ラグビーやサッカーで必要なRepeated Sprint Abilityって何?
DOラグビーやサッカーで必要なRepeated Sprint Abilityって何?
2019年9月20日から日本でラグビーW杯が開催されています。ラグビーは、選手がフィールドをダイナミックに走り回り、タックルをしてボールを奪い合います。
ラグビーに必要な運動能力の一つに、Repeated Sprint Abilityが挙げられます。日本語に訳すと「反復性スプリント能力」です。
ラグビーでは、相手からボールを奪われないように相手陣地にダッシュして走り込んだり、相手のボールを奪うために相手に向かってダッシュしたりします。
このようにラグビーでは、何度もダッシュを繰り返すRepeated Sprint Abilityという能力が必要になります。
ラグビーの他にもサッカーやバスケ、テニスなど多くのスポーツでこの能力は必要となります。
スポーツで活躍するには、このRepeated Sprint Abilityを高める必要がありますが、Repeated Sprint Abilityはどのように評価し、高めていくにはどんなトレーニングを行えばいいのでしょうか。
Yo-Yo intermittent testで評価する
まずは、Repeated Sprint Abilityの測定や評価方法から紹介します。
Repeated Sprint Abilityを評価するには、実際に一定の距離を繰り返し走るテストを行います。多く用いられているプロトコルとしては、「Yo-Yo inteumittent endurance test」や「Yo-Yo intermittent recovery test」といったプロトコルがあります。これらは、それぞれ「ヨーヨー間欠性持久力テスト」、「ヨーヨー間欠性回復力テスト」と訳されます。
イメージとしては、いずれもシャトルランのダッシュバージョンというテストです。
「Yo-Yo inteumittent endurance test」は音が鳴るまでに20mの区間を1往復し、5秒の休憩を挟んでこれを繰り返すというテストです。
「Yo-Yo inteumittent recivery test」も「Yo-Yo inteumittent endurance test」ほぼ同じテストです。休憩が10秒に増えますが、走るスピードはこちらのテストの方が速くなります。
これらのテストは、反復できた回数を評価として用います。
特定の距離を反復してダッシュする
このテストの他に、特定の距離を反復してダッシュするというテストでも評価することができます。距離や休憩時間は競技によって異なってきます。
例えばラグビーやサッカーでは、1回にダッシュする時間が長く、ポジションによってはダッシュの回数も多くなります。一方バスケではダッシュの回数はかなり多いですが、1回にダッシュする距離はサッカーやラグビーほど多くはありません。こうした競技特性からテストの内容を考える必要があります。
例えばサッカーやラグビーでは30mのダッシュを10秒の休憩を挟みながら10回繰り返すというテストが考えられます。距離にもよりますが、30秒以上休憩を挟んでしまうとテストが簡単になりすぎてしまい、評価ができなくなってしまいます。
評価項目としては、最高タイムと平均タイム、疲労指数という3つが挙げられます。
最高タイムは10回のスプリントの中で最も速かったタイムのことで、平均タイムは10回のスプリントの平均タイムです。
疲労指数はRepeated Sprint Abilityを表す指標としてよく用いられます。これは、スピードをどれだけ維持できたかを表す数値で、速度の維持率を示します。この数値は、平均タイムを最高タイムの10倍(スプリントを繰り返した回数)で割って算出します。
この他にもトレッドミルを用いて徐々に速度を上げたり、自転車エルゴメーターで徐々に負荷を高くしてスプリントを繰り返すという方法も挙げられます。
重要なことは、定期的に同じ内容のテストを行うことです。毎回テストの内容が変わると前回と比較することができません。一度プロトコルを決めたら同じ内容で継続してテストする必要があります。
最大酸素摂取量やOBLAが関連する
Repeated Sprint Abilityのテストを行ったら、次はこれを高めるためのトレーニングを行う必要があります。テストを行うと、パフォーマンスを高めるためにはトップスピードを上げればいいのか、スプリントを繰り返す能力を上げればいいのかが分かってきます。ここでは主にスプリントを繰り返す能力を高めるトレーニングを紹介したいと思います。
ダッシュのように強度の高い運動を行う際は、主にクレアチンリン酸系という経路からエネルギーが作られます。この経路ではクレアチンリン酸をクレアチンに分解することでエネルギーを取り出します。爆発的にエネルギーを取り出すことができますが、その量は少ないです。
ダッシュの際はこの経路が働きエネルギーを取り出します。休憩中には分解されたクレアチンをクレアチンリン酸に戻して次のダッシュに備えています。
クレアチンリン酸の合成速度と最大酸素摂取量との間には強い相関があることが知られています。そのため、最大酸素摂取量を高めることでRepeated Sprint Abilityを高めることができます。
最大酸素摂取量は、3分ほど持続できるギリギリの速度で3分間走り、数分の休憩を挟んでこれを繰り返すインターバルトレーニングという方法で高めることができます。
またRepeated Sprint AbilityはvOBLA(血中乳酸濃度が4mmol/Lに達する走速度)とも関連することが知られています。乳酸が血中に蓄積し始める強度で走り続けるというトレーニングもvOBLAを上昇させるので、Repeated Sprint Abilityの向上に貢献します。
この他にもテストで行うプロトコルをトレーニングとして取り入れることでもRepeated Sprint Abilityを高めることができます。
自分が行っている競技の特性を考えてテストの内容を決定し、トレーニングに活かしてください。