「オリエンテーリング」競技参加体験記

「オリエンテーリング」競技参加体験記 DO

「オリエンテーリング」競技参加体験記

スポーティ

前回の記事でご紹介した「オリエンテーリング」。地図を読み取り、自分でルートを決め、山の中の道なき道を走って、タイムを競います。いわば頭脳的ゲームとトレイルランが融合したようなこの競技に初めて挑戦してきました。

筆者はアメリカ・カリフォルニア州在住です。今までトレイルランのレースは数多く走りましたが、地図読みは全くやったことがありません。強いて言えば、学生時代アルバイトでピザの宅配ドライバーを長くやっていたので、街中でロードマップを使ってナビゲーションすることには慣れています。

まずは、挑戦ということで、地元アーバイン市で行われたロサンゼルス・オリエンテーリング・クラブ主催のレースに参加しました。

トレイルランナーが、初めてオリエンテーリングを体験するとどうなるかをご紹介します。

意外に若い選手層。その秘密は?

レース会場に着くと、意外なぐらい、若い世代の参加者グループが目立ちました。今回の参加者は、総勢約100人と事前に聞いていましたが、選手名簿に年齢の表示がなかったので、何となく中高年中心の地味な雰囲気を予想していました。ところが、実際に来てみると、ぱっと見には参加者の8割ぐらいがティーンの年齢のようでした。

しかし、どうも彼らは普通のティーンとは様子が違います。皆が異常に行動がきびきびし、行儀が良いのです。インストラクターとおぼしき人が何か言うと「イエス、サー!」と大声で応えて整列したりしています。


スタート前にウォーミングアップをする選手達

「なんか軍隊みたいだなあ」と思って、揃いのTシャツの背中を見ると「NJROTC」と書いてありました。Naval Junior Reserve Officer Training Corps、つまり「海軍将校を養成するための教育課程」を受けている高校生達でした。

オリエンテーリングは、元々、軍事教練から始まったそうで、アメリカでは今でもその伝統が続いているようです。日本では大学のサークル活動が中心だと聞きました。

勿論、今回のレースでも参加者には私のような一般の大人も混じっています。

レース前に渡される3種の神器

受付を済ますと、渡されたのが下の3つです。


ゼッケンとパンチとコンパス。パンチは指に着けて、コントロールと呼ばれる通過ポイントで自己のタイムを記録する電子装置です。

レベル別に分かれたコース

コースは参加者の競技レベルによって以下のように分けられています。
•初心者(白)
•中級者(黄色)
•上級者(オレンジ)
•エキスパート・ショート(茶色)
•エキスパート・ミドル(緑)
•エキスパート・ロング(赤)

私が参加したのは、初心者(白)コース。2.5キロの距離で、通過ポイント(コントロール)も道路脇などの比較的見つけやすい場所に設置されています。主催者ウェブサイトには8~10歳の子供か全く初めてオリエンテーリングをやる人向きとありました。

スタートからゴールまで

スタート地点に並び、各レベル1人づつが数分おきにスタートします。まず最初に参加者がすることは地図を拾い上げること。こうして自分が進むべきルートを見つけます。


スタート直後に地図をチェック


初心者コース用地図。レベルによってコース地図も異なる。

私が走った初心者用コースの地図にはスタートとゴールの間に8つの通過ポイント(コントロール)がありました。
通過ポイントには番号があり、その指定された順番で巡らなくてはいけません。競技者はここで地図読みの能力を試されます。本格的なオリエンテーリング競技ではレース前の一定期間、参加者はコース付近を立ち入り禁止になります。つまり、それだけ土地勘が物を言う競技なのですが、私には地元出身という大きなアドバンテージがありました。

会場となったアーバイン公園は過去に何回も来たことがあり、地図を見ればそこに何かあるかがわかっていたのです。方角も大体わかるので、コンパスは結局一度も使う必要がありませんでした。

それだけ有利な条件だったにもかかわらず、何回か通過ポイントを見逃したり、一度来たルートを引き返したりして、2.5キロのコースを走り終えるまで20分以上かかりました。多分、1キロぐらいは余分に走ったのではないでしょうか。それでも何とか初心者クラスでは一番でした。

中級者以上のクラスになると、コースは入り組み、通過ポイントは見つけにくい場所に設置されています。公園内には地図を片手に右往左往している未来の海軍将校達がたくさんいました。

タイムを競おうとするならば当然のことですが、ポイント間はなるべく速く走ることになります。普通の長距離走レースと違うのは、いくら頑張って走っても、地図読みを間違えていたら、その走った分は体力とタイムの両面でマイナスになってしまうこと。

根性と体力だけではなく、知的な判断力も必要とされるゲーム、それがオリエンテーリングです。


コース途中に設置された通過ポイント(コントロール)

安い参加費用

今回のレースに参加するにあたって必要だった費用は以下の通りです。
•レース参加費:13ドル
•パンチ・レンタル:2ドル
•コンパス・レンタル:2ドル

合計17ドル、現在の為替レートで約1900円。これは市民マラソンやトレイルランなどに比べると格段に安い金額です。ちなみに同じ公園で行われたトレイルランの参加費は60ドルでした。

私はパンチとコンパスをレンタルしましたが、参加者の多くは自前のものを持ってきているようでした。コースをレベル別に設定したり、地図を作製したり、スタート時間や通過タイムを記録したり、主催者側の負担はかなりのものになるでしょう。到底、この参加費x人数で大きな利益が出ているとは思えません。オリエンテーリングが採算無視のボランティアによって運営されていることが窺えます。

その点は日本も似たような事情だと聞きました。愛好者たちの熱意に支えられたアマチュア・スポーツ、オリエンテーリングを是非試してみてはいかがでしょうか。

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