怪我を予防しながら走力アップするための“マラソントレーニングの組み立て方”

怪我を予防しながら走力アップするための“マラソントレーニングの組み立て方” DO

怪我を予防しながら走力アップするための“マラソントレーニングの組み立て方”

スポーティ

マラソンシーズンがやってきました!
ここ約2年間は、目指していた大会の中止に悔しい思いをしたり、モチベーションが落ちてしまった方も少なからずいたはずです。久しぶりの大会を控え、ドキドキ、ワクワクしながらトレーニングに励んでいる方もいることでしょう。

目指す大会がある方も、現時点で予定はないけれど挑戦したいと思っている方も、ランナーにとって大きなテーマとなるのが“記録の向上(完走)”“怪我をしない”という二点です。

「速くなりたい」と強い思いを持ってトレーニングをするほど、知らず知らずに無理をしてオーバーワークになりやすく、怪我と隣り合わせになりますが、“記録の向上(完走)”“怪我をしない”という相反するような二つを適えるポイントには、共通している点が多くあります。

怪我をできる限り予防しながら、効率的に記録を縮めるために、トレーニングの組み立て方とポイントを紹介します!
*¹:怪我とは、”スポーツ障害”を指しています。

トレーニング計画を立てよう!

目標とする大会が決まったら、まずはトレーニング計画を立てましょう。”今”行うトレーニングに目的を持って走るのと、何も考えずに走るのとでは、後の走力に大きな差が生まれてきます。

また、計画を立て、段階を踏んでトレーニングを積み重ねることで、次の段階へ進む上で必要な部分が無理なく鍛えられ、怪我の予防にも繋がります。

■トレーニング計画の組み立て方

◆大会の日から逆算して、トレーニング目的を明確にするために下記のように“○○期”と分けていきます。
⊳土台作り期:運動強度を上げても怪我をしないための体づくりの時期。
【1ヶ月間~3ヶ月程度】
⊳走り込み期:フルマラソンやウルトラマラソンなど、長い距離にも対応できる体づくりの時期。
【1ヶ月間~3ヶ月程度】
⊳追い込み期:目標記録のペースで走れる力を付ける時期。
【1ヶ月~2ヶ月程度】
⊳調整期:本番でベストな力を出せるよう、走力を維持しながら疲労を抜き、体調を整える時期。
【半月~1ヶ月程度】
(ほかにも、“休養期”“リフレッシュ期”“維持期”など、ご自分の目的に合った“○○期”を作って構いません。)
※期間はあくまで目安となります。大会が短い期間で続く場合などは、既にできているものを省いたり、目的を満たせるスケジュール設定にしてください。

◆年間計画には下記のような内容を入れていきましょう。
⊳練習の目的(土台作り期、走り込み期、追い込み期、調整期、休養期など)及び、内容
⊳月間目標走行距離
⊳出場する大会

(参考:年間計画/筆者)
<2015年 トレーニング・レース計画> 勝負レース:埼玉国際女子マラソン(11月)

年間計画を立てたら、下記を参考に、今度は月毎の具体的なトレーニングメニューに落とし込んでいきましょう。
※仕事や家庭の都合など、事前に月間計画を立てるのが難しい場合は、年間計画のみでも構いません。
※月毎に実際のトレーニングを振り返り、進捗状況や体調によっては、年間計画を見直すことも大切です。

具体的な練習メニュー

“ジョグ”と“ポイント練習”の繰り返しが基本です。
年間計画で立てた時期毎の目的に合わせて以下を行いましょう。
1.走行距離に変化を付ける。
2.ポイント練習の頻度を変える。

※「ポイント練習」=負荷の高いトレーニングのこと。具体的にはペース走、ビルドアップ走、変化走、インターバル走、レペティション、ヒルトレーニング、タイムトライアルなどがこれに当たります。

ポイント練習の目安頻度

・土台作り期(後半):0~1回程度/週
・走り込み期:1~2回程度/週
・追い込み期:2~3回程度/週
・調整期:0~2回/週 ※この時期は体調を考慮して、回数にはこだわりません。
(休養期、リフレッシュ期などは、基本的にポイント練習を行う必要はありません。)

