コロナワクチン接種義務化とスポーツの関係について

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コロナワクチン接種義務化とスポーツの関係について

スポーティ

新型コロナウイルスのワクチン接種が広がるにつれて、接種することを義務づける組織や自治体が米国内で増えてきました。体質や宗教的な信条など、様々な理由でワクチン接種を拒否する人は一定数存在します。そして、少なくとも法律上は任意であるはずです。それにもかかわらず、ワクチン接種証明書を掲示することが、仕事をするためだけではなく、レストランや店舗に立ち入るための必須条件になっている地域もあります。

ちなみに日本では、「新型コロナウイルスワクチンの接種を拒否したことのみを理由として解雇、雇止めを行うことは許されるものではありません」と厚生労働省のホームページ*¹にあります。

*¹新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q10-11

つまり、現時点の日本ではワクチン接種の義務化は差別につながるとして許されていないわけですが、海外のスポーツ界ではワクチン摂取をした選手のみが出場できるルールが設定されるなどしています。以下にいくつかの例を挙げます。

TOP写真:American flag with syringe and Covid-19 vaccine” by wuestenigel is licensed with CC BY 2.0

ワクチン未接種には重いペナルティ NFL

2009 Green Bay Packers NFL Schedule Wallpaper” by RMTip21 is licensed with CC BY-SA 2.0

米国でもっとも人気が高いアメフトのプロリーグ、NFLではワクチン接種を義務化はしていませんが、組織として「強く奨励」しています。ワクチン未接種の選手は、シーズン中毎日検査を受けなくてはならず、施設内ではマスクを着用を求められ、3人以上の集まりにも参加することができません。事実上の義務化と言えるかもしれません。

それだけではなく、新型コロナウイルスに選手や関係者が感染した場合、ワクチンを接種しているかどうかでペナルティの重大さが変わってきます。

ワクチンを接種した感染者は、2度の検査で陰性と診断されると試合に出場できますが、未接種者の感染者はそれに加えて、10日間の強制隔離となります。ワクチン未接種の選手には欠場期間の報酬も支払われません。

さらに、もしワクチン未接種の選手がチーム内にクラスター感染を引き起こした場合、感染者を出したチームは棄権となり、試合は負けとなります。そして特筆するべきことに、両チームの選手たちにはその週の報酬が支払われないとルール上に明記してあります。NFLのシーズンは17週しかありませんので、1週間分の減俸はかなりのインパクトがあります。

つい最近では、2020年度MVPのアーロン・ロジャース(グリーンベイ・パッカーズ)が感染しました。そしてロジャースがかねてからワクチン反対の立場を取っていたことが、大きな騒動に発展しました。ロジャースは知り合いの医師から「ホメオパシー」(同質療法)と呼ばれる治療を受け「免疫を得た」と発言していましたが、その発言と姿勢が非科学的だという批判にさらされ、リーグから罰金を科せられただけではなく、パートナー契約を結んでいた医療機関からスポンサーシップを失うという事態に陥いりました。

ワクチン未接種のためチーム参加が許されない NBA

“NBA All-Star Game 2010” by rondostar is licensed with CC BY-SA 2.0

バスケットボールの全米プロリーグ、NBAもワクチン接種を義務化していませんが、NFL同様に「強く奨励」しています。

ニューヨークに本拠地を置くブルックリン・ネッツのスター選手、カイリー・アービングはかねてからワクチン接種を拒否することを公言していました。ところが、ニューヨーク州では公共施設内で活動するためにワクチン接種を義務つけているため、アービングはホームゲームに出場することができません。つまり、アービングは約40億円とも言われる年俸の半分を、ワクチンを接種しないことを理由に失うことになります。

さらに10月12日、ネッツのGMであるショーン・マークス氏は、アービングがワクチンを接種するまで練習と試合を含む一切のチーム活動に参加する資格を得ることができない、と発表しました。

ワクチン未接種のジョコビッチは全豪オープンに出場できるか WTA

2008 Australian Open Tennis, Rod Laver Arena, Melbourne” by MD111 is licensed with CC BY-SA 2.0.

テニスの4大メジャー大会の1つである全豪オープンを開催するオーストラリア・ビクトリア州は、州内のプロスポーツ選手に対して新型コロナウイルスのワクチン接種を義務化しています。

それに対して、現在世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)はワクチンを接種したかどうかについての質問に回答することを拒否しています。そして一般論として、ワクチン接種を強制することはよくないとも発言しています。そのため、来年1月の同大会に出場できるかどうかが現時点で未定となっています。

11月20日、大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏は国内・海外を問わず全選手はワクチン接種が出場への条件となることを明らかにしました。

ワクチン未接種を理由にコーチングスタッフが集団解雇 大学アメフト

“NCAA Football: Tulsa at Iowa State” by GoIowaState is licensed with CC BY-SA 2.0.

ワシントン州立大学のアメフトチームでヘッドコーチを務めていたニック・ロロヴィッチ氏は新型コロナウイルスのワクチン接種に反対する意見を明言していました。同州では公立教育機関に勤務するすべての職員にワクチン接種を義務つける州法を10月18日から発効させたため、ロロヴィッチ氏と4人の部下は同大学から解雇されてしまいました。

地元シアトル・タイムズ紙によると、ロロヴィッチ氏の年俸は200万ドル(約2億2708万円)であり、契約はあと3シーズン残っていたため、360万ドル(約4億870万円)が未払いになるということです。ちなみに、ロロヴィッチ氏の代理人は、氏の解雇は不当であるとして、同大学を告訴すると発表しています。

大学のコーチがそれほどの巨額な報酬を得ていることもさることながら、そのような大金を失うことになってもワクチン接種を拒否するという信念の強さにも驚きます。

ちなみに私も高校部活動のコーチをしていますので、2021年シーズン開始前にワクチン接種を終わらせることが義務であるとの通達を受けました。義務であると同時に、教育関係者であるとの理由で、一般より早い時期に接種する資格も得られました。私自身には、ワクチンに対して特に賛成も反対もするほどの強い意見はありません。ですからワクチンを接種することに自分の中でまったく葛藤は起こりませんでした。

しかし、もしそうでなければ、信念を貫いて職を失うか、あるいは職を守るために信念を曲げるか、そんな厳しい選択を迫られていたはずです。

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