ヨーロッパで今年最初のステージレース 「ボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナ」
WATCHヨーロッパで今年最初のステージレース 「ボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナ」
2月上旬にスペイン・バレンシア地方で、ブエルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナが開催されました。今回のレースは、去年のロードレース界の流れを引き継ぎ、若い選手が活躍したレースになりました。このレースの様子を、最終日に並行開催された女子のレースも含めて、レポートします。
TOP写真。今年のブエルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナを総合優勝したタデイ・ボカチャル選手(Tadej Pogačar/UAE Team Emirates)Photo by Yukari TSUSHIMA.
クライマー有利のコース。しかし、スプリンターの見せ場もあり。
スタート前に談笑するイバン・ガルシア・コルティナ選手(Iván García Cortina/ Bahrain – McLaren)とルーベン・フェルナンデス選手(Rubén Fernández/ Fundación Euskadi)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
例年であれば、冷たくて強い北風が吹きつける、このブエルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナ。しかし、今年は5日間とも今年は穏やかな天候の中で開催されました。
今年の出走チームは、全部で21チーム。12のワールドツアーチームと、7のプロコンチネンタル、2つのコンネンタルチームという、ワールドツアーチームが参加チームの大半を占める豪華なレースになりました。
5つあるステージのうち、スプリンター向けステージが3ステージ、山岳ステージが2ステージという内訳です。特に第4ステージの登りゴールとなるシエラ・デ・ベリナ(Sierra de Berina)は、今年初めて登場する登りで、ゴール前3㎞で斜度20%が何度も現れる厳しいもの。しかし、意外と選手たちはこの登りを知っている選手が少なくありません。
というのも、この時期各チームはバレンシアの南部でトレーニングキャンプをしており、そうした選手ったとって、シエラ・デ・ベリナの登りはトレーニングでよく使う登りの一つなのです。
今年のこのレースの第1ステージのスタート地点は、バレンシア地方の北にあるカステリョン(Castellón)。曇り空でも、寒さは感じないこの日、シーズンインした選手たちがスタートラインに集まりました。
シーズン・イン直後の選手たちの調子は?
スタート前のアレハンドロ・バルベルデ選手(Alejandro Varverde/ Team Movistar)。Photo by Yukari TSUSHIMA.
この時期の選手たちは、ちょうど冬季の走り込みのトレーニングを終わって、レースシーズンをスタートしたばかり。
しかし、選手によって年間のスケジュールが異なるので、特に夏のレースに標準を合わせている選手たちの体にはまだまだ余裕がある一方で、シーズン開始から積極的に勝利を狙っていこうという選手はすでに相当体も細く、脂肪もほとんどない体の状態となっています。
この時期の選手の体形を見ると、今年はどのレースの優勝を狙っているのか、かなり正確に予想できるのではないでしょうか。
スプリントは僅差の勝負
最終第5ステージのスプリント。Photo by Yukari TSUSHIMA
前述のとおり、今年のボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナに設定されたスプリンター向きのコースは3ステージ。
第1ステージのカステリョン・ビリャレアルのコースと、第3ステージのオリウエラ・トレビエハの2ステージをダイアン・グロエネベーゲン選手(Dylan Groenewegen/Jumbo-Visma)が制し、最終第5ステージをファビオ・ヤコブセン選手(Fabio Jakobsen/Deceuninck – Quick Step)が制する形になりました。
第1ステージと第3ステージを制したグロエネベーゲン選手。Photo by Yukari TSUSHIMA
特に、第1ステージのスプリントは、僅差での勝負となりました。前述のとおり、このステージを勝ったのはグロエネベーゲン選手だったのですが、アシストをしていたデセウニック・クイックステップのアシストの選手が、ヤコブセン選手が勝ったものと勘違いするほどの、きわどい勝負となりました。
やはり登りが総合優勝を決めた
第4ステージのスタート前。この時点でリーダージャージを着ていたジャック・ヘイグ選手(Jack Haig/Mitchelton Scott)。Photo by Yukari TSUSHIMA
しかし、このボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナの総合優勝の行方を左右するのは、やはり山岳コース。今年はトレントからクエーリャへ向かう第2ステージと、カルぺからシエラ・デ・ベルニアの登りゴールに向かう第4ステージが、山岳ステージとなりました。
今年、この山岳ステージを両方とも制したのがUAEエミレーツのタデイ・ボカチャル選手です。そして最終的に、彼が今年のボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナを総合優勝することになりました。
昨年はブエルタ・エスパーニャでもステージ優勝をしたボカチャル選手。今年も昨年の好調さを維持し、どんどんレースで勝ち星を積み重ねていくつもりであることが見て取れました。
女子のレースは與那嶺恵理選手がチームメイトの勝利をアシスト
スタート前のアレ・BTCリュブリャナ。Photo by Yukari TSUSHIMA
女子のロードレースシーズンも、バレンシアからスタートします。男子のボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナの最終日に、「ボルタ・ア・ラ・コムニタット・バレンシアーナ・フェミナ(Volta a la Comunitat Valenciana Femina)」という女子の1DAYレースが開催されるのです。
2回目の開催となる今年のレースに、アレ・BTCリュブリャナ (Alé BTC Ljubljana) の與那嶺恵理選手が出走しました。この数か月、このレース会場からも近いアリカンテでトレーニングキャンプをしていた與那嶺選手。今年最初のレースをバレンシアで走ることになりました。
今回この女子のレースに出場したのは20チーム。與那嶺選手のチームメートであるマルタ・バスティアネリ選手(Marta Bastianelli) が最大の優勝候補と目されていました。
というのも、この日のコースは登りらしい登りがほとんどない平坦コース。このレースに出場するスプリンターのなかでもずば抜けた強さを持つ、バスティアネリ選手に注目が集まるのも、当然のことでした。
レースが始まってみると、與那嶺選手をはじめとするアレ・BTCリュブリャナの選手たちが、しっかりとレースをコントロール。そのため、抜け出しを図る選手たちはすべて、メイン集団へと引き戻されてしまいます。
結局、逃げる先頭集団がほとんど形成されないまま、選手たちはゴール地点となるバレンシア市内へと向かいます。カーブの多い市街地を曲がり切った後は、バレンシア市庁舎前での、スプリント。このスプリントを危なげなく制したのは、やはりバスティアネリ選手でした。
作戦通りに今年初勝利を手にしたアレ・BTCリュブリャナ。與那嶺選手自体も、集団ゴールの61位という結果でした。
レース終了後、チームメイトと談笑する與那嶺選手(写真中央)。Photo by Yukari TSUSHIMA
レース後與那嶺選手にお話を伺ったところ、以下笑顔でお話をしてくれました。
昨日の夜、マルタ(バスティアネリ)選手が、「ゴール前、私を他のスプリンターの真後ろにおいてくれれば、私明日は勝てるから」なんて言ってたんですよ。レース後半に何人か逃げ集団を作りたそうな選手がいたので、私はそれについて行って、メイン集団に引き戻すのが、今日の私の役割でした。やっぱり勝てる選手のアシストするのって、楽しいですよね。