残留できたのはなぜ?プレミアリーグ最小クラブのボーンマス徹底研究

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残留できたのはなぜ?プレミアリーグ最小クラブのボーンマス徹底研究

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2014-15シーズンにチャンピオンシップで優勝を遂げ、クラブ創立125年目で初めてプレミアリーグ昇格を果たしたボーンマスは、年間売上が1290万ポンド(約19億5000万円)しかない小さなクラブでした。
メイン写真クレジット/PHOTO by Paulblank

プレミアリーグ昇格時の年間売上はズラタンの年収以下!?

先頃、「フォーブス」が発表したスポーツ選手の年収ランキングによると、プレミアリーグ1年目のズラタン・イブラヒモヴィッチは30億円強の年棒をもらっていたとのこと。ズラタンの3分の2しか金庫に入らなかったクラブは、2015年の夏に3940万ポンド(約59億5000万円)の赤字を計上し、ファイナンシャル・フェアプレー違反で760万ポンドの罰金を支払っています。本拠地バイタリティスタジアムの収容人数はわずか1万2000人。ボーンマスはかなり背伸びをしながらプレミアリーグの門をくぐったのです。

バイタリティスタジアムの小ささに悩むクラブは、同じ敷地内における新しいスタジアムの建設を検討中(PHOTO by Matthew Jackson)

プレミアリーグ初年度の選手の給与総額は2500万ポンド(約37億8000万円)でもちろん最下位。ユニフォームの胸スポンサーであるスペインのブックメーカー「Mansion」から受け取っていた金額はたったの7万5000ポンド(約1130万円)で、彼らの次に少なかったレスター、ノリッジ、サウサンプトンは100万ポンド(約1億5000万円)と桁が2つも違いました。

当時のプレミアリーグファンの多くが、降格候補の本命にボーンマスを指名したはずですが、初年度は最下位アストン・ヴィラの次に多い67失点を喫しながらも16位で残留に成功。得点力がUPした2016-17シーズンは、前年王者のレスターの上を行く9位でフィニッシュしています。

今季は、11月終了時点で4勝2分8敗、得点12失点16で15位。直近6試合で3勝と調子を上げています。補強にお金をかけられない彼らは、なぜしぶとくトップリーグに残っているのでしょうか。調べてみると、ボーンマスは相当工夫をしながらチームづくりをしているのがわかります。

海外クラブから獲らない徹底した「お買い得補強」

TOP10フィニッシュを果たした昨季のチームを見てみると、奇妙な事実に気づかされます。EU加盟国出身選手のゴールは、アイルランド人のハリー・アーターの1発のみ。16ゴールを重ねたジョシュア・キングはEU非加盟国のノルウェー出身、3ゴールのライアン・フレイザーがスコットランドで、その他はすべてイングランド人選手が決めています。プレミアリーグに出場した25人のうち、18人までを自国選手が占めており、この比率はもちろんリーグNo.1。過去2年で、海外のクラブから獲得した選手はフランスのル・アーブルから呼び寄せたリス・ムセだけです。

チェルシーから来たGKべゴヴィッチは、格安の移籍金1000万ポンドで獲得(PHOTO by joshjdss)

2016-17シーズンの開幕前には、リヴァプールのジョーダン・アイブ獲得にクラブレコードの1500万ポンド(約22億7000万円)を投じていますが、マット・リッチーやトムリンを売りさばいて選手売買の収支をマイナス1000万ポンド以内に抑えています。今季の補強も堅実で、16年前にクラブに在籍していたジャーメイン・デフォーを移籍金ゼロでゲット。チェルシーから獲ったGKべゴヴィッチとナタン・アケは、いずれも出場機会を失っていた選手です。プレミアリーグでの実績がないために安く獲れる選手か、ビッグクラブで余剰戦力となった選手に的を絞ったお買い得補強。ここまで徹底度が高いのは、ボーンマスだけです。

クラブレコードの1500万ポンドで連れてきたジョーダン・アイブは未だリーグ戦ノーゴール。今後の奮起に期待(PHOTO by Kev Ruscoe)

ひたすら走り、短いパスをつなぐサッカーに注目

ボーンマスがいくら効率よく補強していたとしても、それだけで強くなるわけではありません。ピッチに目を移すと、彼らのフットボールもコンセプチュアルであることに気づきます。39歳の若き指揮官、エディ・ハウによる「走るサッカー・つなぐサッカー」。プレミアリーグ2017-18シーズンは、11節までのクラブ別走行距離ランキングでリーグ1位。1256kmを走り抜いたチームから、個人別のTOP10にひとりも入っていないのは、全員がさぼらず動いている証拠です。

守備の中心は、パスセンスに長けたナタン・アケ。主将のサイモン・フランシスと32歳のチャーリー・ダニエルズのベテランSBが上下動を繰り返し、疲れ知らずのサーマンとアグレッシブなアーターが中盤をめまぐるしく走り続けます。ジョーダン・アイブやスタニスラスが仕掛け、前線のジョシュア・キング、デフォー、カラム・ウィルソンらが仕留めるパターンが機能すればビッグクラブ相手でも充分戦えそうですが、負傷がちのスタニスラスに昨季の迫力がなく、デフォーがフィットしていないのが昨季よりも順位を落としている理由でしょう。彼らが本領を発揮し、後半戦に強いジョシュア・キングが量産体制に入れば、ボーンマスはクラブ史上最高のポジションを狙えるはずです。

補強予算の少なさをチームプレーで補うエディ・ハウ監督の爽快なパスサッカーで、小規模クラブがどこまでジャンプアップできるかに注目しましょう。

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