マラソンシーズンに向けて夏のオフシーズンをいかに過ごすか

マラソンシーズンに向けて夏のオフシーズンをいかに過ごすか DO

マラソンシーズンに向けて夏のオフシーズンをいかに過ごすか

スポーティ

日本では、市民マラソンの多くが秋から冬の季節にかけて行われます。有名なところでは、東京マラソンは2月、大阪マラソンは11月、那覇マラソンは12月、そして日本人が多く走ることで知られるホノルルマラソンも12月です。

8月に行われる北海道マラソンを走る人は別として、多くの市民ランナーにとって夏の間はオフシーズンになるわけですが、その期間をどのように過ごすかは、来年のレースに向けての体調づくりに大きくかかわってきます。どのようなトレーニングをするべきなのか、またはするべきでないのか、ストレングス・コンディショニングで広く使われるピリオダイゼーション(Periodization)の考え方を市民マラソンにあてはめて紹介します。

1年を4つのシーズンに分ける

ピリオダイゼーションとは、長期的な計画を基に期間ごとのトレーニングを目的に応じて変えることを言います。何年も先のキャリアを念頭に入れて、いつまでも向上を続けることを目標としたピリオダイゼーションもありますが、ここでは次の大会や競技会で、良い成績を挙げることを目的とした1年単位のピリオダイゼーションを指します。

前述しましたように、市民マラソンランナーのインシーズンを11~2月の主要レース開催期間とします。自分が走り終えたレース、あるいは自分が目標とする次のレースから逆算して、1年を4つのシーズンに分けます。

1) オフシーズン
  基礎的な走力、体力を向上させることが目的の鍛錬期間です。
2) プレシーズン
  レースに向けての本格的な準備期間です。最初に走るレースの3か月前から始めます。
3) インシーズン
  実際にレースを走る期間です。複数のレースを走る場合、レース間のトレーニングの
  主な目的は調整になります。
4) ポストシーズン
  最後にレースを走り終えてからの休息期間です。故障があれば治療に専念します。

市民ランナーこそピリオダイゼーションを

オフシーズンは全てのランナーにとって、最も長く、最も重要な期間です。長距離を走るために必要な筋力と持久力を、この時期に出来るだけ上げておき、次のプレシーズンから、始まる本格的なランニング中心のトレーニングに備えます。

レースを1年に何本走るかによって、インシーズンの長さは人によって変わってきます。それに合わせて、オフシーズンの長さも変わってくるのですが、通常は6か月か、それ以上の長い期間に渡ります。やみくもにトレーニングをするのではなく、長期的な展望に基づいた計画が必要になります。

市民ランナーに、そんな本格的な計画は必要ないと考えがちですが、むしろ逆です。あなたがもし、大学の陸上部や事業団で走るランナーだったら、コーチや監督がトレーニング計画を立ててくれますが、市民ランナーは全て自分で考えなくてはいけないわけですから。それに専門ランナーと違って、市民ランナーには、トレーニングに費やす時間が無制限にあるわけではありません。限られた時間を出来るだけ有効に使う意味でも、その時期に最も適したトレーニングを選択する必要があるのです。

暑い日本の夏にあったオフシーズンの過ごし方を考える

さて、日本の場合、多くの市民ランナーにとっては、オフシーズンは梅雨の時期や高温多湿の夏と、かなりの部分で重なることになります。そのような時期に、長距離長時間のランニングをするのは体への負担が大きすぎます。オフシーズンの目的は、走るための基礎的な筋力や持久力を作ることにあり、走ることそのものではありません。

特にオフシーズンの前半2、3か月は、走るだけでは得ることが難しい筋持久力をつけることに集中する方が良いでしょう。走力に直接関係する下半身を鍛えるには、スクワットやデッドリフトなどの筋力トレーニングが有効です。

負荷や回数などは、人によって異なりますが、基本的には長距離ランナーには10~20回ほど挙げられる重量で、高回数のメニュー(例:20回3セット)が適しています。筋力がさほどない人は自重スクワットから始めましょう。

長時間走っても、フォームと姿勢を維持するために、体幹の筋肉もまた重要です。体幹トレーニングと言えば、プランクや腹筋起こしなどの自重トレーニングがよく行われていて、それらは有効なトレーニングなのですが、長い時間や、回数が多い事が難点です。

一方で、前述のスクワットやデッドリフトを行えば、下半身と同時に体幹も鍛えられます。ですから、もし時間がなくてどちらかを選ばなくてはいけない場合は、腹筋起こし100回よりスクワット10回です。勿論、時間があれば両方やる方が良いのは言うまでもありません。

ある程度の基礎体力がついたら、筋力トレーニングも、クリーンやスナッチなどの重量挙げの種目に移っていくと、さらに全身のパワーを高める効果があります。しかし、これらはフォームを習得するまでに少し時間がかかりますし、専門家の指導を受けることが望ましいです。

オフシーズンも後半に入り、プレシーズンが近づいてくると、それまで培ってきた基礎体力を、徐々にスポーツ特有の動作に移していきます。市民ランナーにとっては、スポーツ特有の動作とは、つまり長距離を走ることです。但し、本格的に走り始めるのはまだ早いです。目標とするレースまではまだ4~5か月もあります。時期的にも夏真っ盛り。戸外で走るには最も適していない季節でもあります。プールが近くにあれば水泳、ジムが近くにあれば固定自転車やトレッドミルを使って、筋持久力と心配能力を上げていきましょう。

もし時間がたっぷりあれば、登山はもっともおススメのトレーニングです。名伯楽小出義雄氏は著書「30キロ過ぎて一番速く走るマラソン」の中で、シドニーオリンピックのマラソン金メダリスト高橋尚子さんは、本格的に走り始める前に1か月ほど山歩きをしたと語っています。

1か月山歩きが出来る市民ランナーはめったにいないでしょうが、登山は素晴らしいオフシーズントレーニングの1例と言えるでしょう。

創意工夫して飽きのこないトレーニング

オフシーズンは、時期的に色々なことを試行錯誤する余裕があります。新しいトレーニングを試して、自分に向かないと思ったら、別の方法を考えてもよいのです。そもそも、5、6か月間もの長期間に渡って同じトレーニングを続けることは、効果の面でもマイナスですし、精神的に飽きてしまうことは避けられません。

そんなことはない、私は走るのが好きだから1年中暑くても寒くても走っていられるし、ケガもしないぞ、と言う方も中にはいるかもしれませんが、そのような特別な人は、とっくに市民ランナーとは言えないレベルに達しているのではないでしょうか。

市民マラソンは大人のスポーツです。マラソンは好きだけど、毎日走るのを1年中続けるのはきついなあと感じる普通のランナーこそ、より長く、そしてより楽しくマラソンを続けるために、自己マネージメント能力が大切になるのです。


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