とてもシンプル、だけどキツイ!米陸軍が採用する体力テストUS Army Physical Fitness Test
DOとてもシンプル、だけどキツイ!米陸軍が採用する体力テストUS Army Physical Fitness Test
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米国でもほとんどの地域でジムが閉鎖されてしまいました。徐々に回復しつつありますが、9月中旬現在でも未だに再開されていない地域がある状況です。
そんなさなか、主にフィットネス系のユーチューバーたちの間で脚光を浴びているのがUS Army Physical Fitness Test (APFT)なるものです。
米国陸軍が兵士たちの筋力、持久力、そして心肺能力を測定するために行っている体力テストなのですが、これにボディビルダーや元オリンピック陸上選手など、さまざまなアスリートが陸上競技トラックなどの屋外で挑んでいるのです。
軍隊用と聞くと何か物々しいイメージが湧いてきますが、このテストで行うのは腕立て伏せ、シットアップ、そしてランニングの3種類のエクササイズのみです。どれも単純で、そして器具が要りません。特別な技術だって必要ありません。平らな地面と体力と、そして根性があれば、誰にでもトライすることができるのです。
テストの内容
テストの内容は非常にシンプルです。下にある3つのイベントを順番に行います。
1) 腕立て伏せ:2分間で可能な限り多く行う。スコアは、回数
2) シットアップ:同じく2分間で可能な限り多く行う。スコアは、回数
3) 2マイル(3.2キロ)走:可能な限り速く走る。スコアは、タイム
イベントとイベントの間は、呼吸を整えるために、休憩を入れても構いません。2人一組でペアになり、シットアップのときは、1人がパートナーの足を押さえたりすることも許されています(つまり、その間は休憩できます)。
最初の2つのイベントの制限時間は2分間。最後の2マイル走の所要時間は、人にもよりますが、10~20分ぐらいでしょう。ウォームアップを入れても1時間以内にすべてを終わらせることができます。
性別と年代ごとにわかるスコア評価基準
このテストの素晴らしいことは、米国陸軍という巨大な組織に集積された膨大なデータ*¹から導き出された評価基準が公開されていることです。
しかも、個々のスコアは、性別と年代別に100点満点で評価されますので、自分の体力レベルを客観的に把握することができるのです。
仮にあなたが35歳の男性で、腕立て伏せのスコアが50回、シットアップのスコアも50回、2マイル走のタイムが14分ジャストだったとします。
その場合、あなたのスコアは腕立て伏せが74点、シットアップが69点、2マイル走のスコアは94点ということになります。
同じ回数、同じタイムでも、あなたが女性であったり、50歳であったりすると、スコアはまったく違ってきます。そしてこのスコア基準、下は17歳から上は56歳まで、幅広い年齢層に対応されててるのです(それより若い、あるいは高齢のデータは陸軍兵士としては存在しないものと思われます)。
ちなみに、個々のイベントで最低でも60点を取らないと兵士としては失格、すべてのイベントで90点以上を取ると優秀であると表彰の対象になるそうです。
*¹:US Army Basic. “APFT Standards”
各動作のルール
それでは実際にこのテストを試してみようと思われる方のために、米陸軍ホームページで定められた各動作のルールを要約します。
■腕立て伏せ:胸、肩、腕の筋持久力を測る
• 用意の姿勢では両手を地面に着ける。
• 両足は揃えるか、最大12インチ(約30センチ)まで離すことができる。
• 横から見て、肩から足先までを真っ直ぐに保つ。
• 下りる動作のときは肘のみを曲げ、上腕部が最低でも地面と平行になるまで上体を下げる。
• 上る動作のときは腕が完全に伸びるまで上体を上げ、用意の姿勢に戻る。
• 動作のどの段階においても、体軸を真っ直ぐに保つ。
■シットアップ:腹部と股関節の筋持久力を測る
• 用意の姿勢では両膝を45度ぐらいの角度に曲げ、両手を頭の後ろに組み、背中を地面につける。
• 両足は揃えるか、最大12インチ(約30センチ)まで離すことができる。
• パートナーが足首を押さえることができる。
• 踵は常に地面に着いていなくてはいけない。
• 上がる動作のときは、体を直角まで起こす。
• 下る動作のときは、肩が地面に着くまで、体を下げる。
• 動作のどの段階においても、膝の角度は変えず、両手は常に頭の後ろで組む。
■2マイル走:心肺能力と脚力を測る
• 誰の助けも借りてはいけない。
• 歩くことはルール違反ではないが、そうせずに走り続けるよう「強く推奨する」。
53歳クロスフィッターが試してみるとどうなる
私には軍隊経験はありませんし、これからもないでしょう。しかし、私が専門としているクロスフィットは軍隊風のトレーニングと親和性が非常に高いエクササイズを多くすることで知られています。
特に「ヒーローワークアウト」と呼ばれる一連のプログラムは、殉職した軍人、警察官や消防士らの名前が冠され、理不尽とも言えるほどの高ボリュームのエクササイズをこなします。
中でも、もっとも有名なものが、2005年にアフガニスタンで戦死した米国海軍中尉マイケル・マーフィー氏を記念したワークアウト『マーフ』です。
その内容は、1マイル(1600m)走 → 懸垂を100回、腕立て伏せを200回、自重スクワットを300回 → 最後にまた1マイル走 というクレイジーなものです。
しかも『マーフ』の正式ルールでは、これらすべてで重量ベスト(男性が約9kg、女性は約6kg)を着用したままで行います。こうした経験を積んだクロスフィッターから見れば、このUS Army Physical Fitness Test (APFT)は特に過酷であるとも過激であるとも思えません。だから割と軽い気持ちでやってみました。
結果は、腕立て伏せ83回(100点*)、シットアップ64回(98点*)、2マイル走12分56秒(100点*)でした。
*()内は52-56歳男性のスコア
残念ながらフルマークの満点は逃しましたが、私が仮に今米国陸軍に入隊すると、少なくともフィットネス能力と根性だけは最優秀として評価される、ということです。実はこれが言いたかったのです(笑)。52-56歳のカテゴリーだったら、の話ですけど。
興味のある方は、是非試してみてください。スコアの評価基準は下のサイトで確認できます。
INFORMATION
テスト公式情報サイト
■US Army Basic. “APFT Standards”
https://usarmybasic.com/army-physical-fitness/apft-standards