世界の力を知っているからこそ、ビーチバレー・石井美樹選手は東京オリンピック出場を目指す!

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世界の力を知っているからこそ、ビーチバレー・石井美樹選手は東京オリンピック出場を目指す!

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湘南ベルマーレスポーツクラブのビーチバレーといえば、北京、ロンドンと2大会連続でオリンピックに出場した白鳥勝浩選手(現トヨタ自動車)がかつて所属していました。その湘南ベルマーレ・ビーチバレーチームに現在所属し、東京オリンピック出場を狙う選手がいます。
それが国内ランキングNo.1の石井美樹選手です。

ビーチバレーの魅力とともに、東京オリンピックに向けての想いを紹介します。

風や砂は敵か味方か!?
自然の力がビーチバレーをおもしろくする

小学校低学年でバレーボールを始め、高校卒業後にはV・プレミアリーグでもプレーした経験のある石井選手。24歳でインドアを離れたのち、かつての恩師の誘いに応じて、ちょうどリオデジャネイロオリンピックの出場権を獲得するための予選が始まる前に、軽い気持ちでビーチバレーを始めました。

転向したてながら、タイミングよく代表選手を決めるトライアウトに参加するチャンスを得て、代表選手6人に選ばれました。その結果、転向からわずか3年で国内ランキング1位にまで上り詰めました。

ビーチバレーを始めた頃は、ペアを組んでいた先輩と二人で練習をしていたので限界がありました。でも、転向したばかりなのにすぐに代表になってオリンピック予選に出ることになったので、コーチの指導が受けられるようになりました。予選までの半年間でギューっと練習した感じです。さらに予選の期間、合わせて約2年の間、休みなしで練習と試合の繰り返し。10年分くらいやったんじゃないかと思うくらいハードな2年間を過ごしました。

インドアもビーチもバレーの技術としてはそれほど変わらないと石井選手は言います。しかし、環境の違いが及ぼす影響は計り知れません。環境への対応力こそがビーチバレーの実力につながっていると言っても過言ではありません。

インドアは床が硬いので力を入れてなくても飛べますが、ビーチバレーはそうはいきません。きちんと力を入れるべきところに入れてないとジャンプもできないんです。最初の頃は、砂の上で走れないし、普通にパスをしているだけで息が上がったりしていました。

日本バレーボールの頂点であるV・プレミアリーグに所属した経験のあるアスリートですら、根本的に身体を鍛え直す必要があったと言います。それほど自然の影響は大きいということ。でも、それがビーチバレーの魅力でもあります。

やり始めた頃はできないことが多かったんですけど、教えてもらうにつれて日に日にできている実感が自分で持てて、これができたから次はこれをやってみようかってコーチから言われながら練習を重ねました。ビーチでは、環境に応じてプレーの選択が違います。風があったり、砂が違ったり。今日はこのプレーだったけど、砂が深かったら違うプレーをしないと戦えない。だから一つのプレーができても、もしかしたらこちらのプレーのほうが良いのかも、という感じで限界がないんです。それが私が感じているビーチバレーの魅力です。

実は、V・プレミアリーグに所属していたときも2年ごとにチームを代えたり、活動休止を挟んだりしていた石井選手。3年以上、モチベーションが続いたことがないと笑います。ちょうど今がビーチバレー選手として3年目を迎えたところ。

限界がないから、私は続けていける、そう思っています。

国内ランキング1位とはいえ、その日の風や砂によって順位が入れ替わるビーチバレー。今は、どのような環境でもベストな選択をできるプレイヤーになりたいという目標を持って、ビーチバレーを戦っています。

世界レベルを戦い抜いて、東京オリンピック出場を目指す!

ビーチバレーに転向していきなり世界を舞台に戦うことになった石井選手。しかし、その経験が今、胸に秘めるオリンピックへの思いに繋がっていると言います。

ビーチバレーを始めてすぐに代表になって、そのときはインタビューなどでやっぱり『リオデジャネイロオリンピックを目指します!』って言っていたんです。でも、終わってみて、『世界のレベルはこんなに高かったんだ』というのと『私は本気で思ってなかったな』というのをすごく実感しました。口だけだったなと。でも、オリンピック予選に出たから本当に必要なものがわかった。よかったなと思います。

