補強は今イチでなぜ強い?不思議クラブ・ワトフォード研究

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補強は今イチでなぜ強い?不思議クラブ・ワトフォード研究

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2017-18シーズンは、14位に終わったワトフォードFCが元気です。ブライトンとの開幕戦を2-0で快勝すると、バーンリーとのアウェイ戦を3-1、クリスタル・パレスとトッテナムのロンドン勢に2-1で競り勝って4連勝。

マンチェスター・ユナイテッドに本拠地ヴィカレージ・ロードで敗れた後、3試合で1ゴールしか決められずに1分2敗と停滞しますが、好調ウルヴスに2-0、最下位ハダースフィールドに3連勝と持ち直しました。10節まで6勝1分3敗の勝ち点19は、マン・ユナイテッドをしのぐ堂々の7位です。

メイン写真 photo by Franziska

リシャルリソンが去り、無名だらけの新戦力

左サイドで脅威となっていたリシャルリソンがエヴァートンに移籍し、得点力が不安視されていたチームは、エヴァートンやトッテナムと並ぶ16ゴールをゲットして順調に勝ち点を積み上げています。

2018年1月にマルコ・シウヴァ監督が成績不振で解任され、後を継いだハビ・グラシア監督は、残りの15試合を4勝3分7敗というパッとしない数字でフィニッシュしました。

夏の補強は、WBAから獲得した守護神ベン・フォスター以外は無名の選手ばかり。即戦力といえるのは、ボローニャから移籍した24歳の左SBマジーナと、スウェーデン代表経験があるエステルムンドのMFケン・セマぐらいでした。

シーズン最初の試合で先発した11人は、GKフォスター、DFヤンマート、カバセロ、キャスカート、ホレバス、MFウィル・ヒューズ、ドゥクレ、カプェ、ロベルト・ペレイラ、FWトロイ・ディーニー、アンドレ・グレイ。

新戦力は35歳のベテランGKだけで、最近はあまり見られなくなった4-4-2でした。この試合はロベルト・ペレイラの2ゴールで勝ったものの、多くのプレミアリーグファンが、ワトフォードは降格争いに加わるものと思っていたでしょう。


ホームスタジアムのヴィカレージ・ロードは23700人を収容(PHOTO by Brakspear at English Wikipedia)

スタメン固定から一転、大胆起用でチームを蘇生

開幕から4連勝というロケットスタートを決められた最大の理由は、ハビ・グラシア監督のシンプルな戦術と采配でしょう。6節まで、スタメン完全固定。前線からプレスをかけ、手数をかけずにゴール前に運ぶフットボールを徹底しました。

リシャルリソンがいなくなった左サイドに、ロベルト・ペレイラを据えたのが大当たり。中央に斬り込んでシュートを放つシーンが増えた元ユーヴェのアルゼンチン人MFは、10節までで5ゴールをゲットしています。

彼が中に入ると、縦にオーバーラップするのが、SBのホセ・ホレバスです。ランキング3位の4アシストを記録している34歳は、80本のクロスをゴール前に上げており、こちらはリーグTOP。左サイドからのアタックの強化が、序盤の好調をもたらす大きな要因でした。

中盤センターは、昨季7ゴールのドゥクレと効果的なパスを左右に展開するカプェ。右サイドには、1年前にチームに加わったウィル・ヒューズが定着しています。夏に獲得した6人の新戦力は、GKのフォスターを除けばのべ3試合しか先発出場しておらず、戦い慣れたメンバーによる戦術の徹底度で勝負したハビ・グラシア監督ですが、カラバオカップ2回戦のレディング戦ではスタメン11人を総入れ替え。

ニューフェイスとサブの選手にアピールの場を与え、主力に負傷やスランプがあった際に使える選手を見極めました。


ロベルト・ペレイラとのコンビで左サイドを制圧するベテランSBホレバス(PHOTO by Ailura)

6節のヤンマートの負傷がきっかけだったかのように、アーセナルに0-2、ボーンマスに0-4と無得点で連敗すると、ハビ・グラシア監督は「スタメン固定はここまで」とばかりにメンバーを変更しました。

最終ラインは、キャスカートだけを残して、右にフェメニア、左に期待のマジーナ、CBには昨季の中心選手だったマリアッパと大胆にリニューアル。中盤はいじらなかったものの、最前線には負傷が癒えたジェラール・デウロフェウとレンタル先のマラガから呼び戻したアイザック・サクセスを据え、10節のハダースフィールド戦はこの2人がゴールを決めて快勝しています。

遅刻したら高額の罰金!規律を求めるハビ・グラシア監督

2015-16シーズンには22ヵ国の選手が在籍していたワトフォードは、今季も17ヵ国のパスポートを集めた多国籍軍。ハビ・グラシア監督は、「練習に遅刻すると、1分につき100ポンド(約1万4400円)の罰金」などといった厳しいルールを導入し、チームに規律をもたらしています。

クラシックな4-4-2は自らが貫くスタイルではなく、あくまでも適材適所を追求した結果であり、選手のコンディションや成長をチェックしながら、新しい戦い方を選ぶ可能性も充分にあるでしょう。


昨季プレミアリーグで7ゴールを決めたドゥクレは、脇役に徹してノーゴールながらも4アシスト(PHOTO by S.Plaine)

監督がひどいペナルティを導入して、怠ける選手がいなくなったね。選手はみんな、彼をリスペクトしてるよ。

2010年の夏にワトフォードに移籍し、9シーズンめを迎える主将トロイ・ディーニーは、指揮官のマネジメントを歓迎しながらも、勝ち続けるのは難しいと語っています。

勝てば気分が上がり、波に乗れることもあるけど、プレミアリーグは簡単じゃないから、負け始めるとあっという間に連敗する。

ワトフォードの快進撃は、どこまで続くでしょうか。ハビ・グラシア監督の手綱さばきに注目しましょう。

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