スプリント持久力を測定する「ウィンゲートテスト」って何?
DOスプリント持久力を測定する「ウィンゲートテスト」って何?
陸上短距離や競泳、スピードスケートのような競技は、全力で走りながら、そのスピードをいかに維持するかが勝負を分けるポイントになってきます。
速い速度を維持する能力を測定する方法として、「ウィンゲートテスト」という測定が行われます。
ウィンゲートテストを行うと、どれだけ多くのエネルギーを体内で作ることができるかといったことや、トップスピードをどれだけ維持することができるのか、といったことが分かります。
また定期的に測定することで、最大パワーがどの程度向上しているのか、スプリントを維持する能力がしっかりついているのか、といったことも分かります。
今回は、ウィンゲートテストはどのように実施し、どのような分析を行うのか見ていきましょう。
30秒間全力のスプリントを行う
簡単に説明すると、ウィンゲートテストは、30秒間全力で自転車を漕ぐというテストです。30秒間自転車を漕いでいる間のパワーを計測し、そのパワーを分析に用います。
ウィンゲートテストでは、「パワーマックス」という装置を利用します。パワーマックスは、ジムに置いてあるエアロバイクのような装置で、ペダルの負荷を調節できたり、ペダルにかかるパワーを計測することができます。
ウィンゲートテストを行う際は、自分の体重の7.5%の負荷を設定します。例えば体重が70kgの場合は5.25kgの負荷をかけて30秒間全力でペダルを漕ぎます。
クレアチンリン酸系・糖分解系能力を評価する
私たちは、糖質と脂質を分解してエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使って体を動かしています。
この他に、クレアチンリン酸という物質からもエネルギーを得ています。クレアチンリン酸はダッシュをしたり、ウェイトリフティングのように急速に重いものを持ち上げたりする際にメインのエネルギー源として使われます。
ウィンゲートテストのように30秒間全力でダッシュを行うような運動では、始めの10秒間はクレアチンリン酸がメインのエネルギー源として使われ、後半は糖がメインのエネルギー源として使われます。
そのためウィンゲートテストでは、クレアチンリン酸からどれだけ大きなエネルギーを得ることができるのか、どれだけ糖を分解し高いパワーを維持できるのかといったことが分かります。
パワーが足りないのか、パワーを維持できないのか
ウィンゲートテストはどのように測定が行われ、どのような分析が行われるのでしょうか。
測定方法としては、先ほど少し紹介したように、パワーマックスを使い体重の7.5%の負荷をかけて全力でペダルを漕ぐ、という測定を行います。この測定中にペダルにかかっているパワーを計測します。このパワーを分析に用います。
分析項目としては、30秒間の平均パワー、最大パワー、最大パワー到達時間、疲労指数が用いられます。
30秒間の平均パワーはこのテストの総合的なパフォーマンスを示す数値で、この数値が大きいほど一定の時間で大きなパワーを発揮できるということになります。
最大パワーはクレアチンリン酸系からのエネルギー獲得量を表す数値で、この数値が大きいほどより大きな力を発揮できることを意味します。
最大パワー到達時間は、最大パワーを発揮するまでにかかった時間で、この時間が短いと瞬発的に大きなパワーを発揮できることを意味します。
疲労指数は、どれだけパワーを維持できたかを表す数値です。30秒間の後半には疲れてパワーが低下しますが、その疲労にどれだけ耐えられるかを表す数値です。
平均パワーや最大パワー、最大パワー到達時間は得られた時間-パワー曲線の結果から容易に結果を得ることができますが、パワー低下率には少し計算が必要です。
疲労指数の計算にはいくつかの方法がありますが、よく用いられる式としては、30秒間のパワーを5秒ごとに6つに区切り、最も低い区間のパワーを最も高い区間のパワーで割った値が採用されます。
全区間のパワーを考慮したい場合は、最も低い区間のパワーを6倍した値をそれぞれの区間のパワーの和で割った数値を採用します。
疲労指数が改善されると、後半までトップスピードを維持することができるようになったと言えます。陸上や競泳などの競技では非常に重要な数値になります。
これらの結果をトップの選手や同じチームの選手と比較することで、自分に何が足りていないのかが見えてきます。例えば疲労指数はよい結果だったが最大パワーが他の選手よりも低い場合、より大きなパワーを発揮できるとさらにタイムを縮めることができると考えられます。
また最大パワー到達時間が悪かった場合は、この数値を改善することでより速くピークのパワーに到達することができ、このパワーを維持できればさらにタイムを縮めることができます。
このようにウィンゲートテストを行うことで今の自分が改善すべき能力が分かり、どのようなトレーニングに取り組めばいいのかが見えてきます。
ただ闇雲に練習をしても期待した結果が得られるとは限りません。必要な能力について測定し、今の自分に何が足りていないのかを知ることで自分が取り組むべき課題が見えてきて、トレーニングに活かすことができます。