ビーチバレーでオリンピック出場を目指すには、いくつかの方法があります。リオデジャネイロオリンピックの時のレギュレーションは、大陸予選を勝ち上がるか、世界最終予選を勝ち上がって日本として出場枠を勝ち取る方法、あるいはワールドツアーを回って世界ランキング15位以内に入るか、世界選手権に優勝してチームとして出場権を獲得する方法の4つでした。そして、開催国には特別に枠が1つ、与えられます。

2020年の東京オリンピックでも、他のレギュレーションはまだ決まっていませんが、開催国枠は用意され、女子ビーチバレーもペア1チームは必ず出場できるのです。

しかし、前回のリオデジャネイロオリンピックを目指したときに大陸予選で1位になる道を選択した石井選手は、国内のチームと開催国枠を争うのではなく、今回も前回同様に海外のチームを相手に戦い抜いて東京オリンビックに出たいと考えています。

オリンピックは4年に一度だし、東京開催というのもあって、みんないつも以上に力が入っていると思います。私自身の最終目標もオリンピックです。でも、私はオリンピックだからとか、東京だから頑張ろうとは思っていません。大陸予選を勝ち抜いたり、ワールドツアーに出てポイントを貯めて世界ランキング15位以内に入れば必然的にオリンピック出場権がもらえるんです。だから、世界で戦って自分の力で、オリンピックに出たいと思っています。

石井選手は、身長172cm。バレーボールの選手としては小柄な方。現在ペアを組んでいる村上めぐみ選手は165cmと、さらに小柄です。この二人のペアが世界に出ればフィジカル的なハンデはますます大きくなります。

世界に行くと私たち小人なので(笑)。他の国の選手が10cmくらいジャンプすればいいところを私たちは30cmも40cmもジャンプしなくちゃいけない。常に毎試合、全力じゃないと勝ちきれません。ちょっと体力が落ちたら勝てないです。それは、遠征で各地を回るという体力も含めて、です。

フィジカル的にもメンタル面でもタフさが要求される勝ち上がり方を目指しています。また、インドアも同様ですが、実際のコートのなかでの戦い方も小柄なアジア人選手は不利といえます。

私たちが世界で戦うと、ブロックがないのと一緒です。そうなるとディフェンス力が勝負になります。二人で拾って、それをなんとかコースに打つ、みたいな。相手がミスをするのを待つような我慢強さが大切です。

耐えきるディフェンス力とともに、攻撃面でも工夫が必要です。素直に打ったスパイクは簡単にブロックで止められてしまいます。

相手のブロックが高かったりするんで、攻撃の仕方は考えますよね。ちょっと低めにトスをもらって早く攻撃するとか。

相手を見ながら工夫する上に風や砂といった自然の影響が大きいけれど、それこそが石井選手にとってのビーチバレーの楽しさです。

相手によってじゃあこうやってみよう、ああやってみようと考えるのが楽しいですね。それに世界で戦えるのは、本当に大きな喜びです。インドアの時は、日本国内だったんで。海外の選手と対戦するのはやっぱり楽しいですね。

石井選手のビーチバレーの経験のなかでは、国内での対戦よりも海外での戦いの方が長いのです。

ワールドツアーに出て世界女王と対戦したことがあったんですけど、やっぱりすごいなと思いました。コートに入って対戦していても、『これは拾えない!』とか、二人で『うわー!』みたいな。そういうのを感じながらやれるのが面白いんですよね。
 でも逆に、『これを拾えればこのチームに勝てる』『手も足も出ないわけじゃないよね』という話にはなります。それに世界で強いチームもそんなに大きい選手ばかりじゃないんです。180cm弱くらいの人たちが強い。であれば、私たちでもいけるんじゃないかという話はします。

東京五輪予選に向けて、背の高い選手と組んだ方が良いのでは?という声もあります。それでも石井選手は、世界で戦うなら俊敏さと一瞬の判断力が冴えるプレーが持ち味の村上選手がベストパートナーであると考え、世界を舞台に五輪出場を目指しています。

そうしたらもう1チーム、出場できるので。日本としては2チーム、出たいじゃないですか!

オリンピックに2チームが出場すれば、勝ち上がる可能性も高くなると石井選手は考えています。だからこそ、今できる精一杯に挑んでいるのです。

ビーチバレーのシーズンは、日本国内では10月始めまで続き、各地で大会が開催されます。季節が深まることで日差しや風が変わり、ビーチによって砂は変わります。そうした環境に合わせて戦う選手たち。

近くで開催される大会には、ぜひ足を運んで、石井選手に限らず、ビーチバレーにかける選手たちの熱い戦いにご注目ください。

写真提供:湘南ベルマーレ

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