ジェフL 深澤里沙が語る仕事とサッカーの両立

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ジェフL 深澤里沙が語る仕事とサッカーの両立

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“仕事とサッカーの両立”をテーマにしたこの企画では、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(以下:ジェフL)の選手にスポットを当て、第1弾は上野紗稀選手、第2弾は佐藤瑞夏選手に登場してもらいました。そして、シリーズ第3弾はチームのベテラン深澤里沙選手(32)にお話を訊きました。

リーグ戦200試合以上出場しジェフLの精神的支柱でもある深澤選手。背中でチームをけん引し、常に「サッカーを楽しみたい」と口にする彼女の原点に迫ります。

環境に感謝

――深澤選手がサッカーを始めたきっかけを教えてください。

お兄ちゃんの影響ですね。2歳年上のお兄ちゃんがサッカーをやっていたこともあって、小学校3年生の時に地元のクラブチームに入りました。当時は女の子も少なかったのですが、男の子にも負けないくらいでしたね(笑)。仲間に恵まれたこともありますが中学生になっても引き続き、そのクラブチームでプレーをしました。
そして高校(甲府商業高校)では、部活としてサッカーをしました。ただ高校時代は部員の大半が初心者で、県内には女子サッカー部のある学校が2校しかなく県大会では、すぐに決勝を戦うことになるのですが、実際は20得点差という試合もありました。その中で関東大会で1勝することが目標で3年間、打ち込みましたが達成することは出来ませんでした。

――高校在学中から社会人になってもサッカーを続けようと考えていたのですか?

それ以外は考えていませんでした。Lリーグで、プレーが出来るところを探し、色々な人の伝手などもあって、Lリーグ1部の宝塚バニーズレディースサッカークラブ(現在:バニーズ京都SC)の練習に参加をして、そこから加入しました。

――当時は、どんな仕事に就いていたのですか?

アルバイト情報誌をもとに土日・祝日がお休みなところを自分で探し、携帯電話の組み立て作業をしていました。17時に仕事を終えて18時の練習に向かうものでした。地方遠征でも長時間のバス移動で夜中に帰ってくること多かったです。それでも続けられたのはサッカーが好きだったから、むしろサッカーのために働いていた気がしますね、本当に好きなんですよね、サッカーが(笑)

――2006年に福岡J・アンクラスでプレーをした後、2007年にジェフLに加入しましたが当時の状況はどうでしたか?

ジェフLからオファーをもらい、私がジェフLに移籍をしてきた時(2007年)は、練習に15人ほどしかいない日もありましたし、まだ女子サッカーにスポットが当たっている訳ではありませんでした。その時は派遣の仕事をしていて、練習は20時から22時まで行われ、雨の日も、風の日も、バイクを飛ばして練習場に通いましたね。
ただ、私の先輩方の時代はもっと大変な時代だったと聞きます。その時、自分が経験していないので分からないこともありましたが、今はその言葉の意味が分かります。環境が徐々に整備されてきていて恵まれていることに感謝をしています。

――2012年に「なでしこリーグチームスタッフ雇用助成事業」の対象となり、クラブスタッフとして働いていますか?

2011年に女子ワールドカップで、なでしこジャパンが優勝したこと、チームとしても2012年に皇后杯で、準優勝をしたことなどで世間の注目や社会認識が高まり環境が良くなっていると感じます。ありがたいですね。私たちは、ひた向きにプレーをして結果で返すしかありません。

――毎日のスケジュールを教えてください。また、クラブでは広報に所属をしていますが、主にどんな仕事をしているのでしょうか?

週4日、クラブハウスで朝10時から夕方16時まで働いています。チームには会社員と学生がいるので、練習は18時から20時まで全体練習をしています。
主な仕事としては、公式戦の写真の整理やインタビュー取材での立ち会い、ジェフLのマッチデープログラムの作成などをしています。また、アンケートをまとめたり、名鑑などのチェックもしています。事務仕事は好きですし、周りの方々も良い人たちばかりで、コミュニケーションを取り合いながら仕事をしています。

――オフをどのように過ごしていますか?

