現役世界チャンピオンの3連覇でシーズンが再びスタート。スペイン夏の女子ロードレース3連戦

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現役世界チャンピオンの3連覇でシーズンが再びスタート。スペイン夏の女子ロードレース3連戦

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新型コロナウイルスの感染拡大による、突然のシーズン中断から5カ月。しかし7月下旬には、スペインでロードレースシーズンか再開されました。最初にスペイン国内で開催されたプロのレースは、3つの国際レベルの女子のプロロードレース。エネイカット・RBHグローバル(Eneicat RBH Global)所属の萩原麻由子選手もスペインに駆け付けて参戦した、この夏のスペインの3レースの様子をレポートします。

TOP写真:サイン台に上がる前、手指の消毒をする萩原選手(エネイカット・RBHグローバル)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

新型コロナウイルス対策とレースの現場

レース前のインタビューもソーシャルディスタンスを保ちながら。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今回、シーズン再開最初のレースとなったのは、パンプローナで開催された「ナバラ・エリート・クラシックス(Mavarra Elite Clasics)」の2レースと「ドゥランゴ・ドゥランゴ・エマクメーン・サリア(Durango Durango Emakumeen Saria)」の合計3レースです。

今回これらのレースでは、すでにUCIが規定した新型コロナウイルス対策をスペインのプロレースの現場で実施する最初の機会となりました。

まず、出走チームはPCR検査を受け、その検査の陰性証明書をレース前日に大会本部に提出することが義務付けられています。しかし、特に今回のパンプローナの初日のレースでは、このPCR検査の陰性証明書を前日に提出できないチームが続出し、当初の予定より10チームほどが出走できない状況となりました。また、同じナバラのレースをワールドツアーチームの一角であるCCCリブ(CCC Liv)が突然前日に出走しないことを表明し、レース当日に現場に現れることもありませんでした。

選手たちは、スタート直前までマスクを着用していますし、サイン台に上る前に体温を測定し、手指の消毒をしなくてはいけません。また、サイン台ではかつてのように紙やボードに「出走サイン」することもありません。そして、なにより、観客はスタート地点やゴール地点に近づくことを禁止されています。

そして、チームカーやチームバスの駐車場の人の出入りも厳しく制限されており、基本的に観客がレース前後に選手に近づいてサインや写真をお願いすることもできなくなっています。

また、報道陣が選手に近づいて個別にインタビューすることも厳しく禁止されていました。

このように厳しい衛生管理は、選手やスタッフそして大会関係者の健康を確保するものです。しかし特に報道陣は選手にインタビューできないため、仕事に支障をきたしている様子も見受けられました。

今年2回目の開催となったナバラ・エリート・クラシックス

今年のナバラ・エリート・クラシックス2戦2勝のバン・ブルテン選手。写真は2日目のゴールにて。Photo by Yukari TSUSHIMA.

前述のような状況の中、開催を迎えた2日間の1DAYレースが続く「ナバラ・エリート・クラシックス」。今年は両日ともに気温が高く、風もある中でのスタートとなりました。

この日出走したのはワールドツアーチーム含む合計15チーム。前述のPCR検査の陰性証明書待ちのため、出走できないチームが続出しました。

初日のレースはパンプローナ市内をスタートし、北のレクンベリ(Lekunberi)という町を目指す118kmのレース。2カ所の1級山岳と2カ所の2級山岳が、コース上にそびえ立ちます。このコースに関して、「長いレース中断の後の初戦としては、けっこう厳しいコースだと思う」と話す選手が数人見られました。

優勝候補と目されたのは、現役の世界チャンピオンのアンネミエック・バン・ブルテン(Annemiek van Vulten)選手を擁するミチェルトン・スコット(Mitchelton Scott)です。

ミチェルトン・スコットのチームプレゼンテーション。Photo by Yukari TSUSHIMA.

午後3時のスタート直後からミチェルトン・スコットをはじめとするワールドツアーの数チームがレースをハイペースでコントロールし、逃げ集団の形成を許しません。それでもレース終盤に、アレ・BTCリュブリャナ(Alé BTC Ljubljana)のマビィ・ガルシア (Mavi Garcia) 選手が集団から飛び出し、最後の登りに独走で向かいます。

しかし、この登りが終わるころ、ガルシア選手の動きをマークしていたバン・ブルテン選手がアタック。ゴールまで約4kmを独走して、この日のレースを優勝しました。ちなみにこの日のレースの平均時速は33km/h。ハイペースの山岳ステージとなりました。

2日目はパンプローナ市内がスタート・ゴール地点となる123kmのコース。前日と比較すると、登りは控えめなため、スプリンター向きのステージになるかと予想されていました。

萩原選手所属のエネイカット・RBHグローバル。Photo by Yukari TSUSHIMA.

この日はPCR検査の必要書類を提出した24チームが出走しました。2日目のレースも、前日同様、逃げ集団が形成されず、大集団のままレースが進みます。しかし、レース中盤でトレック(Trek)のエリサ・ロンゴ(Elisa Longo)選手と前日の優勝者のバン・ブルテン選手が集団を抜け出すと、そのまま2人で最後の登りに向かいます。

そして最後の登りでバン・ブルテン選手がロンゴ選手を突き放すと、そのまま一人でパンプローナのゴールへと向かいます。結局彼女の独走はゴールまで約2okm 続き、バン・ブルテン選手のパンプローナ2連勝が確定しました。

絶好調の、バン・ブルテン選手の連覇で終わったナバラ・エリート・クラシックス。ワールドツアーチームの完璧なレースコントロールに、他のチームは対応するのが精いっぱいという感じに見受けられました。

歴史あるバスクの女子のレース、ドゥランゴ・ドゥランゴ・エマクメーン・サリア

ドゥランゴ・ドゥランゴ・エマクメーン・サリアも制し、3戦3勝のバン・ブルテン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

バン・ブルテン選手の連覇で終わったナバラ・エリート・クラシックスから2日後、今度はバスク地方のドゥランゴという町で、「ドゥランゴ・ドゥランゴ・エマクメーン・サリア」というレースが開催されました。

ドゥランゴは、バスク地方の2大都市のビルバオとサンセバスチャンのほぼ中間に位置する町です。この地理的条件からもわかるように、この日のレースの主役はバスクの登りです。標高差はわずか270mしかないものの、大きめの登りはコース中に7カ所、ほかにも細かいアップダウンが多数あるコース設定です。

この日はワールドツアーチーム5チームを筆頭に、合計22チームが出走。パンプローナのレースを棄権したCCCリブも姿を現しました。

午後3時にレースがスタート。ワールドツアーチームが強力にレースをコントロールした上に、この日の風の影響もあり、最初の1時間の時速は42.8km/hというハイペースでレースがスタートします。

このハイペースの集団からスタートして90km地点で最初に抜けだしたのが、ガルシア選手(アレ・BTCリュブリャナ)。するとこの動きに合わせて17人ほどの選手がガルシア選手と共に先頭集団を形成します。

そして最後の登りで、この先頭集団からアタックをかけたのが、またまたバン・ブルテン選手。結局この日も最後の8kmを独走し、ゴールに一番最初に飛び込みました。夏のスペイン3連戦を3連勝で飾ったバン・ブルテン選手。最高の形でのシーズン再開に満足している様子でした。

シーズン再開となったこの北スペインでの3レースは、新型コロナウイルス対策と各チームの事情と、レースの現場の状況それぞれを天秤にかけ、一番良い方法を模索する場になりました。しかし、こうした状況でも、安定して自分の実力を発揮するバン・ブルテン選手の強さが際立った3日間となりました。


スペイン ロードレース 自転車 萩原麻由子