熱中症を起こさないための水分補給のポイントをスポーツ栄養学的に解説

熱中症を起こさないための水分補給のポイントをスポーツ栄養学的に解説
夏本番に入り、これからますます暑さが厳しくなっていきます。そんな時に気になるのが、水分補給ではないでしょうか。
「喉が乾いてからだとすでに脱水状態になっている」というのはその通りで、喉が乾く前に意識的に水分補給をしていかなければなりません。
水分補給が運動パフォーマンスとどういった繋がりがあるのか、どのように水分補給を行うといいのかを解説していきます。
脱水は運動パフォーマンスに影響する
喉が乾くと運動パフォーマンスが低下するというのはなんとなくイメージが湧くかもしれませんが、実際にこのことは実験でも証明されていることで、2%の水分が失われると運動パフォーマンスが低下すると言われています。
水分補給を行う人、行わない人とで持久走を走り、心拍数の変動を見た実験では、水分補給を行わない人の方が、心拍数が高くなったという結果も出ています。これは血液の水分が濃縮され、粘性が増したためと考えられます。
また、2%の水分が失われるとめまいがしたり頭がぼんやりしてきたり、吐き気を催すようになってきます。4%の水分が失われると頭痛がして手足が震えて痙攣を起こします。
このように、しっかりと水分補給をすることは、アスリートにとって欠かせないことです。
適切な水分の摂取量は?
それでは運動中にどれくらいの水分を摂取すればいいのでしょうか?
体格や運動量によって必要な水分遼は変わるので、一概に「〇〇リットル飲んだ方がいいです」ということは言えないのですが、運動中に適切な量の水分を摂取できていたかどうかを知ることができます。
適切な量の水分を摂取できていたかどうかを知る目安としては、運動前後の体重変化と、尿の色の2つがあります。
運動中は汗によって体内の水分が減っていきます。そのため、運動後には汗で流れていった水分量だけ体重が減っています。
運動前後で体重が減らなければしっかり水分を補給できていた証拠です。逆に運動後に体重が1kg減っていたら、あと1Lは水分を摂取しないといけない、と計算できます。
また、尿の色からもしっかり水分を摂取できていたかを判断することができます。練習後の尿の色がオレンジ色など濃い黄色だと濃縮されているため水分補給が足りなかったと判断できます。少し薄い黄色のような色だと、しっかり水分補給ができていたと判断できます。
運動前後で体重を測り、尿の色も見ることで、正しく水分補給ができたかどうか、どれくらいの量の水分を摂取しないといけないのかが分かります。
水分補給はまとめて一度にたくさん飲むよりも、15分に1度くらいこまめに摂取した方がよいです。
塩分も一緒に摂取
水分補給と同時に、塩分の補給も必ず行いましょう。
夏は「熱中症」がよく話題になりますが、熱中症には4つの種類があることをご存知ですか?熱中症は熱疲労、熱射病、熱痙攣、熱失神の4つに分類されています。このうち、熱痙攣は塩分の摂取が不足することによって起こる熱中症です。
私たちは、脳からの命令が筋肉に届くことで筋肉が収縮し、身体を動かしています。脳からの命令を届けているのが、ナトリウムイオン(塩分)です。
塩分は、汗と一緒に流れていってしまいます。汗がしょっぱいのは汗に塩分が含まれている証拠ですね。
塩分が流れていっているのに、水分だけを摂取していると、体内の塩分濃度はどんどん薄まっていきます。すると、脳からの命令が筋肉にうまく伝わらなくなり、その結果痙攣を起こしてしまいます。
そのための対策として、水分補給と一緒に塩分補給を行う必要があるのです。水と一緒に塩分を摂取する際は、塩分濃度が体内の塩分濃度と同じ0.9%になるように調整してあげるとよいです。つまり、水1Lに対して1gくらいの塩分を溶かしてあげるとよいです。
糖質補給も行えるとベスト
水分補給・塩分補給と一緒に糖質の補給もできると高いパフォーマンスを維持しやすくなります。
糖質は身体を動かすためのエネルギー源となります。運動中には定期的に糖質を摂取できると高い運動パフォーマンスを維持しやすいです。
糖質を摂取する際は、糖質の濃度が6〜8%になるように調整してあげるとよいです。つまり、水1Lに対して砂糖60gを溶かしてあげるとしっかりと力を出し切ることができます。
水分補給でパフォーマンスは変わる!
この記事では、水分補給がどのようにパフォーマンスに影響するのか、どのように水分補給をすれば高いパフォーマンスを発揮できるのかを紹介してきました。
水分の摂取量には個人差がありますが、運動前後の体重が減らないくらいの量の水分を摂取する必要があります。
また、水に0.9%の塩分、6〜8%の糖質を溶かして飲んであげると、熱中症予防にもなるし、エネルギー補給もできてより高いパフォーマンスを維持することができます。
水分補給1つでもパフォーマンスは大きく変わります。これらを意識して暑い夏を乗り切りましょう。