ブエルタ・ア・エスパ―ニャ2018レースレポート ゲッチョ編

ブエルタ・ア・エスパ―ニャ2018レースレポート  ゲッチョ編 WATCH

ブエルタ・ア・エスパ―ニャ2018レースレポート ゲッチョ編

スポーティ

2018年のVuelta a España (ブエルタ・ア・エスパーニャ) 第17ステージは、バスク地方の港町Gexto(ゲッチョ)からスタートしました。この街は、毎年7月下旬にCircuito de Gexto(シルクイート・デ・ゲッチョ)というレースが開催される、バスク地方の中でも特に自転車レースの盛んな場所です。

この街でのスタート地点の様子をレポートします。トップ写真は、バスク人選手のMarkel Irizar (マルケル・イリザール/TREK – SEGAFREDO)選手が地元のファンと、2ショット撮影中のもの。
メイン写真 Photo by Yukari TSUSHIMA

バスクの選手、そしてバスクのチーム

熱心な自転車ファンが多い土地として、世界的に知られるバスク地方。同時に、数多くの自転車選手を輩出している地域でもあります。そうした地域が、ブエルタ・ア・エスパ―ニャのスタート地点になるということは、近隣の自転車ファンが一堂に会することを意味するのです。

この日、一番最初に出走前のサイン台に姿を見せたのは、Euscadi Basque Country-Murias (エウスカディ・バスク・カントリー・ムーリアス)の選手たち。チーム名が示す通り、このバスク地方が彼らの本拠地です。観客からの大声援の中、選手たちはステージに上がります。

(Photo by Yukari TSUSHIMA)

今年のブエルタの第13ステージを勝ったこの選手への客席からの声援は、とても暖かなものでした。

Oscar Rodríguez (オスカー・ロドリゲス))選手。2ショットにも気軽に応じる、気さくな選手。 (Photo by Yukari TSUSHIMA)

また、今回のブエルタに出走しているバスク出身の選手にとっては、この日のステージは「里帰り」のようなものです。特に、地元ゲッチョ出身のJonathan Castroviejo(ジョナサン・カストロビエホ/TEAM SKY)選手は、友人・知人の声援を受けながら、笑顔でサイン台にやってきました。


カストロビエホ選手(写真左) (Photo by Yukari TSUSHIMA)

一方、こちらは今年7月のシルクイート・デ・ゲッチョで優勝したAlex Aranburu(アレックス・アランブル/ Caja Rural Seguros RGA)選手。彼もバスク地方の出身のため、インタビューに応える表情にもちょっと余裕が感じられます。


アランブル選手にインタビュー中。右の女性はバスク語対応の司会者(Photo by Yukari TSUSHIMA)

なお、バスク地方は独自の言語を持つ地域です。そのため、サイン台では、バスク語対応の司会者とカスティリャ―ノ(いわゆるスペイン語)対応の司会者の2人が、観客を盛り上げます。

レース、スタート。

サイン台が閉じられる直前には、たくさんの選手が姿を現します。約4時間後、Balcón de Bizkaia(バルコン・デ・ビズカイア)のゴール地点に一番最初に飛び込んできたのは、この選手でした。


Michael Woods(マイケル・ウッズ/TEAM EF EDUCATION FIRST – DRAPAC P/B CANNONDALE) 選手。この日ステージ優勝者。(Photo by Yukari TSUSHIMA)

ブエルタは、もはや終盤戦。第17ステージにまでなると、選手たちの表情にも疲労の色が濃く現れ始めます。レース前には足の痛みに顔をしかめながら、サイン台の階段を登るサイクリストもいるほどです。

そんな中、スタート前にストレッチで体をほぐしているのはBrent Bookwalter(ブレント・ブックウォーター/BMC RACING TEAM)選手。

レース前のストレッチ(Photo by Yukari TSUSHIMA)

他人と話すことは、やはり効果的なストレス解消法の一つなのかもしれません。このTeam Sunweb(チーム・サンウェブ)の2人は、ずいぶん楽しそうに長い時間おしゃべりしていました。

上機嫌でおしゃべり中 (Photo by Yukari TSUSHIMA)

ブエルタのようなステージレースでは、毎日スタート前に必ず、テープカット・セレモニーがあります。この日のセレモニーでは、バスクの民族衣装を着た若い男性が、見事な自転車の曲乗りを披露しました。

こうしてゲッチョをスタートした選手たちは、その後ビルバオの中心街を通過します。逃げる先頭集団はいたものの、主要な優勝候補たちは大集団の中でレースを進めます。


ビルバオ市内を走る大集団(Photo by Yukari TSUSHIMA)

レース結果は、前述のとおり、この日のステージ優勝はウッズ選手、総合ジャージは変わらずSimon Yetes(サイモン・イェッテス/MITCHELTON – SCOTT)選手が守りました。

バスクの自転車ファン

このステージのもう一方の主役は、実はバスク地方の自転車ファンたちでした。最大の難所であるバルコン・デ・ビズカイアの登りには、大勢のファンが現地に駆け付け、選手たちを熱狂的に応戦しました。

この時これほど大勢の人がいたにもかかわらず、サイクリストを危険にさらすような行動をした自転車ファンはほとんどいませんでした。このことがブエルタに参加した選手たちを驚かせ、翌日以降の話題になったのです。

ブエルタ・ア・エスパ―ニャやツール・ド・フランス、そしてジロ・デ・イタリアのような大きな自転車レースには、選手たちにとってかなりハードな登りが数多くあります。そうした登りでは、彼らと一緒に走ったり、セルフィを撮影しようとするファンが後を絶ちません。もちろん、こうした行為はレース中の大事故を引き起こす要因になりえます。

今年のブエルタの第17ステージの登りの様子は、バスクの人々がどれほど自転車レースが好きなのか、また、どれほど自転車選手に尊敬の念を抱いているのか、ということを示す一例となりました。