全身持久力を測定する「呼気ガス分析」って何?

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全身持久力を測定する「呼気ガス分析」って何?

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スポーツを行っている方なら、最大酸素摂取量(VO2max)という言葉を聞いたことがないでしょうか。

最大酸素摂取量とは、体内に取り込める酸素の最大量のことで、全身持久力の指標となる数値です。マラソンやサッカーのような長時間走り続ける競技や、陸上中距離や競泳ではかなり重要な能力です。

最大酸素摂取量は、「呼気ガス分析」という分析方法で測定することができます。呼気ガス分析は高価な装置が必要で、これまでトップアスリートが中心に測定していました。

しかし、最近ではこの測定を行ってくれる施設が増えてきて、誰でも測定できるようになってきました。

今回は、呼気ガス分析は一体どのような測定で、具体的にどのような分析を行い何が分かるのかを紹介していきます。

マスクをつけて限界まで走る

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まずは、呼気ガス分析ではどのような測定をするのかを紹介していきます。

呼気ガス分析は、吐いた息を集めるためのマスクをつけて、始めはジョギングくらいの速度からスタートして徐々に速度を上げていき、これ以上走れないという速度まで走るという測定です。

速度の上げ方としては、一定の速度で3分間程度走った後1 km/h速度を上げてまた3分間走ると速度が上がるという方法が一般的です。

この他には3分間一定の速度で走ったら1分間休憩し、その後速度を上げてまた3分間走る、という方法も用いられます。この方法は休憩の1分間に血中乳酸濃度を測定する際に用いられます。

このように徐々に速度を上げていきどの速度まで走れるかというテストを行いながら吐いている息を分析し、全身持久力を測定します。

取り入れた酸素と吐いた二酸化炭素を測定する

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呼気ガス分析で測定するデータは、体内に取り入れた酸素の量と吐いた息に含まれている二酸化炭素の量です。

昔は、大きなバッグに吐いた息を集め、テスト終了後に分析を行うダグラスバッグ法という方法が用いられていましたが、現在は、1呼吸ごとに吐いた息を自動で分析する機械があり、その機械を用いて分析を行うbreath-by-breath法が主流となっています。

私たちは糖質や脂質を分解してエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使って走っています。糖質や脂質を分解するには酸素が必要となります。

また、糖質や脂質が分解されると、二酸化炭素が作られます。作り出された二酸化炭素は呼気中に吐き出されます。

呼気ガス分析では、徐々に速度が速くなるので、時間が経つと、より多くの酸素を取り込み、より多くの二酸化炭素が吐き出されます。

こうして得られた酸素摂取量と二酸化炭素排出量を分析して、様々な項目が計算されます。

マラソンペースや持久走パフォーマンスが分かる

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呼気ガス分析を行うと、最大酸素摂取量(VO2max)、最大酸素摂取時走速度(vVO2max)、ランニングエコノミー、換気性作業閾値(VT : Ventilation Threshold)といった項目がメインで返却されます。

VO2maxは、体内に取り込める酸素の量の最大値のことで、持久走パフォーマンスと密接な関係があることが分かっています。この数値は、走っている間、1分間に体内に取り込んだ酸素の量を体重で割った値で返却されることが多いです。

vVO2maxは、最大酸素摂取量が現れた時の走速度のことです。この速度は、1500m走や5000m走などと密接な関係があります。vVO2maxを高めるには、VO2maxを高めることも重要ですが、後述するランニングエコノミーやVTを上げることも重要になります。

ランニングエコノミーは、特定の速度(ある程度楽に走れる速度)で走っている時の酸素摂取量のことを指します。

ランニングエコノミーは、走の経済性とも言われており、ランニングの燃費を表す数値として知られています。ゆっくりな速度で走っていても、酸素摂取量が多いと多くのエネルギーを必要としていて、効率の悪い走りと言えます。逆に同じスピードでも酸素摂取量が少ないと燃費のいい走りといえます。

VTはマラソンのペースの目安になる数値です。徐々に速度を上げて走っていると、始めは酸素摂取量は緩やかに上昇していくのですが、ある速度を境に酸素摂取量が急激に増加します。このポイントがVTです。VTは、エネルギー源が脂質メインから糖質メインに切り替わるポイントとも言われています。

マラソンを走る際は、できるだけ糖質を節約しながら走る方が有利です。VTは、糖質を節約しながら走れる最大の速度を表すので、マラソンのペースの目安となるのです。

この他にも酸素摂取量と二酸化炭素排出量から、糖質と脂質の利用割合や消費エネルギーなども計算することができます。吸っている息と、吐いている息だけで、これだけのことが分かるなんてすごいですね。

VO2maxを測定できる施設がある

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呼気ガス分析は、これまでトップアスリートが行ってきましたが、現在は、ジムにも普及してきており、誰でも測定できるようになってきました。

呼気ガス分析を行っている施設としては、東京体育館やSPORTS SCIENCE LAB、横浜市スポーツ医科学センター、SPA白金、TREATトレーニング&治療院などがあります。

またPolar社から販売されているOH1という製品を用いると、安静にした状態でVO2maxを推定することができます。この製品ではVTやvVO2maxといったマラソンに役立つ指標までは分かりませんが、運動を行わなくても簡単にVO2maxを測定できるというメリットが挙げられます。

呼気ガス分析は身近なものになってきているので、マラソンのペースを知りたい方や今の全身持久力がどの程度なのかを知りたいという方は測定してみてはいかがでしょうか。


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