サイクリストであること、女性であること、そして母であること。

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スポーティ

自転車競技を知る人にとって、スペイン人がこのスポーツにかける情熱の強さはおなじみのところでしょう。ロードレースはもちろん、トラック競技でも世界トップ・レベル選手を数々生み出しています。その一方で、多くののスペイン人の女子自転車選手も、世界のトップ・レベルで戦っています。

今回の記事は、スペインのある女子元プロ自転車選手に起きた話です。

自転車トラック競技の名選手-Leire Olaberria

Leire Olaberria(レイレ・オラベリア)選手は、1977年生まれ。スペイン北部のバスク地方出身の自転車選手として、主にトラック競技で活躍しました。特にポイントレースでは世界トップクラスの実力者の一人で、彼女は2008年の北京オリンピックのポイントレースで銅メダルを、また世界選手権でも、金メダル(2010年)と銅メダル(2013年)を獲得しています。

そんな彼女が出産し、母親になったのは2016年12月のことでした。元気な男の子に恵まれた彼女は、人生初めての育児に奮闘しながら、同時に自転車レースへの復帰を目指して、出産直後からトレーニングを再開します。そのようなトレーニングの成果もあり、翌2017年にはレースに復帰し、その年にベルリンで開催されるヨーロッパ選手権に出場するための、スペイン代表の強化選手に選出されます。

しかし、彼女は母親としての一面もある自転車選手。加えて彼女の息子は、このころまだ1歳にもなっていませんでした。そのため、Leire選手はスペイン・マヨルカ島で開催された強化合宿に、自分の息子と息子をケアするためのベビーシッターを連れて行きたいと、スペイン自転車連盟に申し出ます。

そんな彼女の要請に対し、スペイン自転車連盟は「子供と子供のベビーシッターの飛行機代や滞在費など、子供にかかわる費用をすべてLeire選手自身が負担する」という条件で、彼女の要望を認めます。Leire選手側もこの条件を了承し、強化合宿はスタートしました。

しかし、Leire選手はこの合宿終了後に、スペイン代表選手としてベルリンでのヨーロッパ選手権に出場することは叶いませんでした。合宿後、スペイン自転車連盟は、Leire選手を「強化合宿の期間中、わがままで反抗的であった」として、代表選手団からはずす決断をしたためです。そして、その後、彼女がスペイン代表選手として国際レースに出走する機会はありませんでした。

こうして、スペイン代表として、国際レースを走る方法を失ったLeire選手は、その後彼女の地元にある自転車の女子プロチームのGipuzkoa Ogi Berri(ギプツオカ・オギ・ベリ)の一員という形で同チームから支援を受けて、スペイン国外のトラックレースに参加し続けました。

そのようにして競技を続けていたLeire選手でしたが、2018年1月にサイクリストからの引退を発表します。そして同年4月、スペイン・マヨルカ島での6日間のトラックレースで、現役最後のポイント・レースを終えました。そのレース終了後には、彼女の周りにはライバルのサイクリストたちが集まり、彼女のこれまでのキャリアを讃えました。それは、Leire選手のスポーツの面での輝かしい成績はもちろんのこと、40歳まで現役選手であり続けたその長いキャリアへの、若い選手からの賛辞でもありました。

現役引退後の主張


Leire Olaberria(レイレ・オラベリア)元選手と長男

Leire元選手は、2018年の現役引退後、自分が長男出産後に受けたスペイン自転車連盟の対応(合宿中の子供の育児費用の負担や、スペイン代表選手から不当な理由ではずされたこと)について、「このようなことは、自分が母親になったことへに対する、差別的な対応である」と非難の声明を出しました。

一方、スペイン自転車競技連盟側は、「合宿や海外遠征ごとに、子供の費用をLeire元選手が支払っていたら、経済的に苦しくなるであろうという配慮」と「代表選手としての実力がまだ伴っていないため」という2つの理由から、Leire元選手のスペイン代表入りを見送ったと、正式に発表しています。

しかし、出産後もGipuzkoa Ogi Berriの一員として、出産前と同じようにトラック競技に出場していたLeire元選手にとって、「代表選手としての実力がまだ伴っていないため」という理由は、疑問の残るものであるようです。

女性スポーツ選手の結婚・出産と競技を続ける難しさ

スポーツ選手に限らず、女性にとって、結婚・出産というのは人生のなかでも最大級のターニングポイントであるといってもよいでしょう。特に、女性のスポーツ選手の場合、「いつ子供をもうけるか」という判断は、男性のスポーツ選手以上に難しい問題です。

また、過去に結婚し子供を出産した女性スポーツ選手が、現役に復帰することはほとんどありませんでした。しかし、今は子供を持った後も選手であり続けたいと考える女性は、確実に増えています。そのような女性達には、例えば何らかの経済的なバックアップ(例えばベビーシッター費用などの選手負担の軽減)などは、競技を続けていくうえで、大きな助けになることでしょう。

しかし最も大切なことは、まず、スポーツに関わる一人一人が、選手の中に子供を育てながら競技を続けている人がいるということ、また、将来子供を持った後も競技を続けたいと考えている選手がいる、ということを理解しておくことではないでしょうか。加えて、子供を持った後の競技生活は、子供を持つ前とは異なるものであるいうことを知っておく必要があるでしょう。 

一般企業の世界でも、女性の働き方について、今いろいろと変化が現れています。スポーツの世界で同じ動きが見られるのも、当然の時代の流れなのと言えるのではないでしょうか。


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