走力アップ&怪我をしないためのポイント

走力アップのために最も大切なのは、“継続したトレーニング”です。せっかく頑張って走った後に、走らない日が続いてしまうと、トレーニング効果は積み重ならず、また一からを繰り返すことになります。さらに、“質を高く”、“量を多く”こなすほど強くなります。

“継続したトレーニング”を前提に、“質”や“量”を増やしていく中で怪我をしないためのポイントを紹介します。

◆目標の大会までに積み重ねる走行距離の合計が同じ場合、“週末にまとめて長い距離を走る”よりも、“距離を分けて走る日数を増やす”方が走力向上に繋がり、怪我のリスクも低くなります。
◆走行距離は急に増やさずに、前の月+20%までを目安にしましょう。
  ※ただし、月間走行距離が増えるに連れ、+20%を心掛けていても怪我のリスクは高くなるので、疲労感や筋肉の張りなど、体調を考慮しながら調節していきましょう。
◆目標走行距離を設定すると、計画的なトレーニングを進める上で目安になり、モチベーションの向上にも繋がって良いですが、走行距離をこなすことが第一の目標にならないようにしましょう(オーバーワークになりやすいため)。
  ※疲れが溜まっているのに、目標走行距離を達成するために無理をしやすいので注意しましょう。
◆“ポイント練習”をしっかりこなすことを第一の目標にしましょう(そのためには疲れを取ることが必要)。疲れを取るためのメニューが”ジョグ”です。
◆疲れでスピードが上がらないような状態で、“ポイント練習”を行わないようにしましょう(オーバーワークのサイン)。

リカバリーのポイント

高い目標を持ってトレーニングしている人ほど、“休養も練習の一つ”と捉えましょう。トレーニングのダメージから体が回復しないうちに強度の高いトレーニングを続けてしまうと、疲労がどんどん蓄積することで体力が低下し、頑張って走っているのに記録は伸びない、もしくは落ちていく状態に陥ってしまいます。そんな方は「練習が足りていない。」「もっと頑張らなければ!」と誤った解釈をしてしまい、さらにオーバーワークになりがちですが、必要なのは“休養(リカバリー)”です。トレーニング前よりも高い状態に体が回復する“超回復”を繰り返すことで強くなっていけるので、“回復”せずに強くなることはできません。

疲労回復を早めるポイントを紹介します。
◆“ポイント練習”で、しっかり追い込んだ後は、“アイシング”で炎症を抑え、“ストレッチング”、“マッサージ”で血流を良くしましょう。
◆体を動かさずに、例えば横になって休むよりも、疲れない程度に体を動かす“積極的休養(アクティブレスト)”を行う方が疲労回復を早めることができます。
◆入浴は、熱いお湯よりも、ぬるめのお湯に浸かりましょう。お湯と水に交互に浸かる“温冷交代浴”を行えば、より効果的です。
  ※熱いお湯は、血管が収縮し、血圧や心拍数が上がり、リラックス状態とは逆に興奮状態になってしまい、筋肉の硬直も起こしてしまうため、疲労回復に向きません。
  ※温冷交代浴は、血管の拡張と収縮を繰り返すことで、ポンプ作用が活発になり、疲労物質の除去を促します。シャワーを使えば家でも簡単に行うことができます。
◆“栄養”と“睡眠”をしっかりとりましょう。
  ※栄養は、バランス良く摂ることが最も大切です。“追い込み期”には、特にタンパク質を積極的に摂ることで筋肉の回復を促します。また、消化吸収が早く、エネルギー源となる炭水化物はランナーにとって必要不可欠で、不足すると疲労感や体のだるさを感じます。

マラソンは、やってきたこと、逆にできなかったことも、記録や走りに現われてきます。記録の向上を目指す上で、質や量を求めることは必要ですが、知らず知らずのうちに無理を続けてしまうと、怪我だけでなく、心の疲労にも繋がっていきます。

心の回復には、怪我以上に時間を要する場合があります。強い思いを持っている人こそオーバーワークになりやすいので、ご自分の体と心の声に耳を傾けながら、“追い込むべきときにしっかり追い込み、追い込んだ後はしっかりと疲労を抜く!”これを大切にして積み重ねていくことが、怪我の予防と走力アップへの近道となります。

全てのランナーの皆さんが、怪我をできる限りせずに、健康的に走り続けることができ、“走ること”が人生を豊かにする一助となることを願っています。

トレーニング マラソン 練習方法