コンテ革命が勃発!?プレミアリーグ・3バック流行の理由

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コンテ革命が勃発!?プレミアリーグ・3バック流行の理由

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昨夏、チェルシーにアントニオ・コンテ、マンチェスター・シティにペップ・グアルディオラがやってきて、プレミアリーグのクラブの戦術は大きく様変わりしました。従来の主流は、最終ラインは4バック、中盤には2人のセントラルMFが並ぶ4-2-3-1。2015年10月にユルゲン・クロップがリヴァプールの指揮官に就任し、豊富な運動量で激しいプレスを仕掛けて敵陣でボールを奪取するゲーゲン・プレッシングを導入しますが、DFの人数は変わりませんでした。3バックを用いるチームはなかったわけではありませんが、あくまでもオプションであり、中小クラブの場合は「守備に人数を割く5バック」といったほうがいい戦い方でした。

斬新だったペップの攻撃的3バック

ペップ・グアルディオラは、当初より4バックと3バックを併用。コラロフをCBにコンバートする新機軸を見せ、開幕から公式戦10連勝とロケットスタートに成功しました。彼の狙いは、主に「中盤で優位に立ちたい」「サイド攻撃に厚みを持たせたい」の2点だと思われます。同じ3バックでも、SBを外してよりゴールに近いウイングとWBにサイドから攻めさせる3-4-3と、中盤に人数を置く3-2-4-1など複数の形を駆使しており、選手のコンディションや相手の戦術を見ながら使い分けています。4バックの際も、コラロフかサバレタを縦に走らせずにセントラルMFの位置に上がるようにして、中盤の選手がサイドに流れる攻め方を選ぶこともあります。数字で表現するのを諦めたくなるような変幻自在の戦術は、プレミアリーグファンにとっては斬新でした。

さまざまな役割をこなせるフェルナンジーニョと、中でも外でも下がってもクオリティが高いダヴィド・シルヴァがペップ戦術のキープレーヤー(PHOTO by Leon Queeley)

参考にしやすかったコンテの3バック

他クラブにとって、そのエッセンスを取り入れやすかったのは、コンテ監督の3-4-3でしょう。開幕前は4-2-4の導入を匂わせ、シーズンが始まってからは選手が戦い慣れた4-2-3-1を使っていたチェルシーの指揮官は、3-0で完敗したアーセナル戦の後半に、初めて新システムを導入。ここで手応えをつかむと、次節のハル・シティ戦から完全にシフトし、プレミアリーグ13連勝という快進撃を見せました。SBがいない3バックは、ウイングバックの裏が弱点といわれますが、コンテ監督は守備重視の際は5-4-1、攻めるときは3-4-3と、ウイングとWBの高さを変えることで対応。このシステムによって、輝き始めたのは守備の負担が減ったアザールとペドロ、走力を買われてレギュラーに定着したヴィクター・モーゼス、元よりWBの心得があったマルコス・アロンソ、2CBではリスキーなプレイを批判されることが多かったダヴィド・ルイスでした。

誰もが驚かされたヴィクター・モーゼスのウイングバック抜擢。コンテ監督の3-4-3は、まさに適材適所(PHOTO by Christopher Johnson)

後ろをアロンソにカバーしてもらえるアザールは、得意のドリブルと中に斬り込んでシュートを打つ機会が増え、昨季の不振から脱却。ケーヒルとアスピリクエタのカバーが得られるダヴィド・ルイスは、最終ラインの統率力とビルドアップのセンスを活かせるようになりました。選手の動きが複雑なペップの戦術よりも、SBの選手をWBに上げるなど「縦のポジショニング」で機能を考えられるコンテスタイルのほうが、中央を3枚のCBで固めたかった中小クラブの監督にとってはイメージしやすかったのではないでしょうか。クヤテをCBに落としてクレスウェルの攻撃力を活かしたウェストハムのビリッチ監督、ムニエッサやグレン・ジョンソンで試したストークのマーク・ヒューズ監督、プレドル、ブリトス、カブールで後ろを固めるワトフォードのマッツァーリ監督など、中堅・下位クラブでも3バックを試みるチームが続々と増えてきています。トッテナムのポチェッティーノ監督は、チェルシー戦で相手と同じ3-4-3を導入する「ミラー戦術」で勝利。マンチェスター・シティ戦では試合中に3回もフォーメーションを変え、3と4を自在に操るペップばりのサッカーを展開しています。

CBとセントラルMFを自在にこなすエリック・ダイアーが、ポチェッティーノ監督の変幻自在の戦術を支えています(PHOTO by Catherine Kortsmik)

さまざまな戦術がぶつかり合うからおもしろい!

3バックと4バックは、「絶対的にどちらかがいい」という種類の話ではないのですが、チェルシーがこれだけの強さで首位を走っている今、「3バック大流行」は広がっていくのでしょうか。おそらく、リーグを覆い尽くすほどの革命的戦術変更とはならず、個性が尖ったチームのぶつかり合いになると思われます。4-3-3で「よく走るサッカー」を展開するリヴァプール、同じく4-3-3ながら速いサイド攻撃を軸とするマンチェスター・ユナイテッド、攻撃的なパスサッカーにこだわるアーセナル、DFの枚数もサイドの配置も変幻自在のトッテナム&マンチェスター・シティ。3-4-3のコンテ監督も、最近は試合の展開を見て4-2-3-1にスイッチさせることもあり、ペップ同様にさまざまな戦い方で相手の弱点を突いていこうとしているように見えます。

どんなサッカーが主流になるのかはわかりませんが、少なくともいえるのは、多彩な戦術のサッカーが見られるプレミアリーグは、よりおもしろくなりそうだということ。3バックだと輝くダヴィド・ルイス、ウイングバックで真価を発揮するヴィクター・モーゼス、4-3-3のアンカーが最適なヘンダーソン、どのポジションでもこなしてしまうフェルナンジーニョなど、スペシャリストとオールラウンダーが入り混じる選手たちが個性を発揮する姿を見るのがまた、楽しいではありませんか。1年めの監督、若い監督が多いリーグだけに、それぞれのチームの進化形を追いかけるのも醍醐味のひとつです。

TOP画像 PHOTO by Clement Bucco-Lechat

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