日本の与那嶺恵理選手も参戦。スペインで開催されたエマクメーン・ビラ

日本の与那嶺恵理選手も参戦。スペインで開催されたエマクメーン・ビラ WATCH

日本の与那嶺恵理選手も参戦。スペインで開催されたエマクメーン・ビラ

スポーティ

スペインのバスク地方で5月下旬に開催された、女子の自転車ロードレースのエマクメーン・ビラ(Emakumeen Bira)。ヨーロッパで開催される女子のプロ・ロードレースの中でも特に重要なレースの一つで、トップクラスの女子サイクリストが毎年参加します。

今年はこのレースに、日本の与那嶺恵理選手が参戦しました。山岳コースが主体のハードな4日間のレースの様子をレポートします。

TOP写真:アレ・チッポリーニ所属の与那嶺恵理選手(写真左)とチームのエースであるソラヤ・パラディン選手(Soraya Paladin)(右)。Photo by Yukari TSUSHIMA

トップチームの参戦とエネイカット・サイクリング・チームの欠場


現在UCIワールド・ツアーのランキングで第1位のバン・ブレウテン・アンネミエック選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

ヨーロッパ有数の強豪チームが参加するこのエマクメーン・ビラ。レースに出走するのは、ヨーロッパでもトップクラスの選手ばかりです。

現在のUCIウーマン・ワールド・ツアーでリーダージャージを着ているバン・ブレウテン・アンネミエック(Van Vleuten Annemiek/ Mitchelton Scott)選手をはじめとして、各国のロードレース・チャンピオンがスターティング・リストに名前を連ねます。


地元スペインのチームの一つ、チーム・モービースター(TEAM MOVISTAR)Photo by Yukari TSUSHIMA

当初このレースには、19チームが出走を予定していました。その中には、萩原麻由子選手所属のエネイカット・サイクリング・チーム(Eneicat Cycling Team)の名前もありました。

しかしこのレース直前に、同チームの複数のサイクリストとチームスタッフが体調不良を訴え、入院してしまいます。そのため、最終的にエネイカット・サイクリング・チームは、今年のエマクメーン・ビラへの出走を見合わせる決断を下しました。同チームのジェネラル・マネジャーのウンベルト・ゴメス(Humberto Gómez)氏は、次のように語ります。

今回、エマクメーン・ビラに出走できないことはとても残念です。でも、今は選手やスタッフの体調の回復を優先したいと思います。次のレースでは、チームがより強くなった姿をお見せしますよ。

こうした経緯のため、今年のエマクメーン・ビラは18チームでの戦いとなりました。

山岳主体のハードなコースと天候の急変


第3ステージスタート前。雨が降っていたため、選手たちも完全防備。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年のエマクメーン・ビラは例年同様に山岳コースが主体となりました。4日間のレースで総距離は465km、合計獲得標高は約5560mというもの。このコースの特徴の一つとして、各ステージの後半に厳しい山岳の登りが設定されていることが挙げられます。

ヨーロッパのトップクラスの選手がレースを走ると、各ステージの最後の1時間はレースのスピードが上がることがほとんどです。そのようなスピードを維持しながら、山岳を登る脚力がエマクメーン・ビラでは必要になります。

加えて、この時期、このレースが開催されるスペイン・バスク地方は天候が急変します。今年もその例外ではありませんでした。第1ステージは強い日差しのもと、気温も30度近くまで上昇。しかし、第3ステージと第4ステージは冷たい雨と低温の中でのレースとなりました。こうした天候の変化に対応するための体力も、サイクリストには必要になります。

バスクの山岳と天候がサイクリストの限界を試すレース、それがエマクメーン・ビラというレースなのです。

与那嶺選手所属のアレ・チッポリーニ


与那嶺選手所属のアレ・チッポリーニ。第1ステージのスタート前。Photo by Yukari TSUSHIMA

このレースに、アレ・チッポリーニは与那嶺選手をはじめとする6人の選手で参戦しました。チームのエースは、クライマーのパラディン選手。

韓国チャンピオンのナ・アルム選手(나아름)選手と共に、このレースに出走した与那嶺選手に今年のエマクメーン・ビラのコースの印象を伺いました。すると、

相変わらず、登りしかないコースですよね。

そして、次のようにも話をしてくれました。

チームのエースのパラディン選手をアシストすることが、今回の私の役目です。まだシーズン初戦なので、これから調子を上げていきたいとおもっています。

レースが始まると、パラディン選手の調子の良さは明白でした。初日のスプリントのステージは集団ゴールで手堅くまとめ、翌日以降の山岳ステージでは毎日上位でゴールしました。

特に第2ステージは、斜度10%を4回も登る上に、ゴール前の最後の1㎞も登りしかないという、クライマー向けのコース。この日パラディン選手は、ステージ優勝した選手と同タイムの2着でゴールします。


第2ステージゴール前。写真中央がパラディン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

一方、与那嶺選手も第2ステージを区間35位でゴールします。


第2ステージゴール前。与那嶺選手。Photo by Yukari TSUSHIMA

しかし、前述のとおり、第3ステージから選手たちは、雨と寒さの中でのレースを戦うことになりました。その結果、レースを棄権する選手が続出する中、与那嶺選手は、総合36位でレースを完走。エースのパラディン選手は総合3位で表彰台に立ち、チームとしての目標も達成しました。


第3ステージスタート前の与那嶺選手(中央)。Photo by Yukari TSUSHIMA

総合優勝したのは、イタリア人のエリサ・ロンゴ(Elisa Longho /Trek Segafredo)選手。最終ステージで逆転に成功し、今年の総合優勝を手にしました。


今年のエマクメーン・ビラで総合優勝したエリサ・ロンゴ選手(写真左)。Photo by Yukari TSUSHIMA

なお、今年のエマクメーン・ビラを最終ステージまで完走したできたのは、わずか66選手。特に最終ステージでは、20人以上もの選手がレースを途中で棄権するという、例年以上に過酷なレースとなりました。