もう一つの高校野球 軟式大会

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もう一つの高校野球 軟式大会

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今年で64回目を迎える全国高等学校軟式野球選手権大会。硬式の全国大会(甲子園)が終わった8月24日、兵庫県の明石球場をメイン球場(サブ会場として姫路球場も使用)として、熱戦が繰り広げられました。残暑が依然と厳しい中、試合は行われました。

優勝は、好投手擁する中京学院大中京

8月31日、悪天候で1日順延となった決勝戦は、明石城の坤櫓が見下ろす明石トーカロ球場で開催され、中京学院大中京(東海・岐阜代表)と崇徳(西中国・広島代表)が対戦しました。

このカードは、2014年の第59回大会で延長50回(サスペンデッド)となり、注目された試合と同カードとなりました。その試合で50イニングにもなる死闘の末に敗れた崇徳としては、何としても勝って、地元へ優勝旗を持ち帰りたいところ。

しかし、中京学院大中京のエース・水渉夢投手(3年)の前4安打、5‐2で敗れ初優勝を逃しました。中京学院大中京は、3年連続10回目の優勝を飾りました。

中京学院大中京の水投手は、準々決勝の鹿児島実業(南部九州・鹿児島代表)戦で、ノーヒットノーランを達成しました。打者28人に対し、四球が1つのみ、奪った三振は5つと堂々とした内容です。

水投手は173㎝、65㎏と決して大柄なタイプの投手ではありませんが、今大会の失点は、決勝の崇徳戦での2失点のみ。今回の中京学院大中京は投手力、そして守備力が勝っていたといえます。

軟式野球のボールが飛びにくいといわれます。確かに長打は出にくいものの、ボールはバウンドしやすく、この特性を活かし打者は叩きつけるバッティングをしてきます。そのため、大きく跳ねたボールが内野手の頭上を越えヒットになることも珍しくありません。

ボールの飛ばし方やバウンド処理一つをとっても、軟式特有の技術が必要になってきます。硬式のように長打はなかなか出ませんが、投手がいかに打者を打ち取るのか、野手が難しい打球をどう処理するのかが軟式野球の醍醐味かもしれません。

今大会、出場校の顔ぶれ

今大会も全国16地区の代表校によって熱戦が繰り広げられました。北海道、東京、大阪、兵庫がそれぞれ代表校を送り出していますが、その他は地方ごとの代表校になっています。

今大会、大阪代表・あべの翔学が初出場を果たしました。また、今年の出場校の中で全国大会への出場回数が多いのは、松商学園(北信越・長野)の29回、中京学院大中京の23回、新田(四国・愛媛)と能代(北東北・秋田)の19回です。

中京学院大中京や福岡大大濠(北部九州・福岡)、早稲田実業(東京)のように硬式の大会でも知られる出場校もあれば、能代や仙台商業(南東北・宮城)、高崎商業(北関東・群馬)、矢掛(西中国・岡山)のような公立勢も出場しています。

各出場校は、硬式の全国大会のような派手な応援はないものの、スタンドから控え部員や父兄、OBらを中心に熱い声援を送ります。

会場が明石トーカロ球場(サブ会場が姫路球場になるのは2016年から、それまでは高砂球場がサブ会場)になったのは、1981年の第26回大会からのことですが、開催地の明石市では軟式高校野球の認知度も高く、熱心なファンが連日観戦しています。

スタンドは無料で開放されており、気が向いた時にいつでも気軽に観戦できる点が軟式大会のいいところかもしれません。売店では記念グッズも販売され、大会パンフレットは選手名の他に過去の貴重なデータや記録などが収録されており、記録マニアにとっては楽しみの一つです。

部員数が減少傾向

日本高校野球連盟は硬式、軟式の部員数の統計を取っており、公式HPでも見ることができます。http://www.jhbf.or.jp/data/statistical/index_koushiki.html

1982年には硬式の加盟校が3,488校、部員数が117,246人でした。その後、加盟校、部員数ともに増加し4,200校余りと16万人超に達したのち、今年は3,957校、143,867人に減少しています。部員数は減少してきていますが、高校が統廃合された、もしくは単独で大会に出場できず連合チームで出場するといったことも近年は珍しくはありません。

硬式の数値が多いか少ないかは別として、軟式の方を見てみましょう。1983年に加盟校701、部員数16,327人だったものが今年には416校、8,214人に減少しています。加盟校は1984年に702校、部員数は1990年に2万人弱になったのをピークに以降は減少しています。特に部員数は1983年の半分にまで落ち込んでいます。

硬式の部員は、高校卒業後は大学や社会人、プロなどレベルの高いところでプレーすることも可能です。もちろん、ユニフォームを脱ぐ部員も少なくないでしょう。これに対して軟式の部員もまた、大学や企業の軟式チームでプレーする例も珍しくはありませんが、地域で草野球をする例はもっと多いかもしれません。

高校での軟式の部員数が減っている点は気になりますが、軟式野球は硬式とは異なり気軽にプレーできる、ハードルが低いという利点があります。野球人気の復権には軟式野球が鍵を握っているかもしれません。

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