マラソンにパワーメーターを取り入れよう!パワーを測定するメリットとは?
DOマラソンにパワーメーターを取り入れよう!パワーを測定するメリットとは?
皆さんはマラソンの練習を行う時に、何を目安にしてトレーニングを組んでいるでしょうか。トレーニングを行うにあたり、トレーニングの強度や時間はトレーニング効果を得るために重要となります。
心拍数を測りながら走る速度を決めたり、最大酸素摂取量から走る速度を計算したりしている人もいるかと思います。トップレベルのアスリートだと、血中乳酸濃度をトレーニングに取り入れている方もいます。
これらの指標は、トレーニングメニューの立案に重要なだけでなく、トレーニングによる適応を知るためにも重要となります。しっかりトレーニングができていると、同じ速度で走っても心拍数や血中乳酸濃度が低い状態を維持できます。
これまではトレーニングメニューを考えたり、トレーニング効果を見たりするのに、最大酸素摂取量や血中乳酸濃度といった指標が用いられてきました。しかし、最近はランニング中に新たなデータを測定できる機械が開発され、トレーニングに応用できるようになりました。その機械が今回紹介するパワーメーター。
今回はパワーメーターで、一体どのようなデータを習得できるのか、それをどのようにトレーニングやレースに活かすことができるのかを紹介していきます。
パワーは走速度と加速度で決定する。
走っている間のパワーを知流には、地面にかかっている力を測定しないと正確な値を知ることができません。走っている間に地面にかかる力を測定するのは、かなり難しいことです。しかし、地面にかかっている力は、体重と加速度が分かれば計算することができます。このことを応用したのがパワーメーターです。
パワーメーターは小型のセンサーのようなもので、靴につけることで走っている間の速度と加速度を計測することができます。走っている間のパワーは、
パワー = 体重 × 重力加速度 × 加速度 × 速度
という式で計算できるので、計測した速度と加速度からパワーを計算しています。
パワーメーターとスマホやGPSウォッチを同期させることで、リアルタイムでパワーの情報を見ることができます。トレーニングが終わった後には、パワーメーターの情報を専用のプラットフォームにインストールし、様々な情報を分析することもできます。
それではこのパワーは、どのようにマラソンに活かすことができるのでしょうか。
パワーを用いてトレーニングをデザインし、トレーニング効果を評価する
ランニング中のパワーをデータとして記録し、蓄積していくことでできることとして、トレーニングの立案、トレーニング効果の評価、マラソンのペーシングの3つがあります。
これら3つのことを行うためには、自分の体力を知るために定期的にテストを行わなければいけません。簡単な方法として、10km走があります。10kmをできるだけ速いタイムで走りながらパワーのデータを習得します。
この10km走で得られたパワーのデータを、トレーニングの立案やトレーニング効果の評価などに用いることができます。例えば10kmの後半での平均パワーが3ヶ月前よりも上昇していれば、この3ヶ月のトレーニングにより後半が強くなったと言えます。また、全体の平均パワーが上昇していれば全体的に走速度を底上げすることができたと言えます。
また10km走の平均パワーはクリティカルパワーと言い、1時間程度疲れずに走り続けられるパワーの上限ともされています。閾値トレーニングという、疲れが生じる手前の速度で走り続けるトレーニング方法がありますが、このトレーニングを行う際にはクリティカルパワーが目安になります。またクリティカルパワーが上昇すると、マラソンでより速い速度で走っても疲れづらくなった、ということを意味します。
クリティカルパワーを上げるには、クリティカルパワーよりも高いパワーで走る練習も必要となります。クリティカルパワーを測定しておくと、そのパワーよりも高いパワーで走れているか、トレーニング中にどれくらいパワーが変動しているかを確認しながらトレーニングを行うことができます。
