パワー系種目に持久的トレーニングは必要?

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パワー系種目に持久的トレーニングは必要?

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一言にトレーニングといっても様々な方法があります。例えば、筋トレのように筋肉に大きな負荷をかけるようなトレーニングや、ジョギングのように心肺機能を高めるためのトレーニングもあります。

トレーニングの内容は自分が行っている競技によって決めていかなければなりません。とにかく全てのトレーニングを行っておけば、間違いはないだろう、という考えはよくありません。

よく知られているものとして、持久的トレーニングが挙げられます。持久的トレーニングは、実は筋トレの効果を減衰させることが知られています。

今回はどうして持久的トレーニングを行うと、筋トレの効果が減少するのか、陸上短距離やウェイトリフティングなどパワー系の競技を行っている人は、どのようなトレーニングを行えばいいのかを紹介していきます。

持久的トレーニングは筋トレの効果を阻害する

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まずは、持久的トレーニングがどうして筋トレの効果を減衰させるのかをお話したいと思います。

筋トレを行うと筋肉が大きくなったり、持久的トレーニングを行うと筋肉の中のミトコンドリアが増えたりしますが、そうした適応はどうして起こるのでしょうか。

そのメカニズムの一つとして、mTORとAMPKという2つのタンパク質が挙げられます。

筋トレを行うと、mTORというタンパク質が活性化されます。このタンパク質が活性化されると様々なタンパク質が活性化され、筋肉の増殖が起こります。

一方、AMPKは持久的トレーニングを行うことで活性化されます。AMPKが活性化されると、こちらもその下流にある様々なタンパク質を活性化させ、ミトコンドリアの増殖が起こったり、血管新生が起こったりして運動を持続する能力が向上します。

このように筋トレと持久的トレーニングとでは異なる経路を介して体への適応が起こります。

一見それぞれ別の経路で適応が起こるので、筋トレと持久的トレーニングを同時に行っても、特に関係がないように見えますが、実はAMPKはmTORの働きを抑えることが分かっています。

つまり筋トレを行いmTORを活性化させても、持久的トレーニングを行うと、AMPKが活性化されてmTORの働きが抑えられてしまうので、せっかくトレーニングを行ったのに何も効果が得られない、ということになります。

誤解を招かないように付け加えておきますが、効果が抑えられるのは筋トレのみです。持久的トレーニングによりミトコンドリアの生合成や血管新生が引き起こされたりしますが、筋トレにより持久的トレーニングの効果は阻害されません。

筋トレと持久的トレーニングとを切り離す

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筋トレと持久的トレーニングを同時に行うと、AMPKが活性化されてしまうので持久的トレーニングの効果が抑えられてしまます。それでは筋トレの効果を得ながら持久的トレーニングもしっかり行いたい、という場合はどうすればいいのでしょうか。

まずは、筋トレと持久的トレーニングの日程を別々にすることが挙げられます。別の日程で行うと筋トレを行った日はmTORのみが、持久的トレーニングを行った時にはAMPKのみが活性化されるので、mTORの活性が抑えられる、ということは起こらずしっかり筋トレの効果を得ることができます。

同じ日に筋トレと持久的トレーニングを行いたいという場合は、筋トレと持久的トレーニングの時間を6時間空けるようにしましょう。

トレーニングを行うと、mTORやAMPKが活性化されますが、1日間活性化されている訳ではありません。mTORの活性化は3〜6時間ほどで元に戻ることが分かっています。そのため、mTORの活性化が元に戻った6時間後であれば持久的トレーニングを行っても筋トレの効果は大きく阻害はされません。

競泳や陸上中距離などといった種目では、パワーを高めるような筋トレを行いながら、パワーを維持するための持久的なトレーニングを行う必要があります。そうした競技では筋トレの日と持久的トレーニングの日を分けたり、朝練、夕練といったように練習を2回に分けて両方のトレーニングを取り入れるのがオススメです。

パワー系種目は持久的トレーニングはなくてもOK

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ウェイトリフティングや陸上短距離のように、短時間で瞬発的にパワーを発揮する競技では、その瞬間にどれだけ大きなパワーを発揮できるかが求められ、パワーを持続する能力はそれほど求められません。

そのため、極論持久的トレーニングは行わなくても大丈夫です。これまで説明してきたように、持久的トレーニングを行うと筋トレの効果が抑えられてしまうので、逆にこうしたトレーニングは行わない方がいいとも言えます。

パワー系種目では、とにかく筋肉が発揮できるパワーを高めることを優先に考えましょう。トレーニングの内容としては、筋肥大を狙ってある程度の重量で10回ほど反復するようなトレーニングや、筋肉の収縮速度を高めるための速度を意識したトレーニング、運動単位の働きを高めるための高重量でのトレーニングを組み合わせるとよいです。

このように競技に必要なトレーニングは、行う競技の特性によって変わってきます。自分が行っている競技には、どのような能力が必要で、その能力を向上させるにはどのようなトレーニングが必要なのかを見極めてトレーニングを行いましょう。

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