折れたバットを箸に再利用。日本のリサイクル活動が米国で話題に。

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折れたバットを箸に再利用。日本のリサイクル活動が米国で話題に。

スポーティ

メジャーリーグやプロ野球を観戦していると、バットが折れるシーンを頻繁に目にします。自身で硬式野球をしている人はわかると思いますが、木製バットは割と簡単に折れてしまうものです。

高いお金を出して買ったバットが、たった1球で折れてしまった、そんな泣くに泣けない経験をした人は多いでしょう。折れてしまったバットは、もはや使い物になりませんから、その多くはそのまま廃棄されます。

ところが最近、折れたバットを材料にして箸を製造し、さらにその収益を木製バットの原材料アオダモの植林活動に役立てるという日本のリサイクル活動が、米国の大手紙ニューヨーク・タイムズに詳しく紹介されました。

このユニークなリサイクル活動は、米国でも新鮮に映り、その後MLB公式サイトやヤフー・スポーツなどの大手メディアが続々とこの話題を取り上げました。

折れたバットは何処に行くのか

メジャーリーグでは、試合中に折れたバットが球団のオークションにかけられて、チャリティー団体へ寄付されることがたまにあります。人気選手のバットやワールドシリーズ、オールスターのような重要な試合で折れたバットには、高い値がつきます。ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が試合中に折ってしまったバットが約4000米ドル(約44万円)で落札されたこともありました。

もちろん、そんなことは例外中の例外です。多くの場合は折れたバットはそのまま廃棄されてしまいます。日本プロ野球でもかつては折れたバットは全て焼却廃棄されていたそうです。

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折れたバットが箸に生まれ変わる

折れたバットを原材料にして、箸の製造を行っているのは福井県に本社がある株式会社兵左衛門です。日本プロ野球や社会人野球などの試合や練習中に折れたバットを回収し、その材料を利用して「かっとばし!」のシリーズ名で箸を製造販売しています。折れたバットの回収と運搬には日本通運株式会社が全面協力しています。

およそ年間1万本のバットが回収され、1本のバットから5,6組の箸が出来ます。バットの太い部分は箸の材料として使われ、細いグリップ部分はフォークやスプーンのハンドルや靴ひもに、帽子部分は飲み物のカップに活用されて、余分に捨てられる部分はないということです。

貴重なアオダモの再生に

折れたバットを箸に生まれ変わらせるだけではなく、その収益金の一部はNPO法人「アオダモ資源育成の会」に寄付されて,木製バットの原材料となるアオダモの植林活動に使われています。

日本プロ野球12球団もこのリサイクル活動に協力しています。兵左衛門は同社が製造した箸に日本プロ野球球団のロゴを入れるライセンス料を支払い、日本プロ野球はそこから毎年3億5千万円をアオダモ資源育成の会に寄付しています。


アオダモの葉

北海道産のアオダモは反発力と弾力性、そして耐久性に優れ、木製バットの材料としては最も良質だとされています。かつては日本で製造される木製バットの殆どがアオダモを原材料としていましたが、計画的な植林がほとんど行われてこなかったため、現在アオダモは枯渇しつつあります。そのため、今では木製バットの多くが材料に輸入材のメープルやホワイトアッシュを使っています。

イチロー選手も松井選手も日本プロ野球時代はアオダモのバットを使用していましたが、アオダモの安定供給が困難な状況になってきたことから、他材料のバットに切り替えざるを得なくなりました。

ニューヨーク・タイムズの記事によれば、折れたバットのリサイクル活動を提唱したのは兵左衛門代表取締役会長の浦谷兵剛氏(73)です。元高校野球選手であった氏は日経新聞の記事でアオダモの危機を知り、このアイデアを思いついたということです。

世界に広がる可能性

アオダモの成長は遅く、植樹してからバットとして使える長さと太さになるには60~70年という長い年月がかかります。さらには、1本の木から僅か4~6本のバットしか作れません。自然再生とは誠に長く困難な取り組みです。

アオダモ資源育成の会ホームページに、木製バットは年間プロアマで数万本が折損すると記載があります。これは日本国内の話でしょうから、野球が行われている全ての国に話を広げれば、その数字がどれほどのものになるか想像もつきません。

リサイクルへの意識が世界的な広がりを見せています。「モッタイナイ」という言葉までもが世界共通語になりつつあります。日本発のユニークなこの活動は注目に値するのではないでしょうか。


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