【ブエルタ・エスパーニャ2019】スペインの首都が最終決戦の舞台に。マドリード・ステージ・レポート

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【ブエルタ・エスパーニャ2019】スペインの首都が最終決戦の舞台に。マドリード・ステージ・レポート

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ブエルタ・エスパーニャの最終週は、マドリード近郊の山岳が舞台となりました。例年のような気温の高さに選手たちが苦しむことはありませんでしたが、相変わらず意外と厳しいマドリード近郊の山々がサイクリストたちを最後まで苦しめました。最終週のレースの様子をレポートします。

TOP写真:2019年のブエルタ・エスパーニャの優勝者のプリモッシュ・ログリッジ(Primož Roglič/Jumbo-Visma)選手(右)第18ステージにて。

高速レースと「グルペット」の戦い。第17ステージ


高速レースを制したのは、フィリップ・ジルベール選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

マドリードでの最終週の幕開けは、アランダ・デ・ドゥエロからグアダラハラまでの219㎞のコース。この日のコースは、今年のブエルタで最も長く、標高自体は高い場所を走るものの、意外と山岳の厳しさは控えめなこの日のコース設定でした。

しかし、スタートしてみると、強烈な追い風に終始背中を押され続けた選手たち。この日の選手たちの平均時速は50.6km/hにまで達し、まれに見る高速レースとなりました。特にレース開始直後の最初の1時間の選手たちの平均時速は約70㎞/を記録。

第12ステージに続いて、この高速レースを制したベテランのフィリップ・ジルベール(Philippe Gilbert/ Deceunink-Quick Step )選手も、レース後に次のように語ったほどでした。

自分もプロの自転車選手として、いろいろなレースを走ったけど、ここまで速いレースは体験したころがない。今日のレースは一生記憶に残ると思う。

実は、この高速レースの影響を最も強く受けたのが、「グルペット」と呼ばれる選手たちの集団でした。ブエルタ・エスパーニャは3週間に渡るレースなので、日によっては、体調の良くない選手が複数いることも珍しくありません。

そうした選手たちは、その日の制限時間内での完走を目指して集団を形成します。それが通称「グルペット」と呼ばれる集団です。


ミケル・ビズカラ(Mikel Bizkarra/Euskadi Basque Country Murias)選手

第17ステージは、レース全般がハイペースだったため、いつもはのんびりムードの支配する「グルペット」の選手たちも、終始ハイペースでのレースを強いられました。この日グルペットにいたミケル・ビズカラ(Mikel Bizkarra/Euskadi Basque Country Murias)選手は、

制限時間内にゴールにたどり着けないかもしれない、って思いながら走ってた。すごく怖かった。

とレース後にコメント。3週間のレースの恐ろしさを十分に味わったようでした。

プロのサイクリストと甘い物の関係は? 第19ステージ


第19ステージのトレドの登りを制したレミ・カバニャ (Remi Cavagna/Deceunink-Quick Step) 選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

第19ステージは、城壁の町アビラからスペインの古都トレドへと南下する、風光明媚な2都市を結ぶ165.2㎞のコース。細かいアップダウンはありますが、レース前半の3級山岳を超えた後には難しい登りのないコースです。

この日のトレドのゴール手前500mには石畳のカーブの多い上り坂が、選手たちを待ち受けました。この登りを一番最初にかけ上がってきたのは、今年ブエルタ初出走のレミ・カバニャ (Remi Cavagna/Deceunink-Quick Step) 選手。

リーダージャージのプリモシュ・ログリッジ(Primož Roglič/Jumbo-Visma)選手も総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(Alejandro Valverde/Movistar)選手と同じグループでゴールしました。


メイン集団のゴール。Photo by Yukari TSUSHIMA.

ここまで来ると、レースも終盤。選手たちの疲労も限界を超えてきます。この日数人の選手がゴール後にお菓子を食べている様子が見られました。

スプリントで今年のブエルタでステージを2勝しているサム・ベネット(Sam Benett/Bora Hansgrohe)選手はレース終了直後、ハリボのくまさんグミでエネルギー補給を図ります。


ハリボを食べるサム・ベネット選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

一方、シルバン・ディリエル(Silvan Dillier/AG2R La Mondiale)選手の左手に握られているものは、イチゴ味のソフト・キャンディーです。


シルバン・ディリエル選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

やはり、甘い物の方が疲れた選手の体のエネルギーに変わりやすいのでしょうか。選手たちの意外な一面を垣間見ることができた、トレドのゴール地点でした。

マドリードでのスプリントは若きオランダ人の手に。第21ステージ


マドリードの周回コースにて。Photo by Yukari TSUSHIMA.

最終日のレースは、マドリードの南のフエンラブラダをスタートし、プラド美術館前のシベーレス広場を7周するサーキット・コース。例年通り、リーダージャージを着たログリッジ選手を擁するジュンボ・ビズマが先頭で、サーキットコースに入ってきます。

山岳ジャージ争いを演じたアンヘル・マドラゾ(Ángel Madrazo/Burgos BH)選手とジェフリー・ボーチャード (Geoffrey Bouchard/AG2R Le Mondiale))選手が、並んで走っていたりします。


今年の山岳賞争いの主役の2人。マドラゾ選手(左)とボーチャード選手(右から3人目)。Photo by Yukari TSUSHIMA.

この日は、スプリンターにとって、最後の見せ場となります。マドリード・ゴールを制したのは、オランダ人スプリンターのファビオ・ヤコブセン(Fabio Jakobsen/ Deceunink-Quick Step)選手。

ステージ終了後の記者会見で、“なぜオランダ人選手は、自転車レースでよい成績を上げることができるのか。” という質問に対して、彼の回答は、

50%はその時のレースで運がよかった、ということ。残りの50%は、国土が平らで、自転車に乗る人が多くて、小さな自転車クラブがたくさんあるから。


記者会見中のヤコブセン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA.

今年のブエルタで、チームとしては念願のステージ優勝を果たしたブルゴスBH。2006年のチーム創設から、13年の年月をかけてのステージ初制覇でした。8人全員がゴールにたどり着き、近年にはないほどのチームの喜びようが非常に印象的でした。


ブルゴスBHは8人全員がマドリードのゴールに。Photo by Yukari TSUSHIMA.

比較的早いうちに、表彰台の優勝者(ログリッジ選手)と2位(バルベルデ選手)が確定した今年のブエルタ。しかし、高温から大雨、強風、そして雹という天候の急変に、体調を悪化させた選手も少なくはありませんでした。


来年のブエルタ・エスパーニャは、もう始まっています。Photo by Yukari TSUSHIMA.

来年のブエルタ・エスパーニャは、8月14日、オランダのユトレヒトからスタートします。今年の第21ステージが終わったこの日から、2020年のブエルタ・エスパーニャへ向けた準備が始まりました。