「何がダメなの?」アメフト観戦初心者が戸惑う反則とルールの超基本編

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「何がダメなの?」アメフト観戦初心者が戸惑う反則とルールの超基本編

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アメリカンフットボール(以下、アメフト)に詳しくない人が口を揃えて言うのが、「ルールが複雑で分かりにくい」という点です。とくに難しく感じられるのが「反則」と、それに伴う「ペナルティ」ではないでしょうか。

試合中に応援しているチームのビッグプレーがあり、「やったー!」と大喜びをしていると、どこからか黄色いフラッグがフィールドに投げ込まれ、審判が集まり協議を始める。やがて主審がアナウンスをしたかと思うと、スタンドはどよめき、ボールの位置が大きく変わったり、プレーがやり直しになったりする。

そんなアメフト「あるある」も、ルールを知らないと、なぜそうなったのか分からず、ただただ混乱してしまいます。私もテレビ観戦をしていると、「何があったの?」「どうしてダメなの?」と、あまりアメフトに詳しくない妻に訊ねられることはしょっちゅうです。

しかし、反則とペナルティを理解すると試合観戦の面白さはぐっと増します。なぜなら、そこにはチーム同士の駆け引きや選手の心理が反映されているからです。今回は、アメフトの試合でよく見られる反則とペナルティを、あくまで観戦初心者向けに解説していきます。下の2つの記事と併せて読んでもらうと、より理解しやすいと思います。

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アメフトの反則とペナルティの基本的な考え方

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アメフトにおける反則(ファウル)は、大きく分けて2種類あります。ひとつは「技術的な違反」、もうひとつは「スポーツマンシップに反する行為」です。前者は、オフサイドやホールディングのように、プレーの進行や公平性に関わる技術的なルール違反。後者は、ラフプレーや挑発行為など、プレー以外の態度や行動によって判断される反則です。

そしてペナルティは、基本的に「ヤードを進める権利を相手に与える」か「プレーのやり直しを課す」ことで成立します。アメフトはフィールド上の陣取り合戦です。わずか5ヤードの後退でも試合の流れに大きな影響を及ぼすことがあります。観戦中にフラッグが投げられたら、「どちらがどれくらい損をしたのか」を意識すると理解しやすいでしょう。

よく見られる「技術的な反則」

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1.オフサイド(Offside)

攻撃側と守備側は「ライン・オブ・スクリメージ」と呼ばれる線を境に向かい合って並びますが、守備側がスナップ(プレー開始の合図)よりも先にこのラインを越えてしまうとオフサイドとなります。ペナルティは5ヤードの罰退です。

似たような反則にフォルス・スタート(False Start)があります。攻撃側選手がスナップ前に動いてしまうことで、こちらのペナルティも5ヤードの罰退です。

どちらも観戦者の目には「選手が耐えきれずに飛び出した」として映るので、比較的分かりやすい反則です。

2.ホールディング(Holding)

「ホールディング」も頻繁に発生する反則です。アメフトではボールを抱えていない選手を押すことは許されていますが、相手のユニフォームをつかんだり腕を回して引っ張ったりすると反則になります。ペナルティは10ヤードの罰退です。

また、相手のヘルメットの金網をつかむ行為は「フェイスマスク」と呼ばれ、より危険性が高いため、ペナルティは15ヤードに増えます。

相撲に例えるならば、立ち合いで頭から突っ込むことも突っ張りもOKですが、回しを取ることや顔面への張り手はNGです。

アメフトは同時にプレーする人数が多いため、観戦する方からはどこで何が起きたかが分かりにくいこともあります。そういうときは、リプレーでスロー映像が流れると、つかんだ腕やユニフォームの引っ張り具合がはじめて分かります。

3.パス・インターフェアランス(Pass Interference)

パスが空中にある間、相手側の選手に対して妨害をすると「パス・インターフェアランス」となります。ボールに触れる前に相手選手を押したりつかんだりする行為が対象です。スロー映像でも反則かどうかを判別しにくいこともあり、もっとも議論の対象となりやすい反則のひとつです。

この反則のさらに厄介な点は、ペナルティが攻撃側と守備側で異なること。攻撃側の反則に対するペナルティは10ヤード罰則ですが、守備側のそれは「反則が起きた地点からのオートマチック・ファーストダウン」であることです。ときにはパスが失敗しているにもかかわらず数10ヤードを一気に進まれてしまうため、試合の流れを大きく左右することもある反則です。

主観が絡む「スポーツマンシップ関連の反則」

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1.アンスポーツマンライク・コンダクト(Unsportsmanlike Conduct)

日本語に訳すと「スポーツマンらしくない態度」。広い解釈ができるため、審判の判断に左右されるケースが多い反則です。得点後に相手を挑発するパフォーマンス、必要以上に大声で抗議する行為、あるいは相手を侮辱する言葉などが含まれます。ペナルティは15ヤードと重く、チームにとっては大きな負担です。観戦者としては「選手の感情が爆発した瞬間」として見どころの一つにもなります。

2.アンネセサリー・ラフネス(Unnecessary Roughness)

直訳すれば「不必要な荒っぽさ」。プレーが終わった後に相手を突き飛ばした場合や、無防備な選手に対して危険なタックルをした場合に適用されます。こちらも15ヤードの罰退。選手の安全を守るために導入されている反則です。

しかし、もともとアメフトはフィールド上の格闘技とも呼ばれるほど身体的接触が激しいスポーツ。どこまでが許容される「荒々しさ」であり、どこからが反則なのかは、はっきりとした線を引くことは難しいため、これもまた議論の対象になりやすい反則です。

反則が試合に与える影響

反則は単に「距離を失う」だけでなく、心理的な影響も大きく及ぼします。とくに接戦で残り時間が少ないような重要な場面で反則を犯すと、そのダメージは大きくなります。チャンスがつぶれることもありますし、ピンチを招くこともあります。ボールの位置によっては試合の流れが一気に変わることも少なくありません。

延長戦(オーバータイム)ともなれば、反則の影響はさらに重大になります。NFLの延長戦はサドンデス方式。たったひとつの得点チャンスが勝敗を分けるということは、たったひとつの反則もまた然りなのです。

まとめ

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比較的、発生頻度が高い反則を説明しましたが、むろんこれだけではありません。アメフトのルールは非常に細かく、またその種類は多岐にわたります。

そのすべてを暗記しなくても、アメフト観戦を楽しむことは十分にできます。反則が発生するたびに主審がその内容とペナルティをアナウンスしてくれますので。

それでも、「なぜその反則が取られたのか」「それによってどちらがどれだけ有利になったのか」を意識すると、アメフト観戦はもっと面白くなります。ルールを熟知しているはずの選手がなぜ反則を冒してしまうのか。それを想像することで、アメフトは単なる力とスピードの勝負ではなく、心理戦と駆け引きの要素が浮かび上がってきます。

次にアメフトの試合を観るときは、ぜひフィールドにフラッグが投げ込まれた瞬間にも注目してみてください。それは単なる中断時間ではなく、ドラマ性を盛り上げるハイライトかもしれないのです。

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