高校野球地区大会リポート 滋賀・奈良大会編

高校野球地区大会リポート 滋賀・奈良大会編
第107回全国高等学校野球選手権大会は8月5日から22日間、甲子園球場で開催されます。全国で地区大会が行われ熱戦が繰り広げられてきましたが、出場校が出揃いました。今回は全国の地区大会のうち、滋賀大会と奈良大会を紹介します。
滋賀大会
>>滋賀県高等学校野球連盟
>>組み合わせ
優勝 綾羽 初出場(春夏通じて初)
決勝では滋賀学園と綾羽が対戦。昨年夏と同じ組み合わせとなりました。滋賀学園は3年連続の決勝進出です。綾羽はエースナンバーを付けた藤田陸空投手(3年)が、滋賀学園も同じくエースの長﨑蓮汰投手(3年)が先発です。序盤から得点が入り、点の取り合いになるかと思われましたが、6対3で綾羽が逃げ切り、初優勝を果たしました。最後の打者をセンターフライに打ち取り優勝が決まった瞬間、応援席がある三塁側スタンドから大きな歓声が起こりました。昨年は準優勝に終わった夏でしたが、今年は見事に滋賀学園に勝利し「甲子園への切符」を手にしました。
綾羽は計6人の投手をつぎ込み、藤田投手が7回途中までを2失点に抑え、優勝へ向けてのいい試合展開を作る原動力になったといえます。
綾羽は準々決勝で伊香と対戦。結果的に6対3で勝ちましたが、前半は追いつかれるなどし、米田良生有投手(2年)、藤田投手、安井悠人投手(3年)による継投で接戦をものにするなどしぶとい試合を見せました。
準決勝では甲子園常連校の近江と対戦、リードされた9回に4点を奪い8対6で近江を下し決勝に進んでいます。綾羽の勝負強さが現れ、勢いに乗った試合だったといえるでしょう。
滋賀学園や近江といった強豪校がいる滋賀大会を制した綾羽は総合力で抜きんでており、優勝に相応しいチームだといえます。
公立校も健闘
今大会では、シード校4校のうち彦根総合が3回戦で敗れましたが、あとの3校(綾羽、滋賀学園、近江)はベスト4入りを果たしました。今春のセンバツに滋賀県からは滋賀学園と滋賀短大付属の2校が出場しましたが、滋賀短大附属は3回戦で伊香に4対3で敗れるという波乱がありました。
今大会では、八日市がベスト4に、八幡商、伊香がベスト8に進出するなど公立校も健闘しています。八日市は準決勝で滋賀学園と対戦し敗れたものの3対1の僅差で試合を繰り広げています。
また、滋賀県勢で甲子園を経験していない高校に立命館守山があります。2021年の103回大会、2022年の104回大会は決勝に進むも近江の前に甲子園出場を阻まれています。今大会はノーシードで挑み勝ち進みましたが、準々決勝で近江に敗退しています。前半はリードしていた立命館守山ですが、後半に連打を許し6対3と逆転されました。立命館守山のエース、中島海投手(3年)は制球も良く変化球を使って近江打線を打ち取っていましたが、準決勝進出に今一歩及びませんでした。
今春センバツ出場の滋賀短大附属は近年実力をつけてきているものの、夏の甲子園出場は経験していません。今大会、綾羽が甲子園初出場を果たしたことで、これらの高校に来年以降続いてもらいたいところ。そして、綾羽には滋賀県代表として一つでも多く勝ち上がってもらいたいところです。
奈良大会
>>奈良県高等学校野球連盟
>>組み合わせ
優勝 天理 3年ぶり30回目
決勝は天理と智辯学園の対戦。天理が勝てば3年ぶり、智辯が勝てば3年連続という甲子園常連校同士の試合となり、佐藤薬品スタジアムは試合開始前の早い時間から多くの高校野球ファンが詰めかけました。夏休みに入ったこともあって、子供たちの姿も多く見られました。
天理は松村晃大投手(3年)、智辯学園は杉本真滉投手(2年)とエースナンバーを付ける両投手の先発で始まりました。初回に智辯学園が1点を先制すると2回に天理の杉本投手が走者2人を置いてレフトスタンドへ大きな本塁打を放ち逆転します。その後、天理に得点を許さない智辯学園は必死に反撃を試みチャンスを掴むものの、失策絡みでの1点を奪うのみに終わりました。
最後の打者をセンターフライに打ち取り3対2で天理が優勝を果たしました。決勝戦に相応しい試合に球場全体が湧きました。試合終了後、ベンチ前で悔しそうにする智辯学園の選手の姿が見られましたが、杉本投手はまだ2年生。来年、リベンジし甲子園の土を踏んでもらいたいものですね。
今大会ベスト4入りした1つ、奈良大附はシード校です。準決勝で天理に6対4で敗れましたが、チーム力があり今大会は接戦をものにしてきました。初戦の生駒との試合では5対4で逃げ切り、3回戦の奈良高専との試合はコールド勝ち、準々決勝の畝傍との試合も7対6で下しています。破壊力は少ないものの「野球通」好みの面白い試合展開をしてくる印象がありました。近年は「奈良」というと天理、智辯学園の両校がライバルとして争うイメージがありますが、ここに加わるとすれば奈良大附が最も近いのかもしれません。
公立対決にも注目
高校野球の楽しみ方として、強豪校の試合だけでなく公立校同士の試合も注目です。
そのうちの1試合が2回戦で対戦した奈良対五條です。ともに県立高です。奈良は今大会、シードでの出場。序盤から点が入り奈良がリードしても五條がすかさず得点し追いつこうとし、どちらに軍配が上がるのか全く予想がつきません。最終的に8対6と奈良が逃げ切りましたが、五條は9回に走者を出し必死に追いつこうとする試合展開に「野球って面白いな」と感じた瞬間でした。この試合で勝利した奈良は3回戦で16対0、智辯学園にコールド負けを喫しています。
また、筆者は桜井と青翔・奈良南・十津川による連合Bチームの試合を観る機会に恵まれました。
試合結果だけを見ると10対0と桜井がコールド勝ちしますが、連合Bチームは3校で選手はわずか11人。全体練習の時間は限られるのではないかと思われますが、必死にプレーする選手らの姿を見ることができただけでも価値があります。
奈良ではもう一つ高円芸術・国際・二階堂・山辺による連合Aチームが計17人の選手で出場しています。滋賀大会では石部と信楽、もう一つ、安曇川・湖南農・越知・長浜農による2つの連合チームが出場しています。近年、部員数減少で各地の大会でも連合チームを組んで出場する事例が増えています。少子化など様々な要因があるとはいえ、必死にプレーする球児たちの姿も印象に残った大会でした。