強敵UAE戦直前!ガーナの英雄、日本人選手も活躍するUAEリーグの実態とは

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強敵UAE戦直前!ガーナの英雄、日本人選手も活躍するUAEリーグの実態とは

スポーティ

W杯アジア最終予選も折り返しに入ろうとしています。3月24日0時30分(日本時間)に、日本代表はUAE代表とW杯の出場権をかけて戦います。ここ数年のUAEはアジアにおいて、素晴らしい存在感を示しています。
ロンドン五輪サッカー競技においても出場権を獲得して、ウルグアイ代表を苦しめました。さらに昨年の9月1日に行われたUAE代表戦(日本ホーム、会場:埼玉スタジアム)では、日本代表がまさかの敗戦を喫しました。前回の試合は司令塔のオマル・アブドゥッラフマーン、快速FWのアメード・カリル、抜群のシュートセンスを誇るアリー・マブフートによる強力なトライアングルを形成されて、日本代表は追いつめられました。今回は負傷によりカリルは招集されませんでしたが、アジアカップ2015でも苦杯を舐めた相手ですので油断は禁物です。日本が2度も敗北を喫したUAEのサッカー事情を知る上で、UAEで開催されているプロリーグを調べると様々なことが分かりました。

TOP画像:Photo by Tutomu Takasu
2008年に行われたUAE戦、玉田圭司選手とのマッチアップシーン

UAEのプロリーグとは?

まず、UAEとはどんな国でしょう。UAEはアラブ首長国連邦の英語読みであるUnited Arab Emiratesの頭文字を取った略称であり、アラビア半島の東に位置する厳格なイスラム法を敷いている産油国です。欧州クラブのスポンサーを務めるエミレーツ空港が所在することでも有名です。


UAEの位置

プロリーグは「アラビアン・ガルフ・リーグ」という名称です。潤沢なオイルマネーを背景に、強力な外国籍選手を多く保有する西アジア屈指の強豪リーグです。リーグを代表するクラブはリーグ優勝最多(12回制覇)のアル・アインです。このクラブはガーナ代表で49得点を記録するアサモア・ギャン(現アル・アハリ)や上記したオマル・アブドゥッラフマーンに、サンフレッチェ広島の優勝に貢献したドウグラスや鹿島で素晴らしい活躍をしたカイオなど強力な選手を複数保有しています。この他にもローマやユヴェントスで得点を量産したミルコ・ヴチニッチ(アル・ジャジーラ)などがプレーしています。ACLでは、2002-03シーズンにアル・アインが優勝するなど、西アジアにおいて強烈な存在感を示し続けています。


Photo by PUMA
ガーナ代表で最多得点数を記録するアサモア・ギャン

森本貴幸、増田誓志もプレー

このリーグでは、日本人選手が所属しています。過去にアル・ナスルに在籍していた森本貴幸選手(川崎フロンターレ)は、このリーグにおける日本人選手のパイオニアと言っていいでしょう。彼は度重なる負傷に苦しんできましたが、所有権を保有していたカターニアは、森本選手のアル・ナスルへ期限付き移籍を発表。当時のアル・ナスルはカターニアの監督を務めていたワルテル・ゼンガが指揮を取っており、UAEの地で恩師と共に戦いました。彼の成績はリーグ成績13試合6得点、ACL3得点とチームを牽引。日本人選手で初めて中東に渡った森本選手は一定の成功を収めました。


現在UAEリーグで活躍する増田選手、甘いマスクに似合わぬハードワーカーだ

現在もUAEリーグは日本人選手が活躍しています。今年に入って、増田誓志選手がアル・シャールジャSCCに入団。彼は長い間鹿島アントラーズの中盤を支え続け、日本代表にも選出された質の高いボランチです。彼の特徴は日本人離れしたフィジカルの強さと豊富な運動量であり、正確なパスやパンチの効いたミドルなどの攻撃面の強みもあります。また端正な顔立ちから女性サポーターからの人気も高いです。

日本人選手は年俸よりリーグレベルを重視する移籍が多かったため、中東などの資金力が豊富なリーグに移籍するケースはほぼ存在しませんでした。しかし、森本貴幸選手の移籍から徐々に増え始めています。今後日本人選手が活躍することによって、中東からのオファーが増加するかもしれません。

※2017年6月にサンフレッチェ広島より塩谷司選手がアル・アインに加入

外国籍選手とUAE人選手の置かれている状況

UAEの外国籍選手はイスラム圏特有の縛りというものはなく、外国籍選手も生活しやすい環境をクラブやリーグ側が提供してくれます。トップ選手になると24時間の通訳帯同、住居や自動車の支給など給料面以外のサポートも充実しています。一方で国内選手もこういった待遇には差はありませんが、国外移籍を簡単に許さない傾向があります。これは、アラビア法を厳しく準拠する国の方針でもあり、人間も国の財産であるため簡単に国外へ出さないといったものです。実際にサウジアラビアなど、特別な理由がない場合は入国ができないといったイスラム法治国家もあります。実際に、UAEから海外移籍をしたケースは少なく、CBのハムダーン・アル=カマーリーがフランスの強豪リヨンやマルタリーグのバレッタFCに期限付き移籍をしたケースしかありません。


Photo by Ali Khodaei
アル・アインで10番を背負うオマル、ベンフィカからオファーも

上記のような理由があるため、UAE代表の主要戦力が欧州へのチャレンジは、難しい状況にあります。以前オマルはポルトガルの強豪ベンフィカからオファーを受けましたが、クラブから家族を手厚く養ってもらっているので(出自が貧しいイエメン移民)、国外への挑戦ができなかったというエピソードもありました。その反面、国内クラブは協会と蜜月の関係を形成しているため、代表合宿などには積極的に協力しています。そのため、代表チームにおいても連携面の向上やクラブチームと同じような信頼関係・距離感を形成することができます。これがUAE代表の強さの秘訣と考えられています。

日本代表はUAE代表を苦手としていますので、UAEホームでの試合は厳しいものになるでしょう。しかし、代表チームの層が薄いため脆い面もあります。恐らく、W杯出場において彼らは、日本にとって最大の障壁となるでしょう。24日0時30分キックオフのUAE戦から目が放せません。

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