トレーニングをする日もありますが、家の中でじっとしているのが苦手な方なので買い物に出かけることも多いです。アクティブです(笑)。山梨の実家にも帰りますし、そこで甥っ子と遊ぶことが、現在、一番の癒しですね。

――ちなみにファッションや美容で注意して点はありますか?

やはり日焼け止めは、だいぶ塗りたくってます(笑)。ネイルが好きなので、そこは気を使っていますね(笑)。

――仕事とサッカーの両立で、苦労を感じる点、充実している点を教えてください。

昔に比べたら苦労していることはありません(笑)。今は、サッカーに打ち込めますし、サッカーをプレーするために、100%の力を発揮できる環境を与えてもらっています。サッカーをしていることで、こうした仕事に就かせてもらっているので、ただただ感謝しかありません。


自分が頑張ることで、みんなが頑張れるなら

――今シーズンから藤井奈々監督が指揮と執っていますが、どんなスタイルなのでしょうか?

藤井奈々監督は、ただ泥臭く頑張ることだけではなく、個で打開する技術や判断にスポットを当ててくれています。個が強くなければチームが強くなれないことはもっともだと考えます。練習の雰囲気もそうですが、一人ひとりの意識が大きく変わりました。選手間での話し合いも増えています。

――その中で、藤井監督にはどんなことを求められていますか?

藤井監督は、自分にも厳しい方で強い信念を持っています。私はチームでも年齢が一番上で、このチームにはリーダーがいないと言われますので、チームをしっかりとまとめることを求められます。

――チームメイトは、口を揃えるように「里沙さんの背中を見るとサボれない」と口にしていますが?

試合に出る以上は責任があります。「あの人があれだけやってんだから、やらなきゃ」と感じてもらうことも重要ですし、私個人としては、90分間、走り切るのは当り前のことで、当り前を当たり前にやるだけだと思っています。ただ、そう言ってもらえるのは嬉しいですし、それを励みに、また頑張れますし”自分が頑張ることで、みんなが頑張れるなら“、まだまだ自分は頑張らなければいけませんね(笑)。

――1分1秒もサボらずに90分間、走り続けている印象を受けますが?

ただ負けず嫌いなだけです(笑)。自分が疲れて足を止めることになると相手選手と変わりません。苦しい時間帯に走り続けることで自分が輝けると思いますし、1試合1試合、後悔がないように勝つために走っているだけです。それを観ている人や後輩が感じてくれるのはありがたいですね。

――チームには若手メンバーも入ってきていますが、どんなことを求めて行きたいと考えていますか?

自分が主張したいことを、しっかりと主張して欲しい。先輩に付いて行くだけではなく自分がチームを引っ張って行く気持ちを出して欲しいと伝えています。

――リーグ前半戦を6位で折り返しましたが。この状況についてはどう考えていますか?

後半戦に順位を下げることなく、上位チームに食らいついて行けるようにしたいです。勝ち切る力、踏ん張り切れない現状があります。これを自分たちで、どう打開できるかが後半戦のカギになると思っています。ジェフLを応援してくれる方や観に来てくれる方に、スタジアムに足を運んで良かったと思わせるサッカーをしたい。自分たちが努力をするとで引き分けで終えた試合や負けてしまった試合の悔しさを力に変えて、後半戦に向かって行きたいです。

――これだけ深澤選手を虜にしているサッカーの魅力を教えてください。

単純に勝つこともそうですが、サッカーをしていることで両親を含めて色々な人に喜んでもらえること、恩返しにもなります。私はサッカーのために仕事をしていますし、私に楽しみを与えてくれるのもサッカーです。サッカーのある日常に感謝をしています。

――まだまだ、これから先も走り続けてくれますね?

体力的にも若い選手に劣っていると感じませんし、年々、パワーアップをしていると思っています。毎年、毎年が勝負ですが、自分の限界までしっかりと走り続けたいと思っています。

――最後に今シーズンの目標を教えてください。

個人としては個の成長です。まだまだ成長できると思っていますし、あとは純粋にサッカーを楽しみたいです。チームとしては、誰もこの成績に満足はしていません。昨シーズンよりも1つでも順位を上げるために頑張りたいです。