マラソンのパフォーマンスを規定する3つの指標を知っていますか?

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マラソンのパフォーマンスを規定する3つの指標を知っていますか?

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寒い季節になりました。冬のスポーツというとスキーやスノボ、アイススケートなどを思い浮かべるかもしれませんが、マラソンも冬がシーズンの競技です。

普段マラソンの大会に向けてトレーニングを積んできた方はそろそろ大会に向けてコンディションを整えたりレースプランを立てたりする時期ではないでしょうか。

年明けには箱根駅伝も開催されます。マラソンは走らないけど応援するのが好きだ、正月は毎年箱根駅伝を見ている、という方も多いはず。

そんなマラソンですが、マラソンが遅い人と速い人との違いは何なのでしょうか。実際にマラソンを走る人ならどうすればタイムが縮まるのかを考える上でこのことを知っておくことは有益です。また、観戦する人もマラソンについての知識をある程度持った上で観戦することでよりマラソンを楽しむことができます。

マラソンのパフォーマンスは、3つの指標で大部分を説明することができます。その3つの指標とは、「最大酸素摂取量」、「乳酸性作業閾値」、「ランニングエコノミー」のことを言います。

今回はその3つの指標とは一体何なのか、これら3つの指標からマラソンのパフォーマンスがどのように規定されるのかを紹介していきます。

体内にどれだけ酸素を取り込めるか 〜最大酸素摂取量〜

まず1つ目の指標となる最大酸素摂取量ですが、この指標は読んで字のごとく、酸素摂取量、つまり体内に取り込める酸素の量の最大値のことを指しています。

私たちは体を動かす時に体内でエネルギーを作り出していますが、このエネルギーを作り出すのに酸素が必要となります。

運動中にはエネルギー消費量が高まり、酸素消費量も上昇します。速く走れば走るほど酸素の消費量は上昇し、多くの酸素を体内に取り込まなければなりません。

最大酸素摂取量が高いと、速い速度で走っても体はエネルギーを作り出すことができ、その速度を維持することができますが、最大酸素摂取量が低いとその速度を維持できず、失速していってしまいます。

マラソンでは一定の速度を維持することが重要となります。そのため、最大酸素摂取量は速い速度をどれだけ維持できるか、ということを見る指標になります。

最大酸素摂取量は、呼気ガス分析といい、吸った空気と吐いた息に含まれている酸素や二酸化炭素の量を測定することで計算しています。そのため大学など施設が整った環境でないと正確な測定が難しいのが現状です。

しかし、最大酸素摂取量を比較的簡単に知る方法もあります。それは20mシャトルランです。シャトルランは文部科学省でも最大酸素摂取量を知る一つの方法として扱われており、ホームページを見ると、シャトルランで到達した回数を最大酸素摂取量に換算する表が掲載されています。

他にも1500mや5000m走のタイムから最大酸素摂取量を求める方法もあります。呼気ガス分析を行わずに最大酸素摂取量を簡単に知るにはこうした方法が適しています。

どれだけ糖を節約できるか 〜乳酸性作業閾値〜

運動をする時には糖質と脂質を分解することでエネルギーを得ています。低い運動強度では脂肪が主に使われますが、強度が高くなる、つまり走る速度が速くなるにつれてエネルギー源が糖質へとシフトしていきます。

乳酸という言葉を聞いたことがあるかと思います。糖質は分解されると乳酸という物質になります。エネルギー源が糖質へとシフトするということは、糖質が分解され、乳酸が増える、ということでもあります。つまり乳酸はどれだけ糖質が分解されているかを知る指標の一つと言えます。

血中の乳酸濃度は、速度を徐々に上げていくと、始めはゆっくりと上昇していくのですが、ある速度を境に血中乳酸濃度が急激に上昇します。この速度を乳酸性作業閾値と言います。乳酸濃度が急激に上昇するということは、それだけ糖質が多く使われているということです。

マラソンでは30kmの壁という言葉があり、30kmを過ぎたあたりから急激に疲れが襲ってくる、と言われています。この疲労の原因は、筋肉に蓄えられている糖質であるグリコーゲンという物質が枯渇することとされています。マラソンの始めに糖質をたくさん使い過ぎてしまい、途中でエネルギー切れになった状態と言えます。

乳酸性作業閾値が高いと、速い速度で走っても乳酸性作業閾値が低い人に比べて糖質の消費量が少なくて済みます。そのため、速い速度で走ってもレース後半までグリコーゲンを温存し、最後まで走り抜くことができるのです。

乳酸性作業閾値は、走っている時にどれだけ糖質を温存することができるかを示す指標として見ることができます。

残念ながら、乳酸性作業閾値は専用の機械を用いて血液から乳酸濃度を測定しなければなりません。そのため設備が整った施設で測定する必要があります。

乳酸性作業閾値を推定する方法としては、心拍数を用いることが挙げられます。多くの人が、乳酸性作業閾値の速度で走ると最大心拍数の65〜75%になります。走りながら心拍数を測定し、大体どのくらいの速度が乳酸性作業閾値の速度なのかを把握しておきましょう。

どれだけ楽に走れるか 〜ランニングエコノミー〜

車を選ぶ時、燃費を気にして選ぶ方がいるかと思います。同じガソリンを入れるなら、長い距離を走ってくれた方が、コスパがよくて助かりますが、マラソンも同じです。

体内にはグリコーゲンというガソリンが蓄えられていますが、これを温存しながら走らないと途中でガス欠になり、最後まで走り抜くことができません。

マラソンにおける燃費のことをランニングエコノミーと言います。ランニングエコノミーは、体重1kgを1m移動させるのに何mLの酸素が必要か、という表し方をします。

ランニングエコノミーに影響を与える要素として、フォームが挙げられます。当然のことですが、マラソンは前に進まなければゴールに近づきません。うさぎのように上下に飛び跳ねるように走っている場合、上下に動いた分は無駄にエネルギーを消費している、と言えます。

心肺機能を高めたり脚力をつけたりすることも重要ですが、走り方、フォームもマラソンのタイムを縮めるのに重要な要素と言えます。

3つの指標からマラソンでの最適な走速度が決まる!

マラソンでは最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値、ランニングエコノミーという3つの指標が重要となります。これら3つの値を測定することで、マラソンで最適な走速度を計算することができます。

計算方法は簡単で、以下の式で計算することができます。

マラソンの走速度 = 最大酸素摂取量 × 乳酸性作業閾値 ÷ ランニングエコノミー

ランニングエコノミーは簡易的に推定することができないので、この式はあまり意味がないように感じるかもしれません。

実は、ランニングエコノミーは最大酸素摂取量と似たような数値になります(単位が違うので、数値は同じですが意味は異なります)。そのため、ランニングエコノミーが分からない、という方は乳酸性作業閾値の速度を求めることでマラソンの速度を計算することができます。

乳酸性作業閾値は、最大酸素摂取時の速度の何%か、というように評価します。つまり、最大酸素摂取時の速度が400m/分で、乳酸性作業閾値が最大酸素摂取時の速度の70%の場合、マラソンの最適な走速度は280m/分と計算できます。

設備が整った環境でないと正確な値は計算できない、というデメリットはありますが、この計算式を使い、大体のマラソンの速度を把握して普段のトレーニングに取り組んだりレースプランを立てたりすることは非常に重要です。

今回紹介した3つの指標は、トレーニングの効果を確認したりトレーニング強度を決定したりする際にも有用です。データとして蓄積しておくと、自分の体力の変化を知ることもでき、さらにマラソンを楽しむことができます。

是非3つの指標をマラソンや普段のトレーニングに取り入れてみてください。


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