スペイン・サッカースタジアムを巡るPART1-Ciudad de Fútbolを訪ねて-

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スペイン・サッカースタジアムを巡るPART1-Ciudad de Fútbolを訪ねて-

スポーティ

スペインにおいて、サッカーは国技ともいうべきスポーツです。この国へ旅行に来る人の中には、「リーガ・エスパニョーラの試合を生で見るのが楽しみ」という方も少なくありません。

リーガ・エスパニョールのTOPリーグには、現在20チームが所属しています。しかし、多くの人が観光に訪れるサッカー・スタジアムは、レアル・マドリッドやFCバルセロナの有名チームのものだけでしょう。つまり、日本人がなかなか行かないサッカー・スタジアムというのも数多く存在するのです。

そのような日本ではあまり知られていないスペインのサッカー・スタジアムを訪問してみようというのがこの企画です。しかし、今回訪問するのは、特定のチームのスタジアムではなく、マドリードにあるCiudad de Fútbol(シウダド・デ・フットボール)という場所です。

実はこの地は、スペイン・サッカー界にとって、とても重要な場所なのです。

TOP 写真 photo by Yukari TSUSHIMA

Ciudad de Fútbolとは


左下の茶色い建物が施設の入り口。「博物館に行きたい」と言えば、簡単に通過できます。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

マドリードの北にCiudad de Fútbolと呼ばれるスポーツ施設があります。ここはスペイン・サッカー協会の本部の所在地であると同時に、サッカーのスペイン代表が毎回の国際試合の前に、強化合宿を行う場所でもあるのです。

そのため、敷地内には2カ所のよく整備されたサッカーコートがあります。ちなみにこのコートは、地元の子供たちのサッカーチームの練習場でもあるのです。そのため、スペイン代表合宿がない週末には、子供たちの元気な歓声が響きます。


よく整備されたスタジアム。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

また、その横には、フットサルの練習場もあります。フットサルのスペイン代表もここで強化合宿をします。

この場所に一つの博物館があります。その名もMuseo de la Selección Española de Fútbol(ムゼオ・デ・ラ・セレクション・エスパニョーラ・デ・フットボール)。サッカーのスペイン代表の歴史を展示している博物館です。


博物館入口。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

スペイン・サッカー代表の歴史を知る

建物の中に入ると、まず目にするのがこの銅像。スペインを初のヨーロッパ・チャンピオンに導いたLuis Aragonés(ルイス・アラゴネス)氏です。


そして、博物館の入り口には、こんな写真が。スペインのサッカー史上、最強ゴールキーパーのと呼ばれるお二人の写真です。


写真左は、Ricardo Zamora(リカルド・サモーラ)、同右はIker Casillas(イケル・カシーリャス)。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

チケットを買って、博物館の中に入りましょう。

展示物を見て行くうちに、スペインで一番歴史のあるサッカーチームはレアル・マドリードでもFCバルセロナでもなく、アンダルシア地方のウエルバにあるチームであることに驚く人も多いことでしょう。

サッカーのスペイン代表が初めて組織されたのは、1920年のことでした。初出場だったにも関わらず、この年のオリンピックでスペイン代表は銀メダルに輝きます。ちなみに最初に、スペイン代表がワールドカップ本戦に出場したのは、それから14年後の1934年のイタリア大会でのことでした。


オリンピック初出場で銀メダル。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

博物館の2階に上がると、1920年から現在までのスペイン代表選手すべての顔写真があります。これを一人一人じっくり見て行くのも、サッカーファンには、楽しいかもしれません。


最近のスペイン代表の顔ぶれ。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

3つの優勝カップ


中央が南アフリカW杯のトロフィー。両端がヨーロッパ選手権の優勝カップ。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

この博物館の最大の目玉が、博物館の出口近くにあります。ワールドカップの優勝トロフィーと、2つのヨーロッパ選手権の優勝カップです。このコーナーでは、スペイン代表がこれら3つの優勝トロフィーを獲得したときの様子をVTRで振り返ることができます。

そして、最も興味深い展示物がこちらです。ワールドカップの決勝戦前のミーティングで、監督のVicente del Bosque (ビセンテ・デル・ボスケ)氏が使ったこの戦略図。スペイン代表選手一人一人が試合中にどのように動くのか、という指示が描かれています。


デル・ボスケ氏の作戦指示書。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

また、最初のヨーロッパ選手権優勝時に、ルイス・アラゴネス氏が描いた作戦指示図も展示されています。


こちらは、ルイス・アラゴネス氏のもの(Photo by Yukari TSUSHIMA)

2人の代表監督の違いを垣間見ることができる、貴重な資料なのではないでしょうか。

スペイン代表の歴史を尋ねて

南アフリカのワールドカップで優勝し、スペインに戻ってきた代表監督のデル・ボスケ氏が、マドリードでの凱旋パレードの様子のVTRを見ながら、次のような話をしていたことがあります。

沿道に駆け付けてくれたファンみんなが、スペイン代表のユニホームを着ているでしょう。レアル・マドリードでもなく、バルセロナでもなく、スペイン代表のユニホームを。それが、とてもうれしかったんですよ。

サッカーの強豪国のひとつであるにも関わらず、スペイン代表チームは長い間、スペイン人の強い関心を引くことはありませんでした。その流れを変えたのが2008年のヨーロッパ選手権制覇であり、スペイン代表の国内での人気を不動のものにしたのが2010年の南アフリカ・ワールドカップでの優勝だったのです。

そんな歴史の流れを実感することができる、サッカー・スペイン代表博物館。マドリード旅行の折にはぜひ、お立ち寄りください。今なら、ワールドカップの優勝トロフィーの写真もゆっくりと撮影することができます。