1回のトレーニングの中でパワーを比較することもできます。トレーニング中のパワーを計測すると、パワーの値が変化しているのが分かります。その日行ったトレーニングで、そのパワーの変動の原因が何かを考えることは重要です。単純に体が疲れていたのか、途中で心が折れてしまったからなのか、フォームが崩れたからか、など様々な原因が考えられます。情報を分析しながら原因を明らかにすることで今後の課題が見えてきます。
パワーはレースでも重要な情報となります。マラソンのレースでは最後まで一定の速度で走り続けることが重要となります。クリティカルパワーが分かれば、そのパワーを目安にして走ることで最後まで一定の速度で走りぬくことができます。
マラソンを走る場合には地形の変化が一つのポイントになります。時には厳しい坂道を登らなければならず、一定のペースを刻むのが難しかったりします。しかしパワーはこうした地形の変化の影響を受けません。
走っていると風の影響も受けます。速度と心拍数に頼っていると、向かい風が吹いた時には速度が落ち、心拍数が上がってしまいペースに乱れが生じます。しかしパワーは地面に発揮した力を計測しているので、風の影響も受けず、一定のペースを保つことができます。
このようにマラソンにパワーを取り入れることで、適切なペースで走れているかを知ることもできます。
パワーメーターはリアルタイムで情報を得られる
パワーメーターを用いるメリットとして、リアルタイムで情報を得ることができる、ということが挙げられます。心拍数や血中乳酸濃度を指標としてトレーニングを行っている方も多いかと思いますが、これらはリアルタイムで測定することができません。
心拍数や血中乳酸濃度は体の動きとは少し遅れて変化します。50m走を行ったら走っている時よりも走り終わった後の方が、息が切れて疲れたと感じていますよね。しかしパワーメーターから得られる情報はその瞬間に発揮したパワーなので、リアルタイムでどれくらいの強度で運動を行っているのかを確認することができます。
リアルタイムで測定できるということは、マラソンのレースにおいて特に効果を発揮してくれます。走っている間の心拍数は気温やその日のコンディションなどの様々な要因による影響を受けますが、パワーはそうした影響を受けず、相対的にどれだけの強度で走っているかを知ることができ、ペーシングに役立てることができます。
パワーと心拍数を合わせることでさらに有益な情報が得られます。体が疲れてくると、同じパワーを発揮していても心拍数は高くなります。パワーと同時に心拍数も測定すると体の疲れ具合や体のコンディションがどうなのかも評価できます。
このようにパワーメーターはリアルタイムで体が発揮しているパワーの情報を得ることができ、マラソンで有利に戦うことができます。
パワーメーターからはパワー以外の情報も得られる
パワーメーターのすごいところは、パワー以外の情報も得られるということです。パワーメーターから得られる情報として、垂直振動やケイデンス、接地時間、フォームパワーなどが挙げられます。
垂直振動は、走っている時にどれだけ上下に動いているかを示す値で、小さいと上下動が少なく、効率的な走り方と言えます。
ケイデンスはピッチのことで、1分あたりに何ステップしたかを示す値です。同じ速度でもストライド(歩幅)が大きいとケイデンスは小さくなります。様々なケイデンスで走ることで、自分が心地よく走れるケイデンスや速度を上げたい時にどれくらいのケイデンスにすればよいかを知ることができます。
接地時間は足が地面についている時間で、ケイデンスや走速度の影響を受けて変動します。
フォームパワーは、ランニングのフォームを維持するのに、どれだけのパワーが必要かを表します。同じ距離を走ってフォームパワーが少なくなれば、それだけフォームを維持するのにパワーが必要でなくなった、つまり無駄なパワーを使わずに走ることができるようになったと言えます。
これらの指標もトレーニング中やレース中にデータとして蓄積して分析することで、自分にとって最適な走り方を見つけることができます。
マラソンにパワーメーターを取り入れることには、様々なメリットがあります。パワーメーターを取り入れることで、これまで見えてこなかった弱点が見えてきたり新たなトレーニングに取り組んだり、実際のレースに活かすことができます。
気になった方は是非マラソンにパワーという新しい指標を取り入れてみて下さい。