断続的断食のダイエット効果を否定する論文が次々と発表

断続的断食のダイエット効果を否定する論文が次々と発表 DO

断続的断食のダイエット効果を否定する論文が次々と発表

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女優のジェニファー・アニストンは断続的断食の熱心な提唱者で、自らのSNSでその効果を語るだけはなく、専門の本*¹まで書いています。

断続的断食とは食べ物をまったく摂取しない時間帯を定期的に、且つ連続して設けることです。逆に言えば、1日のなかで食べるという行為をある時間帯に限定するわけです。栄養摂取を一定期間行わないことで、体内消化器官の負担を軽減し、デトックス効果や脂肪燃焼の促進が期待できるのだそうです。

アニストンだけではなく、他にも多くの有名人が断続的断食を取り入れていることで(あるいは取り入れていると発言したことで)、アスリートからダイエットに励む一般人まで、新たなダイエット法や健康法として広く流行してきましたが、その効果に疑問を呈する論文が最近いくつか発表されました。

TOP写真:”Intermittent fasting, redux” by Jose C Silva is licensed under CC BY 2.0.
バナー写真:Eating healthy food between intervals of intermittent fasting” by marcoverch is licensed under CC BY 2.0.

参考文献
*1:Intermittent Fasting for Women Over 50 Hardcover
>>https://www.amazon.com/dp/1914119118/

動物実験では効果が証明。しかし、人間の臨床試験では別の結果が

“Time to control weight. Diet or healthy food concept” by wuestenigel is licensed under CC BY 2.0.

2020年9月にカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校の研究者らが発表した研究*²は断続的断食の「ヒト」に対する効果を調べることを目的に、医学的な見地から臨床試験を行いました。

113人の被験者(肥満傾向のある成人)を2グループに分け、1グループは通常の1日3回の食事を摂り、別グループは正午から午後8時までの間にしか食事を摂らない断続的断食(16:8)を行いました。12週間の実験の結果、断続的断食を行ったグループは通常の食事をしたグループと比較して、平均して約200グラムしか体重減効果に差が生じませんでした。

論文著者たちは結論として断続的断食のダイエット効果を否定しました。誤解が生じた原因はそれまでの実験がマウスを使った動物実験が中心であったからだと推測されます。研究者のひとりは自分自身が断続的断食を長年実行していたそうで、ショッキングな結果だったとも述べています。

参考文献
*²: Effects of Time-Restricted Eating on Weight Loss and Other Metabolic Parameters in Women and Men With Overweight and Obesity
>>https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2771095

カロリー総摂取量を制限する伝統的ダイエット法との違いはあるか

“vegetables” by rick ligthelm is licensed under CC BY 2.0.

2022年4月付のマサチューセッツ医学ジャーナルに断続的断食のダイエット効果を否定する新たな論文*³が発表されました。

中国広東省広州市にある南方医科大学の研究者らが発表したこの研究では、139人の被験者が対象になり、12か月という長い期間で観察が行われました。通常の食事を摂るグループと断続的断食を行うグループ(食事を摂る時間帯は午前8時から午後4時まで)に分けられ、両グループとも1日のカロリー総摂取量を制限されました。男性で1,500 ~ 1,800カロリー、女性で1,200 ~ 1,500カロリー、ということですので、かなり厳しいものだと言えるでしょう。

その結果、両グループとも平均して6 ~ 8キロほどの体重減が認められました。しかし、通常の頻度で食事をしたグループと断続的断食を行ったグループの間に有意な差はありませんでした。BMI、胴囲、体脂肪率 などについても同様だったそうです。

論文著者らは結論で、「断続的断食はカロリー摂取量を制限する方法と比較して、体重減や体脂肪率減少などの健康効果は特に大きくない」と述べています。

身も蓋もない結論ですが、どうやら食べる量を減らしさえすれば、特に食べる時間を工夫してもしなくても、人は痩せるようです。

参考文献
*3:Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss
>>https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2114833

「自然に」摂取カロリーを減らすことはできるか

“The right food for a fat loss / muscle gain diet” by Conny Sandland is licensed under CC BY 2.0.

ダイエットの王道は摂取カロリーを消費カロリーより少なくすることであることは誰でも知っています。それにもかかわらず、様々なダイエット法が流行と衰退を繰り返すのは、どこかに「食べることを我慢しないで痩せられる」方法がないかと探し求める気持ちが人々のなかにあるからでしょう。断続的断食もそのひとつなのかもしれません。

筆者自陣も断続的断食を行っていた時期があります。体重を減らすことより、長距離を走るための耐久力を向上させることが目的でしたが、1日に食事を摂る時間帯を午前9時から午後5時までの8時間に制限していました。

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現在は朝昼晩に食べる普通の生活パターンに戻していますが、確かに断続的断食を行っていた期間中の体重は普段より数キロ程度は軽くなっていました。それが毎日飽きもせずに走ることによるものか、あるいは食事をする時間帯を制限することによるものか、原因をひとつに特定することはできませんが、少なくとも食べている時間中は我慢をしている自覚もありませんでした。

とは言うものの、1日に8時間だけという物理的な制限があると、いくら食べたくても限界があります。私はそれでも1日に3回食べていましたが、間食まではできませんでしたし、晩酌をしながらだらだらとつまみを食べ続ける、という普段の悪習慣も断ち切ることができました。

断続的断食そのものにはダイエット効果はないのかもしれませんが、食べる時間帯を意識することによって、結果としてカロリー消費量が「自然に」少なくなることはあるのではないでしょうか。個人的にはそう考えています。

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