儲けたクラブ、使ったクラブ…プレミアリーグTOP6の決算チェック!
WATCH儲けたクラブ、使ったクラブ…プレミアリーグTOP6の決算チェック!
世界的な監査法人デロイトが、毎年1月に発表する「フットボール・マネー・リーグ」の2018年版がリリースされました。
世界中のサッカークラブの収益やファンの数などのデータを収集・分析し、冒頭でTOP20のランキングを掲載しているのですが、2016-17シーズンは、半分の10クラブまでがプレミアリーグ勢です。全体の1位は、2年連続でマンチェスター・ユナイテッド。マンチェスター・シティがスペインの2強とバイエルンに次ぐ5位、アーセナルが6位。7位にパリ・サンジェルマンをはさんでチェルシーが8位、リヴァプールが9位。TOP6で最下位のトッテナムでも11位にランクインしており、レスター14位、ウェストハム17位、サウサンプトン18位、エヴァートンが20位です。
プレミアクラブ増加の理由は高騰する放映権料
1年前は、8クラブだったプレミアリーグ勢が増えているのは、テレビ放映権料が高騰して、全体の売上が伸びたからです。20位から14位に上がったレスターは、1年前の総収入が、1億7200万ユーロ(約239億円)だったのに対して、2017年度は2億7110万ユーロ(約377億円)に激増。彼らの売上のなかで、テレビ放映権料が占める割合は、80%を超えており、伸びた分は全額「奇跡の優勝によるテレビ放映権料UP分」です。
プレミアリーグ優勝&CL出場で377億円を稼いだレスター。彼らの3年前の売上は年間3700万ユーロ(約51億円)(PHOTO by Ardfern)
さて、ここからは、プレミアリーグのTOP6に絞って数字を見ていきましょう。総売上6億7630万ユーロ(約940億円)のマンチェスター・ユナイテッドは、前年からは微減。5億2770万ユーロ(約718億円)のマンチェスター・シティと4億8760万ユーロ(約678億円)のアーセナルは微増となっています。4億2800万ポンド(約595億円)のチェルシーは、前年10位でチャンピオンズリーグ出場権を逃したのが響いて5%ほどダウンとなり、アンフィールドの座席数を54000人まで増やしたリヴァプールは、4億2420万ユーロ(約590億円)、対前年5%アップです。2016-17シーズンは、プレミアリーグで3位にジャンプアップし、チェルシーからCL出場権を奪った格好となったトッテナムは、2億7970万ユーロ(約389億円)から3億5560万ユーロ(約494億円)と27%も収益を伸ばしています。彼らの増加分もまた、レスター同様にテレビ放映権料です。
マン・ユナイテッドの強みはコマーシャル収入
サッカークラブの3大収益源は、チケットやグッズなどのマッチデイ収入、テレビ放映権料、スポンサーからのコマーシャル収入です。これらの比率と金額を見ると、それぞれのクラブの強みと課題が明確になります。
まずは、コマーシャル収入を比較してみましょう。マンチェスター・ユナイテッドが、世界で最も売上が多いクラブの座をキープしているのは、コマーシャル収入が3億2520万ユーロ(約452億円)もあり、総収入の48%を占めているからです。マンチェスター・シティは2億3050万ユーロ(約320億円)で44%。1億6270万ユーロ(約226億円)のチェルシーと1億6160万ユーロ(約225億円)のリヴァプールは、ともに38%となっています。アーセナルは、1億3650万ユーロ(約190億円)で28%と後れを取っており、トッテナムは8390万ユーロ(約117億円)で24%と、マンチェスター・ユナイテッドの1/3以下です。
SNSにおけるファンの数では、マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーに次ぐアーセナルは、スポンサー候補企業とのリレーションシップを築くことで、まだまだ収益を伸ばせるはずです。
エミレーツの最高額のシーズンチケットは2000ポンド以上。800ポンド代のリヴァプールの倍以上!?(PHOTO by Ronnie Macdonald)
マッチデイ比率が高いのは高額チケットのアーセナル
スタジアムの規模に比例するマッチデイ収入は、1億2520万ユーロ(約174億円)のマンチェスター・ユナイテッドと1億1640万ユーロ(約161億円)のアーセナルが2トップです。オールド・トラフォードに7万5000人を集めるマンチェスター・ユナイテッドは、ユニフォームの売上枚数でもトップクラス。アーセナルのマッチデイ比率24%は、TOP6のなかでもぶっちぎりの1位。6万人収容のエミレーツと世界で最も高額といわれるチケット代で、ノースロンドンのライバル・トッテナムの倍額以上を稼ぎ出しています。
ここで苦戦しているのは、世界一のブランド価値を誇るクラブと同じ街で、サポーターを集めているマンチェスター・シティです。6040万ユーロ(約84億円)はわずか11%。55000人収容できるエティハド・スタジアムを、オールド・トラフォードに次ぐ61000人に拡張しようとしているクラブは、50億円〜60億円ほどの増収を見込んでいるものと思われます。
昨年9月に「スポーツダイレクト」社が行ったユニフォーム売上調査では、ポール・ポグバがルカクを押さえて第1位(PHOTO by )
CL出場・不出場でテレビ放映権料の差は70億円以上!
2016-17シーズンに、チャンピオンズリーグに出場できなかったチェルシーとリヴァプールのテレビ放映権料は、1億8000万ユーロ(約250億円)台。出場したマンチェスター・シティとアーセナルは、2億3000万ユーロ(約320億円)を超えています。この差は、大きいといえるでしょう。
強豪といわれるクラブが6つあり、多くの試合のスタンドが満席となるプレミアリーグで、より高い収益をめざすには、チャンピオンズリーグ出場権を獲得し続けることと、スタジアムの収容力を高めることは必須条件となります。
来季から新しいスタジアムで、戦うトッテナムと、スタンフォード・ブリッジのキャパシティUPに着手するチェルシーは、どこまで売上を伸ばすことができるでしょうか。収益の差≒選手への投資力の差。競争環境が厳しいプレミアリーグで、強いクラブで居続けるのは決して簡単なことではありません。