レッドブルの略じゃない!躍進続く嫌われ者「RBライプツィヒ」とは

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レッドブルの略じゃない!躍進続く嫌われ者「RBライプツィヒ」とは

スポーティ

現在、ブンデスリーガで昇格組ながら王者バイエルンに次ぐ2位と躍進を遂げているクラブがあります。そのクラブとは、RBライプツィヒ。9節を戦い終えた現在6勝3分でいまだ無敗と、日増しにその注目度が高まっています。

躍進を遂げたクラブといえば昨シーズンプレミアリーグで優勝を遂げたレスターシティが記憶に新しいですが、このクラブは少し事情が違います。ドイツ国内では「悪の帝王」と呼ばれるなど、アンチの多い(=嫌われ者の)RBライプツィヒとは一体どんなクラブなのでしょうか。

わずか7年で5部から1部へ

ライプツィヒはドイツ東部ザクセン州にある都市です。バッハやメルテンスゾーンら偉大な音楽家のゆかりの地で、日本からは滝廉太郎が留学に訪れるなど「音楽の街」として知られてきました。

ドイツ地図内濃い赤の地点がライプツィヒ

濃い赤の地点がライプツィヒ

さらには哲学者で作家のニーチェやゲーテ、さらには現ドイツ首相のアンゲラ・メルケルらが学んだライプツィヒ大学があり、ベルリンの壁崩壊から東西ドイツ統一までの歴史的1ページの発端となった住民運動発祥の地としても有名です。

そんな歴史と伝統のある街にあるのが、現在ブンデスリーガで躍進を続けているRBライプツィヒ。2009年に当時ドイツ5部に所属していたSSVマルクランシュタッドが買収され、現クラブへと変貌を遂げました。

初年度に5部リーグで優勝し昇格。その後2年間はあと一歩のところで昇格を逃しますが、監督としてホッフェンハイムを2年で3部から1部へと導いたラルフ・ラングニックが2012年にスポーツディレクターに就任すると、その年の4部リーグで優勝。その後も勝ち星を積み重ね、あれよあれよという間に1部リーグまで上がってきました。地域リーグ以下のディビジョンからスタートし、わずか7年で1部リーグまで上り詰めたことは本当に驚きです。

これまでの活躍や現在1部に所属する唯一の旧東ドイツにあるチームということもあり、今シーズン本拠地であるレッドブルアレナには平均で4万人が訪れるほどの熱狂っぷり。Jリーグの平均観客数が1万7000人程度であることを考えれば、その凄さが分かると思います。

しかしこの観客数の多さとは裏腹に、現在RBライプツィヒは「悪の帝王」と呼ばれ、ドイツで一番嫌われているチームでもあるのです。そこにはチーム名にある“RB”やこれまでの快進撃にも関係しています。

RBライプツィヒスタジアム(レッドブルアレーナ)
Photo by Valentin B
ライプツィヒの本拠地であるレッドブルアレーナは2015/16シーズン、芝の状態で評価される「ピッチ・オブ・ザ・イヤー」においてブンデスリーガ2部で1番の評価を獲得。2位が前年同賞の1位を獲得したアリアンツアレーナ(バイエルンミュンヘンと1860ミュンヘンのホームスタジアム)であることを考えると、ドイツ最高のスタジアムと言えます。

“RBライプツィヒ”という名前が嫌われ者の理由!?

エンブレムから分かるようにRBライプツィヒは、オーストリアの飲料メーカーであるレッドブルが運営するクラブです。

RBライプツィヒエンブレム

Photo by PercyGermany

これまでレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)やニューヨーク・レッドブルズ(アメリカ)を運営してきたレッドブルにとってRBライプツィヒは4つ目のクラブとなりました。

当然クラブ名にあるRBはレッドブルの略称かと思いますが、実はそうではありません。ここに嫌われている理由の一つがあります。

ブンデスリーガでは、企業名を宣伝目的でクラブの名前に入れることや企業が49%を超えるオーナーシップを持つことを禁止しています。(例外もありヴォルフスブルクなどは創立の経緯から認められています。)

そこでレッドブルはこのルールに抵触しないため、本来レッドブルの略称であるRBを「Rasen Ballsport(芝生の球技)」の意味であると主張し、RBライプツィヒというクラブ名を認めさせました。この効果は非常に大きく、レッドブルに多くの利益をもたらしたと言われています。

こうしたクラブ名の由来に加え、毎年のように大金を投じて選手を獲得する商業的なクラブの姿勢が、健全な経営で地域に根付く伝統的なクラブを愛するドイツのサッカーファンの反発を買っているのです。

「Rasen Ballsport(芝生の球技)」という言葉、現地ではテニスのことを指すそう。企業のロゴをクラブのロゴにそのまま使えないことから太陽部分をサッカーボールにしたりと、なりふり構わない商業的な姿勢が反感を買っているようです・・・。(写真はオリバー・バーク)

有望な若手が揃う攻撃陣に注目!

そんな「悪の帝王」ですが、現在2位の実力は本物。平均年齢がリーグで最も若いチームは、プレスを高い位置から果敢に仕掛け、前へ前へとボールを運ぶ走るサッカーで無敗をキープしています。

そんなエネルギッシュなチームの攻撃陣は、有望な選手が集まるRBライプツィヒの中でも特に人材が豊富です。

ここまでチーム最多の3ゴールで並ぶのは、スウェーデン代表のミエル・フォルスベリ、オーストリア代表マルセル・ザビツァー、U-19ドイツ代表ティモ・ヴェルナー。それぞれ25歳、22歳、20歳と若く、伸びしろのある選手たちです。

この他にもU-19欧州選手権では8試合6ゴールの活躍で得点王に輝いたU-20ドイツ代表ダヴィー・ゼルケ21歳や、193cmの体格ながらアジリティにも優れたデンマーク代表ユスフ・ポウルセン22歳など各国を代表する若手選手が揃っています。

2015/16シーズンには監督も兼任したラルフ・ラングニックSD。これまでのRBライプツィヒの躍進は、戦術家として知られ「プロフェッサー(教授)」とも呼ばれている同SDによるところが大きいです。

そんな中でも特に注目すべき選手が、スコットランド代表のオリバー・バークです。今シーズン、イングランド2部のノッティンガム・フォレストから移籍してきた19歳は、ガレスベイルと比較される期待の星。188cmから繰り出されるスピードを生かしたドリブルは迫力満点です。

リヴァプールなどのビッグクラブからも注目されていた中で、自身の成長を考慮しRBライプツィヒに加入を決めた“大人な”19歳。彼のブンデスリーガでのこれからに期待しましょう。

最後にもう一人、RBライプツィヒにはあるドイツ代表選手の兄弟が所属しています。MFを務めるその名前は、ラニ・ケディラ。そうです、ユベントスに所属しているサミ・ケディラの実弟です。今シーズンはまだ出場機会がありませんが、2014年までドイツ代表の各年代に呼ばれていた実力者。22歳とまだ若く、これからの活躍次第では代表に呼ばれるようになるかも知れません。

口元などがどことなく兄であるサミ・ケディラと似ている気がします。夏に負傷したこともあり今シーズンは出場機会がありません。

ドイツ内での人気は低いとはいえ、ここまで無敗というのは注目に値すべきことです。バイエルンという絶対王者がいるブンデスリーガで、昇格組が初優勝という偉業を成し遂げられるのか。今シーズン、RBライプツィヒの躍進に目が離せません!

( Photo by PercyGermany and strassenstriche.net )

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