に22チーム、J3に16チーム(FC東京U-23・ガンバ大阪U-23・セレッソ大阪U-23を含む)が在籍しています。

さて、冬のサッカーの風物詩といえば天皇杯。日本サッカー協会の創設に合わせて開催されたこの大会は、国内3大タイトルの1つとされています。そんな歴史ある大会の記念すべき第1回大会優勝チームが、東京蹴球団(東京都昭島市)です。

当時、天皇杯本大会の出場チームは4つに過ぎませんでしたが、東京代表の東京蹴球団は決勝戦で大阪代表の御影蹴球団を1-0で破り、長らく続くこの大会に名を残すことになりました。

東京蹴球団、通称「東蹴(とうしゅう)」は現在、東京都社会人サッカーリーグ1部に所属しているチームで、創立されたのはなんと1917年。日本サッカー協会よりも先に存在した、日本最古のサッカーチームなのです。

東蹴が所属する東京都社会人サッカーリーグは地域リーグと呼ばれ、昇格すると関東サッカーリーグ2部に参加することができます。その上には関東サッカーリーグ1部があり、そこから昇格するとJFL。プロと呼ばれるJリーグは、そのさらに上に位置します。

まさにアマチュアスポーツとプロフェッショナルスポーツの狭間ともいえる場所で、東蹴は歴史を積み上げてきたわけです。

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クラブのファーストカラーはレッド、セカンドカラーはブルーの東京蹴球団

東京1部初制覇。目指すは関東リーグ、さらにはJFLへ

現在のメンバーは約60人。今年は春先から順調に勝ち点を重ね、1部リーグ初優勝を成し遂げました。次は関東サッカーリーグ2部昇格をかけて、11月5日から始まる関東社会人サッカー大会に出場します。

チームを率いているのは鈴木基之監督(56)。1983年に同チームに入団しプレイヤーとして活躍した後、2001年から監督に就任しました。「今年のうちは泥臭く、守り勝つことしかできない。自分たちがやれることを一生懸命やろうと伝えた結果、優勝することができた」と話します。

鈴木監督になってからは2002年に東京都4部を優勝し、翌年には3部で優勝。早々に2部昇格を果たしましたが、その後はなかなか結果が出ない時期を送りました。「皆、仕事や家庭がある。人数が揃わずに10人で試合をしたこともあった。2部ともなると、人が揃わないと下位チームにコロッと負けてしまうことも多々あった」と振り返ります。

自身も普段はコピー機を販売するセールスマン。仕事をする傍ら、練習場の確保や大会登録などの事務作業、運営マネジメントまでこなしています。練習は週3回と定めていますが選手の自主性に任せており、試合当日にコンディションのチェックをし、戦術を伝えているのです。

「いつの時代もそこそこのレベルだから100年も続いてるんじゃないの」と笑う鈴木監督。しかし、自身が辞めたら誰もやらないというのが現状だそう。「この歴史を自分の時にストップはできない」。その思いを持って、チーム運営に携わっているのです。

また、今後の展望については「元Jリーガーを集めて強くなりたいとも、有望な若手を引っ張ってJリーグ養成所にしたいとも考えてはいない」とし「とりあえず今あるもので、アマチュアサッカーの最高峰、JFLを目指せるようになれば」と語ってくれました。

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ハーフタイムに指示を出す鈴木監督

職業は自営の大工。西條尚人キャプテン

現在は、東京学芸大学出身のプレイヤーが多く所属しており、チームの中核を担っています。入団4年目、今シーズンからキャプテンを任されている西條尚人選手(29)もその一人です。

今年のチームテーマは守備、基本戦術の徹底。その中で、守備の要であるセンターバックとしてチームを支えています。「今年は戦術の浸透ができていたと思う。うちはスーパーな選手はいないけれど、高い意識を持ってアマチュアサッカーに取り組んでいる選手が多い」と分析しています。

小学校2年生で始めたサッカー。もちろんプロ入りに憧れを抱いていましたが、東京学芸大学在学中はレギュラーになれず、そこで夢に区切りをつけました。

大学で一緒にプレーしてきた高橋秀人選手はFC東京で活躍し、日本代表にも選ばれました。渡邊一仁選手は、J2ファジアーノ岡山の中盤として活躍しています。そんな彼らを見て、西條キャプテンは悔しさを感じたといいます。その反骨精神が、仕事がある中でサッカーをするという特殊で過酷な世界で走れる理由なのではないでしょうか。

職業は大工。しかも自営という西條キャプテン。平日は夜から練習に参加し、日曜の試合までにコンディションを整えます。今現在の目標は「チームとしてはJリーグを目標にするのではなく、目の前にある昇格を目指す。個人的には30代後半まで今のレベルを保って、サッカーをやっていたい」と語りました。

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空中戦の強さを武器とする西條キャプテン

「過去は過去」、「今は今」。東京蹴球団の挑戦

初代天皇杯王者という肩書きを持ちながら、過去の栄光に囚われずにあくまで自然体で年月を重ねてきた東蹴は、来年で創立100年を迎えます。選手の中にはその肩書きや歴史を入団してから知った、という人も。けれども、むしろそれで良い。そんなスタンスが伺えました。

100年続く日本最古のサッカーチームは、地域貢献や日本サッカー界に寄与するなど大層な目的を掲げるのではなく、自分たちの目の前にあるものを1年1年クリアしていったのです。

チーム運営に必要不可欠なものの一つは資金です。ですが、東蹴にスポンサーはついていません。立派なクラブハウスもなければ、専用グラウンドもない。中学校のグラウンドなどを借りて、練習をしているのが現状です。

鈴木監督は「本格的にJFLを狙えるチームになったらスポンサー探しも考えなきゃ」と話していました。創立99年目にして、初めて獲得した1部優勝。まさに今こそが変革期、かも知れません。

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