プレミアリーグに変革をもたらす40代の指揮官たち

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プレミアリーグに変革をもたらす40代の指揮官たち

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ペップ・グアルディオラ、マウリシオ・ポチェッティーノ、ハビ・グラシア、ヌーノ・エスピリト・サント、エディ・ハウ、マルコ・シウヴァ。「彼らの共通項は?」と問われて即答した方は、なかなかのプレミアリーグ通です。

プレミアリーグのクラブを預かる、40代の指揮官たち。ヴェンゲル、ファーガソン、モウリーニョが覇権を争っていた時代は終わり、新しい世代がリーグの潮流の主役となっています。今回、どんな注目の40代の指揮官たちがいるのか、みていきましょう。

TOP写真 photo by ФК ШАХТЕР

進化し続けるペップ戦術の多大な影響

バルセロナ時代にポゼッションサッカーで一時代を築いたペップは、バイエルン、マンチェスター・シティと移り歩くなかで、確実に進化を遂げています。プレミアリーグに参入してからの顕著な変化は、ポゼッションとカウンターの自在な使い分けと、ダヴィド・シルヴァとデブライネ(あるいはベルナルド・シウヴァ)をインサイドMFに配するWプレーメイカーシステムです。


プレミアリーグ連覇とクラブ初のチャンピオンスリーグ制覇が、最強チームを率いるペップのミッション(PHOTO by Thomas Rodenbucher)

バイエルンでは変幻自在だったフォーメーションは、4-3-3や4-1-4-1が基本となっていますが、ダヴィド・シルヴァやスターリングを最前線に入れる「偽9番」や、デルフとカイル・ウォーカーを中盤の真ん中に加勢させる「偽SB」は健在。

「前線からの厳しいプレス」「ボールを奪われたら6秒以内に奪い返す」「GKから短いパスをつなぎながら相手の隙を突く」といったペップらしい戦い方は、同世代の監督たちに多大な影響を与えています。

今までになかった流動性の高さと複数戦術の共存

前からのプレッシングでショートカウンターを狙うチームといえば、ポチェッティーノ監督のトッテナムやハビ・グラシアのワトフォード。司令塔のエリクセンでさえ激しい上下動を繰り返すスパーズは、相手のキーマンをチェックするべく4-3-2-1、4-2-3-1、4-2-2-2と中盤を動かし、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーに完勝しました。

昨季は、3バックを採用することが多かったハビ・グラシア監督は、ディーニー、アンドレ・グレイ、アイザック・サクセスらをトップに据える4-4-2をベースとしており、少ない手数でサイドに展開するアタックは迫力があります。

センターのドゥクレは、豊富な運動量を活かして攻め上がるシーンが多く、既に5アシストを記録。流動性の高いフォーメーションと直線的な攻撃を得意とする彼らは、ひと昔前のプレミアリーグになかったタイプのチームです。


ディーニュ、ミナ、ベルナルジと新戦力がことごとく機能しているのもマルコ・シウヴァ監督のお手柄でしょう(PHOTO by dom fellowes)

時間帯や戦況によって戦い方を変えるのはペップの専売特許ではなく、エヴァートンのマルコ・シウヴァ監督の得意技でもあります。

前からプレスをかけて、奪ったボールをすかさずサイドに展開するアグレッシブなスタイルと、引き気味に構えてパスコースを絞り、苦し紛れのパスをカットする戦術が混在。チェルシーの中盤を仕切るジョルジーニョは、エヴァートンのMFに巧妙に囲まれ、思い通りにボールに触ることができませんでした。

ウォルコット、シグルズソン、ベルナルジ、ルックマンらサイドから仕掛けるタレントが充実したエヴァートンは、今季プレミアリーグで最も多くのクロスを入れているチームでもあります。速いボールを中央に通して勝負するのを好むところも、ペップとマルコ・シウヴァの共通項です。

ウルヴスとボーンマス…異色の指揮官に注目!

ヌーノ・エスピリト・サント監督率いるウォルヴァーハンプトンは、守備重視&速攻のチーム。ジョアン・モウティーニョ、ルベン・ネヴェス、ルイ・パトリシオなど代表の主軸をはじめ7人のポルトガル人選手が在籍しており、インターセプト数が3位でファール数も3位という数字からもしつこい守備を身上としていることが窺えます。

失点の少なさはリーグで5番めながら、絶対的なストライカーがいないために勝ち点を落とした試合も多いのですが、17節終了時点で7位は大健闘です。

速攻と遅攻のスイッチングに長けた戦術家は、相手の出方に合わせて中盤の選手たちの役割を変えるのもうまく、3点差以上で敗れた試合がひとつもありません。

シンプルなフットボールを選ぶ中小クラブが多いなかで、ポルトガルテイストのウルヴスは異色という言葉がぴったりです。


2014-15シーズンにバレンシアを4位に引き上げ、評価を高めたヌーノ・エスピリト・サント監督(PHOTO by Carla Cortes)

ウルヴス以上に異色という言葉が似合うのは、エディ・ハウのボーンマスです。同一クラブを最も長期間指揮している監督となった41歳のマネージャーは、一貫してつなぐサッカーを継続。ボーンマスは、マンチェスター・シティとチェルシーの次にロングボールが少ないチームです。

最終ラインとセントラルMFからライアン・フレイザーやデヴィッド・ブルックスにパスが通り、サイドからのラストパスをカラム・ウィルソンとジョシュア・キングが決めるスピーディーな攻撃は、序盤戦のプレミアリーグを盛り上げてくれました。

上位との試合が重なった11月からの7試合で1勝6敗と停滞していますが、後半戦に強いエディ・ハウはきっちり巻き返してくるものと思われます。

若き戦術家が揃ったプレミアリーグ。ゲーゲンプレッシングのリヴァプールと変幻自在のペップのマッチレースは、新時代ならではの優勝争いなのではないでしょうか。

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