常夏のグランカナリアで自転車三昧の1週間 -ラ・シクロツーリスタ・グランカナリア・バイク・ウィーク-

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常夏のグランカナリアで自転車三昧の1週間 -ラ・シクロツーリスタ・グランカナリア・バイク・ウィーク-

スポーティ

ヨーロッパの西の端にあるイベリア半島から、さらに移動すること2000km。アフリカにも近い、大西洋上にあるスペイン領の一つが、グランカナリア島です。ここで毎年12月に開催されるサイクリング・イベントが「ラ・シクロツーリスタ・グランカナリア・バイク・ウィーク(La Cicloturista Grancanaria Bike Week)」。

ヨーロッパでも有数のシクロツーリズムのメッカであるこの島を、サイクリストたちが駆け抜けます。今回の記事では、天候に恵まれたこのサイクリング・イベントの様子ををレポートします。

TOP写真: Photo by Yukari TSUSHIMA

12月のグランカナリア


この風景でも12月。Photo by Yukari TSUSHIMA

太陽の国として名高いスペイン。とは言え12月になると北側から、雪のニュースが聞かれるようになります。しかし同じ時期、イベリア半島から2000km離れたカナリア諸島の平均最高気温は、なんと22度。海岸に飾られたクリスマスツリーの下を、半袖のTシャツを着た人が闊歩します。そんな常夏のカナリア諸島のなかでも、特に気候が温暖なのがグランカナリア島です。

この島で、12月上旬に開催されるサイクリング・イベントが「ラ・シクロツーリスタ・グランカナリア・バイク・ウィーク(La Cicloturista Grancanaria Bike Week)」です。参加者は、1週間この島でサイクリングを楽しみます。

この間には、真剣勝負のレース形式のイベントと、自転車で走ることを楽しむことが目的のイベントの両方があります。そのため、レースをしたい人も、この地の景色を楽しみたい人も両方楽しめるイベントなのです。

「ラ・タイタニカ」と「スビーダ・デ・ラス・ピコ・デ・ラス・ニエベス」


ヒルクライムのレース中。Photo by Yukari TSUSHIMA

レース形式のイベントは2種類。

一つは「ラ・タイタニカ (La Titánica)」。日本では「グラン・フォンド(Gran Fondo)」とよばれる形式のレースです。その距離は、92kmと決して長くはありません。しかし、獲得標高は4482m。この登りの多さが、このレースの最大の特徴です。レースのスタート地点は、マサパロマスの灯台の真下。今年は243人のサイクリストが参加しました。


マサパロマスの灯台。「ラ・タイタニカ」のスタート地点。Photo by Yukari TSUSHIMA

このレースの参加者は、グランカナリア島の山間部に繰り返し現れる、つづらおりのカーブの坂道と戦うことになります。登りが厳しいと同時にカーブも多いので、スピードのコントロールが難しく、かなりテクニカルなコースです。2018年のこのレースの優勝者のタイムは男子が1時間54分29秒、女子が2時間59分06秒でした。

もう一つは「ラ・スビーダ・デ・ラス・ピコ・デ・ラス・ニエベス (La subida de las pico de las nieves)」。こちらは、ヒルクライムのレースです。


女性サイクリストもたくさん参加しています。Photo by Yukari TSUSHIMA

こちらのレースは、距離が約30km。獲得標高は約1900m。グランカナリア島の海岸から、この島の中心にあるピコ・デ・ラス・ニエベスまで、文字通り一気に駆け上がります。最大の難所は、2回現れる斜度23%の登りです。

実はこの23%の登りの距離自体は、数10mしかありません。しかし、この難所にたどり着くまでに、サイクリストたちは、グランカナリア島名物のカーブをいくつも曲がらなくてはなりません。その結果、サイクリストたちは、自転車のスピードがかなり落ちた状態でこの激坂にたどり着くことになるのです。

そのため、このヒルクライムのレースでは、スピードのコントロールとペース配分が、勝利の鍵となります。今年のこのレースの優勝者のタイムは、男子は1時間26分12秒、女子は2時間24分10秒でした。ちなみに、ゴール地点のピコ・デ・ラス・ニエベスから見える景色はこのようなもの。松の木が生い茂る、グランカナリア島内で最も風が強い場所が、このレースのゴール地点です。


ヒルクライムのゴール地点。標高1952m。Photo by Yukari TSUSHIMA

この2つはレース形式のイベントのため、途中にタイムコントロールの地点が設定されています。その地点を制限時間内に通過できない参加者は、レースを途中で中止しなくてはなりません。しかし、大会側でサイクリストをピックアップするための大型バスを準備していますので、どうぞご安心を。

グランカナリアの小さな村を巡るサイクリング・ツアー


Photo by Yukari TSUSHIMA

前述の「ラ・タイタニカ」と「スビーダ・デ・ラス・ピコ・デ・ラス・ニエベス」を除いたほかの日は、参加者みんなで「サイクリング」を楽しみます。

グランカナリア島は比較的最近の火山の噴火によってできた島であるため、地域によって風景が大きく異なります。島の中に砂丘があったり、ジャングルのような場所があったり、松林があったりするのです。こうした景色を楽しみながら、参加者たちはのんびりと自転車で走ります。

このようなサイクリングの日のスタート・ゴール地点は、この島にある小さくて趣のある村々です。素晴らしいカテドラルのような教会のある村もあれば、色鮮やかな建物のを横を通り過ぎることもあります。


アルコス(Arcos)の町の教会。カテドラルではありません。Photo by Yukari TSUSHIMA

ゴール地点では、手作りのお昼ご飯が参加者たちを出迎えます。


Photo by Yukari TSUSHIMA

ヨーロッパ各国からの参加者たち


スタート前。後ろにはクリスマスツリーが。Photo by Yukari TSUSHIMA

この、「ラ・シクロツーリスタ・グランカナリア・バイク・ウィーク」は、昨年で30回目の開催を迎えました。サイクリストの中には、第1回目から毎年欠かさず参加している人もいます。

参加者の国籍は様々です。スペイン国内はもちろん、イギリスやイタリア、北欧諸国などのヨーロッパ各国から、サイクリストたちが参加します。そのため、イベント中に聞こえてくる言語も様々。参加者同士が片言の英語やスペイン語で、上手にコニュケーションをとっている姿を見ることも、ごく普通の光景です。

このイベントの主催者から、「次回は、日本のサイクリストの参加もお待ちいたしております」とのメッセージもいただきました。

スペインで自転車に乗りたい方、そしてヒルクライムに自身のある方、ぜひ今年の12月には、グランカナリア島でこのイベントに参加してみてはいかがでしょうか。