モウリーニョVSペップの「選手にかけたお金」徹底比較

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モウリーニョVSペップの「選手にかけたお金」徹底比較

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ジョゼ・モウリーニョ監督は、よっぽど悔しかったのでしょうか。ポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリードと過去に率いたクラブを、すべて2年目にリーグ優勝に導いてきた名将は、ペップ・グアルディオラのマンチェスター・シティに独走を許していました。2017年の年末、マンチェスター・ユナイテッドは、ボクシングデーのゲームで、バーンリーに引き分け、3試合連続勝利なしで終わっています。試合後のモウリーニョ監督は、ライバルとの差は、補強費用の差だと言い放ちました。自身とペップが就任してからの2年で、両者の差は1億ポンドもあると主張しています。
メイン写真クレジット/Ardfern

シティはSBにストライカーを獲得するような移籍金を払った!

モウリーニョ監督は、「シティは、SBにストライカーを獲得するような移籍金を払った。対して我々の補強は充分とはいえない。ビッグクラブは、他のクラブと補強費が同じではいけないのだ。これまでも、ビッグクラブは、移籍市場で多大な金額を払ってきている」と述べています。


最後方からビルドアップに参加できるGKエデルソンは、1年めからペップの信頼を得て本領を発揮(PHOTO by Brad Tutterow)

では、まずは事実関係から調べてみましょう。「スカイスポーツ」が、昨年の10月に「所属選手の移籍金総額ランキング」を掲載しています。これによると、1位はマンチェスター・シティの6億5260万ポンド(約953億円)で、2位マンチェスター・ユナイテッドの5億7340万ポンド(約837億円)を8000万ポンドほど引き離しています。

2017-18シーズンの夏に絞ると、バンジャマン・メンディ(5175万ポンド)、カイル・ウォーカー(4590万ポンド)、ベルナルド・シウヴァ(4000万ポンド)、エデルソン(3600万ポンド)ら8人を獲得したマンチェスター・シティの補強総額は、2億2212万ポンド(約324億円)、この額はもちろんプレミアリーグNo.1です。

両者の差は、1億ポンドあるが…。

対するマンチェスター・ユナイテッドは、7600万ポンドのロメウ・ルカクに加えて、マティッチ(4000万ポンド)とリンデロフ(3150万ポンド)を獲得。3人の総額は、1億4796万ポンド(約216億円)に留まっており、単年でも、8000万ポンド弱の開きがあります。モウリーニョ監督は「2年で」といっているので、2016-17シーズンも調べてみましょう。

ジョン・ストーンズ、レロイ・サネ、ガブリエウ・ジェズス、ギュンドアン、ノリートらを獲得したマンチェスター・シティは、1億7400万ポンド(約254億円)。ポグバにワールドレコードの8900万ポンド、バイリーとムヒタリアンにそれぞれ3000万ポンドをかけたマンチェスター・ユナイテッドは1億4900万ポンド(約218億円)。過去2年を通算すると、モウリーニョ監督のおっしゃる通りで、マンチェスターの2クラブにおける2シーズントータルの補強費用の差は、ほぼ1億ポンドです。(金額は「transfermarkt」調べ)


ペップ就任2年めのマン・シティは、ベテラン放出と新戦力大量補強で一気に若返りを推進(PHOTO by ФК ШАХТЕР)

「これだけ差があれば、チーム力に差が出るのも仕方がない」と思った方、ちょっと待ってください。ここでうなずいては、モウリーニョ監督の思うツボです。この後は、マンチェスター・ユナイテッドに都合の悪いデータを紹介しましょう。

2017-18シーズンの夏の選手放出リストを見ると、マンチェスター・シティは、総勢15人を手離しています。サバレタ、ヘスス・ナバス、カバジェロ、クリシーといったベテランは契約満了、レスターに移籍したイヘアナチョの2500万ポンドを筆頭に、ウナル、ボニー、ノリート、コラロフ、フェルナンド、ナスリらの売却で、8600万ポンドを手にしており、補強費用と合算すると1億3600万ポンドのマイナスとなります。

選手の給与総額はマン・ユナイテッドが多い!?


7000万ポンド以上の高額選手が目立つマン・ユナイテッドに対して、直近2年のマン・シティで5000万ポンド以上はラポルテだけ(PHOTO by Lluis Fernandez Salas)

さて、マンチェスター・ユナイテッドのほうの売却額を見てみましょう。レアル・ソシエダに移籍したアドナン・ヤヌザイで760万ポンド以上。昨季の終盤戦で、負傷者が続出し、プレミアリーグで6位に終わったモウリーニョ監督は、選手層の厚さにこだわり、移籍金ゼロでエヴァートンに譲ったウェイン・ルーニー以外は、主力をひとりも放出していません。こちらを補強と合わせると、1億3800万ポンドのマイナスになります。収支という見方では、マンチェスター・ユナイテッドのほうが、より多額のお金を支払っていることになります。

2016-17シーズンの両者の売却益を見ると、マン・ユナイテッドはデパイ、シュナイデルラン、マクネア、ドナルド・ラブで約4300万ポンド。マン・シティは、ジェコ、ヨヴェティッチ、フォファナ、レジュンで2800万ポンド。すべてをまとめると2年トータルでその差は5300万ポンドに縮まり、有力選手ひとり分しかありません。

さらにもうひとつ、選手にかかるお金を比較してみましょう。選手の給与総額です。2016-17シーズンのマン・ユナイテッドは、2億6400万ポンド(約385億円)、マン・シティは、2億4400万ポンド(約356億円)。今年度の総額のデータはありませんが、15人を放出したマン・シティはスリム化しており、ルーニーを放出しながらもアレクシス・サンチェスにリーグNo.1の週給40万ポンド(約5800万円)を支払っているマン・ユナイテッドは、前年よりも間違いなく増えています。冬に5700万ポンドでアイメリク・ラポルテを獲得し、移籍金総額では、再度1億1000万ポンドの差をつけたペップのチ―ムですが、選手のサラリーまで計算に入れれば移籍金の差はぐっと詰まりそうです。

モウリーニョ監督は、移籍金の足し算ばかりにスポットを当てていますが、去った選手の戦力的なマイナスや支払っている給与に視野を広げれば、「補強費が違うから、戦力に差がある」という主張は、怪しくなるということだけは添えておきましょう。

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