『サッカー選手が怪腕をならす。常識を覆すロングスローの名手は誰だ?』
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「サッカーは、GK(ゴールキーパー)以外手を使ってはならない」誰もが知っているルールですが、その常識を覆す選手達がいます。彼らはスローイン(ボールがサイドラインを超えた場合、プレー再開のためにピッチに両手を使ってボールを投げること)を駆使して、衝撃を与えてきました。高校サッカーでは、青森山田高校の原山海里(現・東京学芸大学)選手や郷家友太選手などがロングスロー(通常のスローインより遠くへ投げること)で試合を湧かせました。プロサッカーだと、中々ロングスローを目にすることがありません。しかし、ロングスローの名手が一度ボールを投げれば、ピッチ全体に衝撃が走ります。今回は、サッカーの常識を吹飛ばすスローインの達人達をフォーカスします。
元祖、人間発射台。ロリー・デラップ<引退>
世界的に有名な人間発射台。彼が投げるロングスローは約40mの飛距離を有し、矢のように鋭く飛んでいきます。足下のプレーは平凡ですが、彼のスローはピッチの横幅が小さいブリタニアスタジアム(ストーク・シティのホームスタジアム)で猛威を振いました。槍投げの学生チャンピオンに輝いた異色の経歴を持ち合わせており、彼の強烈なスローインに名将アーセン・ヴェンゲルが泣き言をこぼしたこともあります。
デラップの後継者。ライアン・ショットン
photo by Ronnie Macdonald
デラップと同じくストーク・シティで怪腕をならした選手。テレビ朝日の番組「マツコ&有吉の怒り新党」でデラップが特集された際は、デラップの後継者と紹介されました。彼の投げるスローはデラップほどの正確性と低弾道で飛びませんが、デラップのスローを上回る飛距離と速度を誇っています。現在はバーミンガムシティに所属、時折強烈なロングスローが炸裂しています。
長居で喝采を受けた歌舞伎者。ステインソール・ソルステインソン
photo by Jarvin Jarle Vines
2012年2月24日に開催されたキリンチャレンジカップ・アイスランド戦でフリップスロー(前方転身の勢いを利用して投げるスローイン)で会場を湧かせました。アナウンサーの田辺研一郎氏(ジェフ市原ユース出身)がハンドスプリングスローと機転を利かせて実況したことで、当時のTwitter検索ワードでハンドスプリングスローが上位に入りました。彼はスローインのみならず足下にも秀でており、ノルウェー1部のアシストランキング上位に名を連ねた経歴を持っています。
アイスランドの奇跡を支えた立役者。アーロン・グンナルソン
photo by Jon Candy
欧州選手権2016ラウンド16で奇跡が起きました。アイスランド対イングランド戦にて、圧倒的な下馬評を覆してアイスランドが2-1で勝利。この時、アイスランドの同点ゴールを演出したのがアーロン・グンナルソンです。彼のロングスローが起点になって、貴重な得点が生まれました。デラップと同じく異種競技の経歴を持ち、ハンドボール選手だった過去があります。アイスランド代表の主将であり、高いカリスマ性から精神的な支柱として活躍しています。
Jリーグ屈指の達人。藤田直之
ヴィッセル神戸に所属する藤田直之選手は、日本屈指の人間砲台です。彼のロングスローは高校時代から鋭さがあり、プロになってからも鋭い軌道を描いて得点機会を演出。下半身に怪我を負った時はメディシンボール(リハビリや体幹のトレーニングで用いられるボール)を用いて上半身を鍛え上げ、強力なロングスローに磨きがかかりました。さらに正確なプレースキックにも定評があるため、真の意味での人間発射台として神戸と鳥栖で重宝されました。
伝説の男はフリーキックだけじゃない。ロベルト・カルロス
photo by Мельников Александр
彼は凄まじいフリーキックの印象が強いですが、ロングスローの名手としても著名です。彼の有名なロングスローはUEFA CL2001-2002決勝で、ロングスローからラウールの先制弾をアシスト。その後ジダンの伝説的なボレーシュートがあったため、先制点は印象に薄いシーンかもしれません。しかし、見事なロングスローからの得点は、筆者が見てきたスローインの中で一番美しいプレーだったと鑑みています。
サッカー競技規則11条には、スローインからのボールを受けた場合オフサイドにならないと規定されています。このルールによって、彼らのロングスローは強烈な武器になります。素晴らしいスローインが増えることによって、サッカーの戦術の幅がより広がると言えるでしょう。