新スターの誕生なるか!?フィギュア大国のホープたち

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新スターの誕生なるか!?フィギュア大国のホープたち

スポーティ

昨シーズンは羽生結弦選手が世界チャンピオンに返り咲き、シニアデビューの三原舞衣選手が次々と自己ベストを更新し世界選手権では日本勢トップに立つ、というプレオリンピックシーズンに相応しいドラマが繰り広げられたフィギュアスケート界。

来年に迫った平昌五輪に向けて、ファンの皆さんは他国のライバル選手の動向も気になるところでしょう。ここでは「フィギュア大国」と呼ばれるロシア、アメリカ、そして日本のホープたちを紹介・分析していきたいと思います。

可憐な猛者 アリーナ・ザギトワ(ロシア)

昨シーズンの世界ジュニア選手権を、ジュニア歴代最高点で優勝したロシアの15歳。 1年間の戦績からも凄まじい強さが一目瞭然です。

  • ロシア選手権 2位
  • 世界Jr.選手権 1位
  • ロシアJr.選手権 1位
  • JGPファイナル 1位
  • JGPリュブリャナ杯 3位
  • JGPサン・ジェルヴェ 1位
  • ユーロユース五輪 1位
  • この強さはどこから来るのでしょうか。
    まず、現世界チャンピオン、エフゲニア・メドベージェワ選手と同じスケートクラブ、SDUSSHOR 37に所属していることが挙げられます。
    メドベージェワ選手は「将来性がない」と幼少期に属していたクラブを追い出され、SDUSSHOR 37に移籍した後に絶対女王の称号がついた為、背負っているものが少し他の選手とは違うのでしょう。そのような選手と身近で練習することで、ザキトワ選手も感化されていると思われます。

    ザキトワ選手の演技からも、メドベージェワ選手の影響が見られます。
    最も特徴的なのは、「加点の多さ」です。ジャンプを跳ぶ際に片手、もしくは両手を頭の上に挙げることで、GOE(Grade Of Execution)と呼ばれる加点を稼ぐ工夫をしています。ほとんどの選手は、ジャンプの回転数を安定させるために両手を体の前に組みます。手を挙げるということは、それだけ基礎力がしっかり身についている証拠です。

    また、ジャンプを全て演技後半に跳ぶところも加点を狙った工夫です。2012~2013シーズンから、ショートプログラムもフリープログラムも、演技後半のジャンプは1.1倍の点数がつくというルールが適用されています。これは演技全体のバランスや、体力面を考慮して実行している選手は少なく、メドベージェワ選手もショートプログラムのみで挑戦しています。しかしザキトワ選手は抜群の基礎体力を活かして、フリープログラムでも実践した結果、歴代最高得点を引き寄せました。シニア界に参戦すればフリープログラムの演技時間は4分に延びるので、どのような戦略を立てるか注目です。

    復活のジャンパー ヴィンセント・ゾウ(アメリカ)

    2013年全米ジュニア選手権で史上最年少王者になったものの、膝の怪我の影響により2シーズンほど試合から離れていました。シニアデビューも遅れ復帰を危ぶまれたところ、昨シーズンに入りタミー・ガンビルコーチに指導を仰いだことが転機となりました。全米選手権2位、世界ジュニア選手権初制覇を含め、出場した試合全てでメダルを獲得しました。

    そんなゾウ選手の最大の強みは「時代に乗る」適応能力でしょう。
    彼が休養していた2シーズンというのは、フィギュアスケート界が大きく動いた時期でした。まず、ボーカル入りの曲の使用が解禁、名前が呼ばれた30秒以内に定位置に着かないと減点1点(以前までは1人60秒)、ジャンプの回転数の厳正化など、一気に細かいルール改訂が発表されました。今年引退を発表した浅田真央さんも、1年の休養を経て復帰した試合では時間制限を勘違いし、定位置に着くのが遅れたため惜しい1点を失うことになりました。2シーズン分のルール改訂を身に付けた上でのジュニアチャンピオンというのは、ゾウ選手が初です。

    また、ルール以上に、ジャンプのトレンドというものが数シーズンごとに変わっていきます。ここ数シーズンは、「多種・多数の4回転時代」です。いかに難しいジャンプを何本跳ぶか、そしてそのうちの何本が1.1倍になる後半で跳ぶか、という勝負になっています。1シーズン休養しただけで取り残される危険がある中、ゾウ選手は4回転を2種類組み込んだ、ジュニア最強のフリープログラムで勝負してきました(ジュニアでは4回転が跳べるのはフリーのみ)。
    現在の男子フィギュアでは最高難度の4回転ルッツを冒頭で決め(このジャンプだけで15.46点)、4回転サルコウを2本(1本はコンビネーション、1本は後半、それぞれ15.80点、12.41点)という、シニア界でも十分通用する演技構成と得点でジュニアチャンピオンに君臨しました。国内でも知名度が上がり切っていませんが、今シーズンは注目の的となるでしょう。

    真の総合力 坂本花織(日本)

    昨シーズン才能を開花させたのが、日本の17歳、坂本花織です。全日本ジュニアを制覇し、シニアでも7位入賞。シーズン末の世界ジュニア選手権では自身初の銅メダルを獲得しました。日本女子の層が厚いのは言うまでもありませんが、世界に通用する質の高い層だと証明した選手です。

    坂本選手の強さは、3種類の3回転-3回転ジャンプを跳ぶ身体能力に加え、ジュニア選手には珍しいスケーティング技術も兼ね備えた、総合力で勝負できる点にあります。特技は水泳と長距離走、と体力には余裕があるのでジャンプでミスをしてもリカバリーができるスタミナの持ち主です。
    また「スケーティング技術」というのは、主にスケート靴と氷の隙間の角度を指します。傾けば傾くほどバランスが取りづらく難しいですが、それだけ行動範囲が広がり見栄えがします。坂本選手の場合は体力がある分、スピードも出るので軽やかに靴を傾けているように見えます。ソチ五輪銀メダリストのパトリック・チャン選手は、「僕のスケーティングが評価されているのは、体の上下の動きが多いからだ。」と自身の技術を分析します。チャン選手が言うように、体の上下の動きがバランスよく取り入れられている選手は、動きが大きく、ダイナミックに見えます。坂本選手は体を目いっぱい伸ばしたり、氷に向かって沈めたりと、メリハリのある上下の動きで演技をします。

    その結果、157㎝の本来は小柄な体が大きく見え、「芸術点」と呼ばれる演技構成点が伸びます。昨シーズンの世界ジュニア選手権のフリープログラムでは、総合1位のザギトワ選手の演技構成点が62.21点、2位の本田真凛選手が62.58点、そして3位につけた坂本選手は60.06点と、意外と僅差の闘いでした。ジュニアでは7本のジャンプのうちの5本を前半に跳んでいたので、点数が1.1倍になる後半のジャンプを増やせば、更に点差を縮める期待ができそうです。

    平昌五輪での10代の活躍

    上記の3選手は現段階ではみな、五輪シーズンでシニアデビューをする予定です。出場年齢制限もクリアし、ジュニアでも実績がありながらシニア選手の陰に隠れてしまっていますが、来シーズンは大きな波乱を起こすでしょう。
    来シーズンのグランプリシリーズは10/20ロシアで開幕です。

    フィギュアスケート 世界選手権 美女